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幼馴染からの提案

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わたしがトヨタエリート三銃士と仲が良いからと女性社員からの悪質な偽りの噂に悩まされる日々。

会社は仕事をしに行く所だから気にはしてない。
技術系オフィスビルには女性社員はあまりいなくて、いても派遣のCADオペレーターか各部署にいる事務職の子。

半導体デバイス課は事務員が2人女性社員がいるだけで、後はわたし以外は男性社員。

だから、部署内では特に問題無く仕事がこなせた。

「……ECUに問題があったか。原因がわかったからそこを修正したら完了だな……」

長谷川主任と一緒に半導体デバイス設計課に戻ってきた律兄が呟く。


「ECU設計課、わかってるやつ居ないな。できるやつがいないの問題だろ。昨年までは高度な設計をしてたのに、ここ最近エラー出しまくりだろ」

長谷川主任はずっとECU設計課にこもってた。
かなり酷かったらしく、呆れてるようだった。

「できる人間をECU設計に入れる人事に口出すか?さすがにあれはないわ……」

律兄が長谷川さんの意見に同調する。
律兄と長谷川主任はECU設計課に苛立ちを感じてるようで、苦言を言い続ける。

「責任者の真島係長が1番わかってないのが問題だろ」

「責任者になって3年らしいけど去年までできてた事ができないっておかしいよな」

長谷川主任が拓哉の知識の無さを問題視し、律兄も去年と今年のECUの精度の違いを疑問視してた。

昨年までは最終的にわたしが訂正していたから形になってた……。
わたしが最終的にECUプログラムや部品を設計してた。

「今回は俺が全て訂正入れたけど、今後の事を考えると昨年までにECU設計にいた優秀な人材をECU設計課に呼び寄せて貰わないと、今後、任せられないよな」

「確かにな……」

長谷川主任のダメ出しぶりから、今のECU設計課の造り出すECUは相当マズイのだろう……。

「真島主任、宮瀬さんの元婚約者ですよね。宮瀬さんが真島主任の代わりに仕事をしてたって噂で聞きました。やっぱりあの人、仕事ができないんだ……」

新入社員で空気の読めない中津くんが律兄と長谷川主任の話の中に入る。

律兄は、女性社員からわたしが婚約してた相手から他の女性との間に子供ができたからと捨てられた事を知ってる。

その相手が、仕事ができないと2人が今罵ってる拓哉と知られたのが恥ずかしかった……。

律兄は必要ない話については気になってもスルーする。

だから中津くんが話した事も、一瞬目を見開き固まったけれど、何も反応しなかった。


次の日の水曜日、律兄との恒例の飲み会。
律兄に婚約していた人の事を知られ気まずいけれど、仕事が終わってから家にいったん帰って着替えてメイクを直して待ち合わせ場所の知立駅前に行く。

律兄は今日は少し遅れて到着した。

そして、今日は個室の大人の雰囲気の居酒屋に連れて行ってくれた。

「理愛、今日は仕事について少し話していいか?」

料理とお酒を注文し、個室に運ばれた後に、律兄が言いにくそうな表情を浮かべながら、口を開く。

「来月から、理愛をECU設計課の主任として戻す。そして、半導体デバイス設計課に真島係長を異動させる」

律兄の言葉にポカンとしてしまうわたし……。

「半導体デバイス設計課がデンタではエリートコースと思われてるが俺はECUの方が半導体デバイスより高度で重要な仕事だと思ってる。不具合でリコールが出る原因がECUだったりする。だから、ECU設計をできる人間にやって貰いたい。真島係長に関しては他の社員からの聞き取りから、理愛が半導体デバイス設計課に異動してから真面目に仕事に取り組んで無かったらしい。婚約している彼女が出世コースに乗ったのを僻んだんだろう……。でも、元々知識は無く、理愛がいたから係長になれた男だ」

律兄はわたしの目を見ず、ビールのジョッキを見つめながら言った。

「後、俺がデンタに出向するのは来月いっぱいまでだ。それ以降は長谷川と藤堂は2ヶ月先までいる予定だが、共同開発する半導体デバイスが完成したら撤収する。……理愛と一緒に仕事ができるは後、1ヶ月半か。でだ、理愛にもう一つ提案がある」

そう言うと、律兄がわたしに真剣な眼差しを向けた。
何を言われるかドキドキするわたし。

「理愛をECU設計に戻し、真島係長を半導体デバイス設計に異動させると、理愛が可哀相な子だと思われ、周りからそういう目で見られるかもしれない。理愛の……つらい過去も聞いた。だから、俺とお試し交際しないか?真島係長に捨てられたかもしれないけれど、俺はデンタでトミタエリート三銃士のトップと言われてるぐらいモテてるみたいだから、真島係長よりも数段良い男だと思われてるはずだ。理愛には兄貴分にしか思われてない気がするがお試し交際をして、俺を男として思えるようなら、俺と結婚して欲しい」

律兄からプロポーズのような言葉を真剣な表情で言われた。

「律兄とお試し交際する。律兄もわたしの事を妹分にしか思ってないかもしれないよ。恋人同士になれるかわからないけど、律兄と付き合いたい」

わたしがそう言うと律兄は嬉しそうだった。

その後は、いつも通り、お酒を飲みながら美味しいご飯を食べて、律兄に送られてわたしは家に帰った。

「土日は俺ん家で過ごそう。土曜日の8時半に迎えに行くから1泊2日泊まる準備しとけよ。後、木曜日から俺、社内でお前を溺愛するから覚悟しとけよ」

そう言って、律兄はわたしの頭をいつものように撫でて、知立駅に向かって歩いていった。


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