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カモフレな関係
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会社でわたしと渉は付き合ってる事になってる。
入社して半年ぐらい、わたしは社内社外の男性からたびたび交際を申し込まれ、断ってるのにしつこく迫られ、何度か怖い思いをした。
それを知った渉が、わたしの身を守るためと言って、渉と付き合ってるふりをするカモフレを提案してきた。
渉に本命の彼女が作れなくなるからと断ったんだけど、渉が社内でわたしと付き合ってる素振りを周りに見せつけるようになり、社内公認のカップルになってしまった。
「ーー萌、午後イチでクライアント先にヒアリングにいくから、昼は外に食べに行こう」
たまにはインテリアプランナーの先輩や後輩とランチしたい気もするけど、ほぼ毎日、渉と過ごしてる。
「あれっ、真宮くんと櫻井さん、今からランチ行くとこ?」
自社ビルから出て渉の車に乗ろうとしたら、颯斗社長に声をかけられた。
「はい。午後イチでクライアント先に行くので今日は外でとろうと思いまして……」
「そうか。もし良かったら、うちにおいでよー。嫌、愛莉が大量に作ってるから、手伝って!!」
愛莉副社長はtataの御令嬢でシステムキッチンのデザイナーをしてたのもあり料理が得意で、月に1度ホームパーティを開いて手料理を振る舞ってくれる。
颯斗社長に誘われたら断れず、高輪にある颯斗社長の豪邸についていく。
ドアを開けて玄関に入るとエプロンをつけた愛莉副社長が出迎えに来てくれた。
愛莉副社長にビビってる颯斗社長。夫婦喧嘩中らしい……。
ダイニングテーブルには4人分のパスタとローストビーフと海鮮のカルパッチョと焼きたてパンが用意されてた。
愛莉副社長、わたしと渉には話しかけてくれても颯斗社長に対して完全に無視してた。
最近、愛莉副社長が気が立ってるなとは思ってたけど、颯斗社長と夫婦喧嘩をしてたからなのかもしれない。
愛莉副社長特製の半熟卵とベーコンの美味しいパスタと焼きたてパンは三つ星レストラン級の味だけど、ピリピリ空気に息が詰まった。
「……真宮くんと櫻井さんはまだ結婚しないの?今年28だよね」
肩身が狭く静かにパスタを口に運んでた颯斗社長にいきなり聞かれて、返答に困る。
大学が同じで、ゼミも同じだったわたしと渉。
交際を始めた事になってるのは、入社した年の10月からで、それでも6年間付き合ってる事になる。
「大学時代からの付き合いなら10年か。28だとそろそろ結婚考える年だよね……。2人に申し訳ないけど、わたし3月から半年ほど育児休暇をとるから、しばらくわたしの代わりを萌ちゃんにお願いしたいから、子作りはちょっと待ってほしい。仕事が立て込む時期に出産だよ。仕方がないけど、仕事が不安で気が滅入る」
颯斗社長を睨みつけて愛莉副社長が嘆いてた。
最近、愛莉副社長が納期が先の仕事もできる時に片付けてる理由がわかった。
時期的に多忙な時期に出産になり、愛莉副社長は子供を作る気はなかったようで颯斗社長に対してかなり腹を立ててるようだった。
クライアント先に行かないといけなくて、愛莉副社長の手料理を急いで駆け込み、社長宅から出て、車で横浜まで向かった。
「3月から愛莉副社長が産休入ると不安だ……。何かわからない事があったら気軽に聞きにきてと言われても、社長宅にお邪魔するなんて恐れ多い」
「愛莉副社長は萌を後釜に育て上げたと言ってたし自信持てよ。それに、萌のことを気に入ってるから訪ねたら喜ぶんじゃないか?」
残業の後に渉の家に一緒に帰る。
愛莉副社長が作ってくださったお昼ご飯が豪華でボリュームがあったからお腹がすかず、ちょっと高めのデパ地下のお惣菜を購入し、リビングでワインを飲みながら食事をする。
