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流されたらいけない 2

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「萌花を抱きしめさせて」

「ワンピースにシワがつくし、ストッキング履いたままはむれるから嫌!!」

私の身体をぎゅっと抱きしめて拘束する結翔くんを上目遣いに見上げた。
お気に入りのワンピースがぐちゃぐちゃになるのは本当に嫌。
黒の裏起毛タイツ履いて寝ると汗をかいて臭いがしてきそう。

「じゃあ、萌花も部屋着に着替えてきて」

「……わかった」

いつもなら私が嫌がっても服を脱がせてすぐに襲ってくるのに、別れると言われたからか今日はしてこない。

結翔くんを信じ、朝着ていたシャツワンピースに着替え、結翔くんが待つ寝室に戻る。

「……結翔くんとしたくないから」

「わかってる。抱きしめさせて」

背中を向ける私に密着し、結翔くんが抱きしめてきた。

「萌花を抱きしめていたら安心する。萌花、愛してる。夜寝る時に俺の隣にいてくれ」

短い仮眠を取りつつほぼ徹夜で仕事をしてたのだろう。
結翔くんはすぐに眠りについた。
私も結翔くんの温もりを感じ心地がよくて、うとうとして寝落ちしてしまった。

「……せっかくのクリスマスなのに萌花とデートに連れていけなかった!!」

結翔くんの声で目を覚ます。
外は真っ暗になっていて、時計の針を見たら午後8時を回っていた。


「レストラン、何処か空いてないか……無いよな。土曜日のクリスマスだしな」

スマホでミシュランで星がついてるレストランを結翔くんが鬼検索してる。

「……スーパーに買いに行くじゃだめ?」

寝てただけだけど、お腹はすいた。
冷蔵庫の中に食材はあるけど、せっかくのクリスマスだからクリスマスチキンやローストビーフ、カルパッチョとかを家でゆっくり食べたいと思った。

「そうだな。近くだと成城石田があるな。萌花、買いに行こう」

ベッドから起き上がり、外出するために着替える。
結翔くんは面倒くさがり、靴下履いて厚手のジャンバーを羽織るだけだった。

「……寒いよ」

「近いから大丈夫」

「雪、降ってるよ」

「ホワイトクリスマスか、なんかいいな」

玄関でロンググーツを履く。
置いたショルダーバックを手に取ろうとしたら、結翔くんが持ってた。

玄関から出ると私の左手を繋ぎ、寄り添って歩く。

「……買い過ぎだよ」

「余ったら明日食べればいい」

「生モノは鮮度が落ちちゃうよ」

「昼ならセーフだろ」

結翔くんがホタテやアトランティックサーモン、真鯛にイクラと次々と買いカゴに入れていく。

「オードブル、どれにする?」

「ローストチキンだけでいい。後は作る」

松坂牛のサーロインステーキにローストビーフ用のヒレ肉も買いカゴに入ってる。


マンションに戻ってからすぐにディナーの準備に取り掛かる。
ローストチキンをオーブンで温めてる間に、作り置きのポテトサラダとブロッコリーでポテトサラダツリーを作り、サーモンとホタテのカルパッチョにイクラを散らす。
結翔くんがサーロインステーキをミディアムレアで焼いてくれて、パスタを茹でてシーフードが盛りだくさん乗ったペペロンチーノを作ってくれた。

「萌花とこうやって一緒に料理をつくって食べるのいつぶりだろ」

「結翔くんが修士卒業して以降はこうやって食事をする事なかったよ」

結翔くんと仲良く寄り添えたのは、付き合い始めてから2年間だけ。
ソミーの仕事をするようになって、寄り添える時間が無くなった。

「……こういう時間、もっと作らないとな。俺も在宅勤務日作る。部下の報告待ちで無駄に会社に拘束されてる時もあるから、家だとその時間は萌花の隣にいられる」

結翔くんがまるごと1羽のローストチキンをナイフとホークで食べやすく切り分けて、私の皿に置いてくれた。

「年末年始休暇に、ここに引っ越してきていいか?」

2LDKの部屋で、私はリビングで仕事をしてる。
だから、寝室とは別に使ってない部屋がある。

「失った信頼関係を取り戻したい。俺にチャンスをくれ!!」

「わかった。その代わり、私がいいっていうまでは身体の関係は持たないからね」

「わかった。萌花を抱きしめて眠れたらそれだけでいい」

年末年始から結翔くんと私のマンションの部屋で同棲する事になった。
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