鬼畜社長からのまさかの溺愛

兄家族とのしばしの別れ

「ALICEを辞めるわけじゃない。ALICEの副社長と兼任する。デンタの子会社に微細化半導体の発注かけるのに最先端半導体開発部部長の肩書きがあった方が指示が通る。葛城にそう伝えたはずだが」

カノンのシャットダウンを見守った後、兄の元へ駆けつけた。
仕事に対して人一倍野心がある兄。
トミタ関連のナノ1半導体開発を成功させるために、ALICEからの出向社員としてデンタで働く。

「杉瀬製作所をALICEに統合する手続きが完了したら、5年ぐらい刈谷に行くが、定期的に顔を出しに帰ってくる」

兄とは近くに住んでいても、気まずさから、ずっと疎遠だった。

「伽凛ちゃん、夕ご飯、食べていって！！」

白百合さんが揚げたてのコロッケとエビフライに山盛りのキャベツの千切り、そして赤味噌のお味噌汁を出してくれた。

夕飯時の時間だったから製作所近くにあるの自宅にお邪魔し、白百合さんの手料理を頂いた。

「東京から愛知は新幹線で2時間かからないし、遊びにきてね。私か颯人兄さんが駅まで迎えにいくよ」

時々、冨田専務が当たり障りのない景色の写真やグルメの写真をLINEしてくる。
それに対し、スタンプで返信してる。

「冨田専務、……まだ独身なんですか！？あのスペックで気配りできる人なのに」

「彼も忙しいからね。お見合いとか話きても全て断ってる。38になるのに結婚しないから、和雄おじさんが跡取りがいなくなると焦ってるわ」

冨田専務からプロポーズされ、曖昧に返事をし、その後、仕事で絡みがなくなり、そのまにしていた事を思い出す。

「伽凛ももう30歳過ぎたんだからそろそろ結婚しろ。葛城みたいにAIロボットに老後面倒みて貰うのか？」

仕事絡みで表面上だけ葛城社長と関係修復したと思われる兄。
トミタ関連の最先端半導体開発のために頭を下げALICEに戻ってくるも、副社長の肩書き残し、半導体部品の開発設計を葛城社長にさせる気でいる。

兄は目的達成のためなら手段を選ばない。
葛城社長よりも鬼畜な気がする。

兄家族は3ヶ月後、名古屋が地元のメンバー5人を連れて刈谷へ旅立った。