金曜日の夜だから、明日は休み。
愛莉副社長が産休で現場から離れる事を打ち明けられ、その間の仕事を難なく熟せれるか不安で、いつもよりワインを飲みすぎてしまった。
食事を終え、残ったお惣菜は皿に入れてラップし冷蔵庫へ入れる。
渉と入れ替わりにシャワーを浴びて、その後、寝室へ入る。
今日はこのまま眠りたいと思った。
先にベッドに入ってスマホでゲームアプリをしてた渉。
わたしが布団の中に入るとスマホをベッドデッキの上に置き、わたしを抱き寄せた。
「……萌、萌は今も、結婚して子供を産んで育てる事は考えられない?」
突然、渉からそんな事を言われ、困る。
『……わたし、誠司のことが忘れられないから、一生独身でいる。だから、渉に恋人ができたらこの関係は解消しようね』
そう、この関係を始めた頃からずっとわたしは渉に言ってた。
なのに、渉が、
「………誠司を思い続けていい。
萌と誠司が高校時代からの恋人同士で建築士になって高層ビルを建てたいという同じ夢を持ち、遊ばず勉強に励んでるのを側でみてきた。
だから、俺が誠司以上に萌に思われる事は無いのはわかってる。
あのさ、俺達、もう28だろ。萌が俺の事を友人としか思ってないのはわかってるが、俺と結婚して子供を作って夫婦としてやっていって欲しい」
と言い出した。
ベッドのマットレスに組み敷かれ、哀愁漂う表情で渉に見下ろされ続ける。
「……萌、俺が萌を守って支えるから。ずっと、萌の事を愛してた」
わたしの胸の膨らみを両手で優しく揉みほぐされ、そして、いつも通り抱かれた。
でも、いつもみたいに焦らされるのではなく、わたしを快楽の底に堕として渉から逃れられないようにするような、わたしを優しく悦ばせるような抱き方だった。
身体は渉を受け入れても、心はついていけない。
渉がわたしをずっと愛してたと知り、抱かれるたびに申し訳なく感じ、身体は快楽に堕ちても、心は病んでいった。
ーーわたしは渉と身体だけの関係でいたかった。
入社して半年ぐらい、わたしは社内社外の男性からたびたび交際を申し込まれ、断ってるのにしつこく迫られ、何度か怖い思いをした。
それを知った渉が、わたしの身を守るためと言って、渉と付き合ってるふりをするカモフレを提案してきた。
渉に本命の彼女が作れなくなるからと断ったんだけど、渉が社内でわたしと付き合ってる素振りを周りに見せつけるようになり、社内公認のカップルになってしまった。
「ーー萌、午後イチでクライアント先にヒアリングにいくから、昼は外に食べに行こう」
たまにはインテリアプランナーの先輩や後輩とランチしたい気もするけど、ほぼ毎日、渉と過ごしてる。
「あれっ、真宮くんと櫻井さん、今からランチ行くとこ?」
自社ビルから出て渉の車に乗ろうとしたら、颯斗社長に声をかけられた。
「はい。午後イチでクライアント先に行くので今日は外でとろうと思いまして……」
「そうか。もし良かったら、うちにおいでよー。嫌、愛莉が大量に作ってるから、手伝って!!」
愛莉副社長はtataの御令嬢でシステムキッチンのデザイナーをしてたのもあり料理が得意で、月に1度ホームパーティを開いて手料理を振る舞ってくれる。
颯斗社長に誘われたら断れず、高輪にある颯斗社長の豪邸についていく。
ドアを開けて玄関に入るとエプロンをつけた愛莉副社長が出迎えに来てくれた。
愛莉副社長にビビってる颯斗社長。夫婦喧嘩中らしい……。
ダイニングテーブルには4人分のパスタとローストビーフと海鮮のカルパッチョと焼きたてパンが用意されてた。
愛莉副社長、わたしと渉には話しかけてくれても颯斗社長に対して完全に無視してた。
最近、愛莉副社長が気が立ってるなとは思ってたけど、颯斗社長と夫婦喧嘩をしてたからなのかもしれない。
