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夫から愛されてる

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『結芽、明日から3日間は仕事を忘れろ!!俺も休む!!』

創兄から30日の夜にいきなり電話がかかってきた。

1年365日、休まず仕事をしてる。
労働基準法は管理職には関係ない。
経営者一族なら会社を背負ってるんだから、仕事優先にしないといけない。

『……息抜きも大切だ。1日は実家に集合だ。11時に来いよ!!』

結兄こそ、経営関係の仕事を溜め込んでいて、休みの日は執務室に引きこもって書類作成をしてる。
平日は責任者として社長の代わりに大きな現場を回っていて、多忙極まりない。

「創兄が明日から3日間は仕事を休めって……」

「……当たり前だろ。大晦日と正月の3が日は休むのが世界の常識だ!!」

朝の7時半に出勤し、夜の10時過ぎまで毎日会社で仕事をしてる。

「結芽、明日から3日間、休みを愉しもうな!!」

須藤さんは嬉しそうにしてる。
仕事のきりがいいところまで終わらせ、23時過ぎにオフィスビルから出た。

「結芽、明日休みだからBARにでも行くか?」

「行かない。もう、遅いし……」

「じゃあ、地下のスーパーで酒とつまみを買って帰るか」

私の右手を握りしめ、徒歩5分の所にあるマンションへ向かう。

地下でローストビーフやサーモンのマリネなどが入ったつまみとビールと酎ハイを購入して、部屋に戻る。

「結芽、先にシャワー浴びておいで」

帰ってすぐに、須藤さんはぐびっとビールの缶を開けて呑み始めた。

浴槽に湯を溜めてゆっくり浸かりたいなと思いつつも待たせたら申し訳ないから、すぐにでる。

リビングのテーブルに買ってきたオードブルを並べ、皿と箸を用意し、つまみを摘みながら2缶目のビールを須藤さんはあけてた。

入れ替わりですぐにシャワーを浴びにいき戻ってきた須藤さんはご機嫌に3本目のビールの缶をあける。

「……飲み過ぎですよ…」

「俺、枠だから酔わない」

500mlの缶を2本あけたのに素面に近い。

「明日、どこか出かける?」

「……どこも混んでると思うから、家でゆっくりしたいかな」

「じゃあ、朝からずっとベッドの上で愉しもうか!?」

「……それは、嫌。久しぶりに品川プリンセスホテルの水族館に行きたい。で、その後にランチして、家に帰ってから紅白歌合戦観ながらゆっくりしたい」


夜中の2時過ぎまで、仕事関係の話や短期留学していた時の事を話題に話しながら飲んだ。
オードブルのおかずが無くなり、歯磨きをして須藤さんの部屋のベッドに一緒に入って抱き枕にされて眠る。

枠とはいえ、500mlのビールの缶を6本あけ、まだ呑み足りないとウィスキーを出してきて瓶の半分を飲んだから、さすがに酔いが回って、ベッドに入ってからすぐに寝息を立て始めた。

須藤さんと仕事をするようになってから、夫婦の営みをしない日も、私をベッドに連れ込み一緒に寝るようになった。

朝はキスで起こされるも、昔みたいに身体を求めてはこず、モーニングを食べにいくか調子を家で食べてから出勤してる。

私の事を子供を産ませ育てさせる嫁から、仕事のパートナーも務める嫁に認定したんだろう。

須藤さんがカグラホームの専属になったてから1年半、依頼の殺到もそろそろ落ち着いてくると思う。

そしたら、須藤さんは私に子供を作り産ませる事を考え始めるのかもしれない。

9時過ぎに起き、身支度を整え、歩いてグランドプリンセスホテル品川へ向かう。
左手を恋人繋ぎで繋がれ、須藤さんと肩を並べて歩いた。

結婚してから1年半が経つが、仕事に追われる日々を送っていたから、須藤さんとお出かけした事がない。

ホテル内に併設されている水族館内をじっくり愉しみながら歩く。

水槽やアトラクションにはさまざまなテクノロジーと華やかな装飾など施されていて、音と光の織りなす癒しの空間は何度来ても飽きない。

巨大水槽内を優雅に泳ぐ魚たちをゆっくり眺めていると、穏やかな気持ちになれた。

「また、来ような」

4時間も楽しんでしまった。
須藤さんとのデートは思いのほか楽しかった。

ホテルの1階にある日本料亭で遅いランチをとり、マンションへ戻る。

「結芽、ちょっとこい!!」

部屋に戻る前に年越しそばと年越しオードブルを地下のスーパーで購入してきて、それを冷蔵庫に片付け、リビングへ戻るとテーブルの上にノートパソコンを広げて何かを見てる須藤さんに呼ばれた。

「夏の短期留学の時の写真。懐かしいだろっ!!」

年ごとに纏めてあり、その中の1番古い私が高校1年の時のホルダーを開いて見せてくれた。

「若い!!……14年も前だもんね」

私の隣には19歳の創兄と須藤さんがいる。いつも2人にくっついて回ってた。

「まさか、この年の学生内コンペが最年少の結芽のデザインで決まるとは思わなかった。あの時は悔しかったな」

私も自分が選ばれるとは思わなかった。
コペンハーゲンの街に私がデザインしたカフェがある。
初めの年は私が選ばれたけど、その後の6年間は須藤さんが選ばれてた。

「仕事が落ち着いたら、コペンハーゲンに旅行しよう」

懐かしい写真を1枚ずつ見ていく、1ヶ月間の短期留学だったけど、深い事を学んだ。

「……俺さ、実はこの時に結芽に惚れたんだ。5歳、年が違うのと夏休みのひと月しか逢えないから、告白できなかった。この時に気持ちを伝えていたら、今頃どうなってたかな」

まさかの告白に驚く。
私も創兄と違って、面倒見がよくて優しくてカッコよくて賢い須藤さんに、憧れて好意を抱いてた。

「結芽の側にいると当時の気持ちが戻ってきて、愛おしくて堪らない。結芽、愛してる」

須藤さんに背後からぎゅっと抱きしめられ、こめかみ、耳裏、首筋と唇を這わされ、胸が熱くなる。

「……私も、須藤さんの事を、愛してます」

結婚してからの1年半。
半年間は夫婦とはいっても仮面夫婦で、この関係に愛はないと思ってた。
そして、仕事でのパートナーを務めるようになってからは、手が焼ける須藤さんに母性本能をくすぐられ惹かれつつ、愛されてないと思い、好きにならないようにしてた。

「……結芽と、やっと気持ちが通じた」

私の身体をくるっと反転させ、須藤さんは噛みつくようなキスをしてきて、そのままソファーに押し倒され、抱かれた。





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