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エリートになってた幼馴染

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「トミタと車載用の半導体デバイスを共同開発する事になって、来月から毎週火曜日と木曜日はトミタのエンジン開発部にトミタのエリートエンジニアさん来るから」

9月の終わりに、半導体デバイス設計課の課長が朝礼の時に言ってた。

今取り組んでる半導体デバイスが上手く機能しなくて、それでトミタのエリートが出向して一緒に開発設計に携わる事になった。

10月の第1火曜日にトミタのエリートエンジニアさんが3人やってくる事になっていて、彼らに社内の案内などを任された下っ端のわたしはドキドキしてた。

8時15分に総合受付にトミタのエリートエンジニアさんを迎えに行く。

拓哉の奥さんがふっくらしたお腹で受付に座っていて、同僚がわたしに指をさして彼女の耳元でなにかを囁いてて、居心地が悪いけど、見ないようにして耐える事にした。

8時30分に、高級感のあるスーツをスマートに着こなした芸能人並のオーラを撒き散らした男性が3人が本社ビルに入ってきた。

そのうちの1人と目が合った。

「おっ、理愛、おまえが迎えに来てくれたのか。ありがとうな」

長身で知的な感じのイケメンがわたしに馴れ馴れしく話しかけてきた。
誰かわからず、わたしがポカンとしていたら、

「はっ、理愛、俺の事忘れたのか?律兄っていつも俺の後ろをちょろちょろ着いて来てたのに」

「えっ、律兄なのーー」

わたしがそう言うと、律兄はわたしに優しく微笑んだ。
律兄は実家の隣の家に住んでる4歳年上の幼馴染。
律兄が大学で東京に行くまでは、毎日夜に律兄の部屋に遊びに行ってた。
パソコンや機械に強い律兄。
わたしが進路を工学系に進んだのは律兄に影響されたからだった。

「半導体デバイス開発設計で理愛と一緒に仕事ができると知って、俺、楽しみだった。理愛、宜しくな」

律兄と仕事で絡めるとわかり、嬉しく思った。
感動を律兄に伝えたいけれど、気持ちを抑えて大人な対応をする事にした。

受付の拓哉の奥さんと感じの悪い同僚がわたしと律兄のやり取りをじろじろ見てるのが気になり、技術棟に移動する事にした。

「技術棟は北門から入った方が近いので一駅先で降りてこの門から入って下さい。出向社員ようの出退勤IDカードです。これで社内に入れます」

社内バスで技術系オフィスビルに着くとその目の前にある北門から社内に入る事を進めた。
そして、オフィスビルに入ると1階の売店と10階にある休憩室と社員食堂を案内し、部署のある15階に向かう。

部署に律兄達を連れて入ったら、ちょうど9時で朝礼を始める事に。

トミタ自動車のパワートレイン開発部からやってきたエンジニアは本当にエリートだった……。

パワートレイン開発部 電子システム課 係長 相馬 律樹 (そうま りつき)32歳

パワートレイン開発部 ECU課 主任  長谷川 恭平(はせがわ きょうへい)32歳

パワートレイン開発部 半導体デバイス課 主任 藤堂 直人(ふじとう なおと)32.歳

肩書きのある、そして、男前の独身の若手男性社員3人が派遣されて、うちの課のメンバーは一瞬固まってた。

わたしも、律兄が電子システム課の係長と知り驚いた。

律兄と交換した名刺にLINEのアドレスと“メッセージ送って”と書いてあったから、退社後に律兄に

“理愛です。律兄がトヨタの電子システム課の係長だって知ってびっくりしたよ。でも、さすが律兄と思った。これから宜しくね!!”

とLINEメッセージと可愛いクマさんがお辞儀してるスタンプを送信した。

律兄は定時で上がり、その後、トミタに戻って仕事をするとか言っていてすぐには既録にならず、返信も返ってこなかった。

iPhoneを片手にそわそわ待ってたら、23時過ぎに律兄からLINE通話がかかってきた。

「理愛、すぐに返信できなくてごめんな」

「う、うん。律兄が忙しいのわかるから。わたしも9時過ぎまで仕事してたし」

「そっか、怒ってないか。
昔の理愛だったら、ベランダ乗り越えて勝手に俺の部屋に忍び込んでるのに、俺が塾で帰ってくるのが遅いと怒ってたのにな、少しさみしいな」

寝る前に律兄と少し話をして頭を撫でて欲しくて、わたしは毎小4から中2まで、毎日、欠かさずにベランダを乗り越えて律兄の部屋に行ってた。

律兄が大学受験で塾通いで遅くまで帰ってこない日は、律兄の部屋でわたしが寝てしまって、優しい律兄は少し広いシングルベッドで身体を密着させて一緒に寝かせてくれた。


「理愛がデンタに勤めてるって聞いて同じ県にいるから食事にでも誘おうかと思ったけど、6年も会ってないのに声をかけるのもなっと思ってしなかった。仕事がきっかけで、また理愛とこうやって話せて嬉しいよ」

京都が地元のわたし、就職して名古屋に出てきた。
律兄は東京大学の工学部に通ったからそのまま東京の企業に勤めると思ってた。

「連絡くれたらよかったのに!!」

「水曜日はデンタも定時退社日だろ?飯に行こう。理愛の家の近寄りの駅はどこ?」

「知立駅。律兄は?」

「俺は、土橋。じゃ、知立駅で19時に、おやすみ」

そう言うと、律兄はLINE通話を切った。
律兄に明日、一緒に食事にいくことが楽しみでならなかった。


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