愛莉副社長特製の半熟卵とベーコンの美味しいパスタと焼きたてパンは三つ星レストラン級の味だけど、ピリピリ空気に息が詰まった。
「……真宮くんと櫻井さんはまだ結婚しないの?今年28だよね」
肩身が狭く静かにパスタを口に運んでた颯斗社長にいきなり聞かれて、返答に困る。
大学が同じで、ゼミも同じだったわたしと渉。
交際を始めた事になってるのは、入社した年の10月からで、それでも6年間付き合ってる事になる。
「大学時代からの付き合いなら10年か。28だとそろそろ結婚考える年だよね……。2人に申し訳ないけど、わたし3月から半年ほど育児休暇をとるから、しばらくわたしの代わりを萌ちゃんにお願いしたいから、子作りはちょっと待ってほしい。仕事が立て込む時期に出産だよ。仕方がないけど、仕事が不安で気が滅入る」
颯斗社長を睨みつけて愛莉副社長が嘆いてた。
最近、愛莉副社長が納期が先の仕事もできる時に片付けてる理由がわかった。
時期的に多忙な時期に出産になり、愛莉副社長は子供を作る気はなかったようで颯斗社長に対してかなり腹を立ててるようだった。
クライアント先に行かないといけなくて、愛莉副社長の手料理を急いで駆け込み、社長宅から出て、車で横浜まで向かった。
「3月から愛莉副社長が産休入ると不安だ……。何かわからない事があったら気軽に聞きにきてと言われても、社長宅にお邪魔するなんて恐れ多い」
「愛莉副社長は萌を後釜に育て上げたと言ってたし自信持てよ。それに、萌のことを気に入ってるから訪ねたら喜ぶんじゃないか?」
残業の後に渉の家に一緒に帰る。
愛莉副社長が作ってくださったお昼ご飯が豪華でボリュームがあったからお腹がすかず、ちょっと高めのデパ地下のお惣菜を購入し、リビングでワインを飲みながら食事をする。
金曜日の夜だから、明日は休み。
愛莉副社長が産休で現場から離れる事を打ち明けられ、その間の仕事を難なく熟せれるか不安で、いつもよりワインを飲みすぎてしまった。
食事を終え、残ったお惣菜は皿に入れてラップし冷蔵庫へ入れる。
渉と入れ替わりにシャワーを浴びて、その後、寝室へ入る。
今日はこのまま眠りたいと思った。
先にベッドに入ってスマホでゲームアプリをしてた渉。
わたしが布団の中に入るとスマホをベッドデッキの上に置き、わたしを抱き寄せた。
「……萌、萌は今も、結婚して子供を産んで育てる事は考えられない?」
突然、渉からそんな事を言われ、困る。
『……わたし、誠司のことが忘れられないから、一生独身でいる。だから、渉に恋人ができたらこの関係は解消しようね』
そう、この関係を始めた頃からずっとわたしは渉に言ってた。
なのに、渉が、
「………誠司を思い続けていい。
萌と誠司が高校時代からの恋人同士で建築士になって高層ビルを建てたいという同じ夢を持ち、遊ばず勉強に励んでるのを側でみてきた。
だから、俺が誠司以上に萌に思われる事は無いのはわかってる。
あのさ、俺達、もう28だろ。萌が俺の事を友人としか思ってないのはわかってるが、俺と結婚して子供を作って夫婦としてやっていって欲しい」
と言い出した。
ベッドのマットレスに組み敷かれ、哀愁漂う表情で渉に見下ろされ続ける。
「……萌、俺が萌を守って支えるから。ずっと、萌の事を愛してた」
わたしの胸の膨らみを両手で優しく揉みほぐされ、そして、いつも通り抱かれた。
でも、いつもみたいに焦らされるのではなく、わたしを快楽の底に堕として渉から逃れられないようにするような、わたしを優しく悦ばせるような抱き方だった。
身体は渉を受け入れても、心はついていけない。
渉がわたしをずっと愛してたと知り、抱かれるたびに申し訳なく感じ、身体は快楽に堕ちても、心は病んでいった。
ーーわたしは渉と身体だけの関係でいたかった。
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