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幼馴染なのを利用して

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「大翔、今日も乗っけてって」

マンションの隣の部屋にピンポン押して車出勤の大翔に便乗させて貰おうと企むわたし。

「俺はお前のお抱え運転手じゃねー」

と言いつつ、優しい大翔は、現場に直行する日以外は便乗させてくれる。
現場に早朝から向かうときは前の日に、

“明日は早朝から現場に直行だから1人で行け”

とLINEメッセージをくれる。

わたしと大翔の関係は同じマンションの隣同士に住む幼馴染。

ただ、それだけの関係。
でも、わたしはずっと大翔の事が好きだった。

同じ会社に勤めていても部署が違うから会うことがないから、この通勤時間だけしか大翔と一緒に居られない。

愛車の白いインプレッサを走らせる大翔の助手席に座れるわたし。

大翔のカッコイイ横顔をちらちらみ見て、今日一日頑張る活力を得てる。

ほぼ毎日、わたしと一緒に出社してるから、わたしと大翔は周りから付き合ってると思われてる。
実際は単なる幼馴染だけど否定をせず肯定もせずにいる。

それは大翔も同じ。

会社に着くと一緒にオフィスに入りエレベーターに乗る。

大翔を狙ってる女性社員は多い。

わざとらしく大翔の腕を掴み、大翔がわたしの物と見せつけるわたし。

大翔を誰にも渡したくない。

わたしの策略のせいか、大翔は就職してからは恋人がいない。
仕事が多忙だからもあるけれど、プレイボーイな彼に特定の彼女ができない事に安心するわたしがいた。

「大翔、日曜日に湘南に新しくできたイタリアンカフェに連れて行って!!オシャレらしくて見ときたいの」

インテリアプランナーとして病院や飲食店の内装をコーディネートをするのが仕事のわたし。

「……俺も気になってたからいいよ。日曜日の10時に迎えにいく」

建築士の大翔とインテリアプランナーのわたし。
部署は違っても、建物設計と内装の設計を行う仕事に携わるから、週末の日曜日、あれこれ理由をつけて大翔とお出かけしてるわたし。

大翔は、わたしが大翔の事が好きなことを気づいてない。

「そういえば、今度、秋葉のカフェの新規建築で咲良と俺、組む事になったからよろしくな」

初の大翔と仕事でペアを組むと聞き、胸がときめいたわたし。

「うん。大翔と一緒に仕事ができるの楽しみ」

大翔が建築士になると知って、わたしはインテリアプランナーになる事を決めた。

大翔と一緒に建物を作り上げる事が夢だった。

「咲良ちゃん、毎日いいな。彼が車で送ってくれるから」

通勤ラッシュでおしくらまんじゅうをしながら耐え、朝からお疲れモードの同期でインテリアプランナーの佐伯香奈(さえきかな)ちゃんが、始業ギリギリに出社してわたしに言う。

「いつもより遅いけど、どしたの?」

「彼のマンションからの出勤で通勤時間をちゃんとみてなかったの……。間に合って良かった」

香奈ちゃんは先週の金曜日の合コンで意気投合する彼氏ができたらしく、彼の部屋にお泊まりして出社したらしく、朝からお疲れモードだった。

「眠たい……今日は定時退社する」

横で呟く香奈ちゃんの言葉をスルーして、わたしは新築物件の内装のプランに関する仕事に取り掛かった。

初体験もまだなわたしには香奈ちゃんの話は刺激が強すぎる。

わたしも大翔も、幼馴染なだけなのに交際してると噂を立てられてる。
でもそれを否定してないから、付き合ってると思われてる。

「出世コースの結城大翔の恋人だから、咲良ちゃんは勝ち組だよね?羨ましすぎる」

インテリアプランナーの同僚達から言われて、ただ、笑って聞き流す、わたし……。

一緒に出勤し、定時退社日も一緒に帰ってたりしたら誤解されるよね。

わたしと大翔、本当にただの幼馴染。

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