魔界食肉日和

トネリコ

文字の大きさ
上 下
5 / 61

5、本

しおりを挟む
 



「トカゲ好きだー、結婚しよーぜー」
「ふっ、ワニよ、策に掛かったな」
「おー?」

 いつものバカでかい声でのっしのっしと現れたワニ。

 バカだから一目瞭然の此処を見ても場所が分からなかったんだろう
 脳筋ばかだから

 とか言う間に司書ゴーレム軍団が現れた。
 そう、此処は我が勤め先である邪悪なる図書館の中でも最奥である。

 いつもの場所は何だかんだとこいつの存在に慣れやがって静かにしろと挑んでくれる猛者がちっともいなくなっちまったしな 
 まぁ全敗でシミになったが

 だが此処の奴等は一味違う。
 よい子は静かにしないと魔王様直々のゴーレム達によって排除ころされちゃうのだ☆

 ふっはっはー、スープになりやがれー!

 わくわくと禁書片手にゴーレムを応援していると、何処からともなく何トンもありそうなどす黒いオーラと血塗られて赤い戦斧を取り出したワニ。

 は? いや、お前此処でそれは

「おい、ワニちょ、やめ」
「いやトカゲ、流石に武器ないときついわー」

 ちゅどーんではない、ドグワオオオオンンンである。

 ゴーレム達がいた場所にクレーターが咲いた。

 月面か
 秒殺か

 そしてわらわらとレベル2に移行したのか司書ドラゴンが現れる。
 
「トカゲー、いい場所じゃねーかー、次も此処でデートしようぜー」
「デートじゃねえよクッソ! やめろ! 片付け一人なんだぞうおおお」

 目の前でぱっぎゃーんとドラゴン花火(首だけ)が打ち上がる。
 天井に染みになる。

 ああああ、レベル3に入ってトラップが……

 ワニはノリノリでいい準備運動だなーと戦斧を振り回している。

 思わず絶望の涙を流した。
 本棚からは既にほぼ全部本が落ちている。
 見渡す限り本の山だ。
 でも禁書は本の癖に私よりも万倍防御力が高いから無傷だ。

 というかさっきから大事に扱えとうるせえ
 本の癖にうるせえ、燃やせないから代わりにワニの方に投げるぞ!
 お前等片付けずに放置してやろうか!!!
 
「トカゲそんな喜ぶなよー、照れるぜー」
「ワニ死ね! いけ死神龍! お前しかいねえ! 負けんな! そこだ! 世界はお前に掛かってる!」

 援護でひたすら禁書を投げつけた。

 くそ避けられた

 あ、本が死神龍に当たった。
 死神龍が灰になった。

 くっそ、名ばかりかよ! 図体だけだったじゃねえか、つかえねー!

「トカゲナイス援護ー、俺ら息ぴったりだな!」
「ワニの息なら止めたいがな」

 これ以上やっても被害が増えるだけなので諦めてトラップのスイッチを切った。
 ちなみにレベル十まである。
 最早ここで終わらせて良かったと思うしかない。

 目の前の燦々たる現状に地面で四つん這いになるしかない。

 このいかれチートクソワニめぇ…
 給料引かれるわ、落ちた本を本棚に戻すのも1人だわ…。未来は真っ暗だ。天井の染みに擬態してぇ

 ちなみにある程度は城自身で破壊跡は治してくれる。
 生きてるし

「ワニのせいだし手伝えよなー」
「おーいいぜー」

 しゃーなしに諦めてそこらのぶつくさ煩い禁書を拾って棚に一冊入れる。
 ワニに天井付近の染みをまずは洗わせて……

「隊長いた。今日進軍の日っすよー」
「そういやそうだったなー、じゃトカゲ行ってくるわー。土産待ってろよー」

 
 クッソ、ワニマジクッソ!!!


 1人で片付けた。
 死ぬかと思った。
 灰になった死神龍はデータごと消滅してたらしいのでこいつが一番高かった。
 死神系はマジ使えないと思った。


 大体いつも通りな日常だった。 









後書き
 





 以降本棚自体に落下防止の魔法が施されたらしい。
 まさかワニレベルが暴れるとは思わなかったそうな。

 というかレベル一のゴーレム軍団だけで大抵の侵入者(図書館の最奥くらいまでなら到達出来る程度の人間)ならば瞬殺できますね~。言い方がおかしい?あー、実は魔族にとって気持ち的には正直禁書ってそんなに守りたいやつじゃないんですよねぇ。こう仕方なくというか(笑)

 なので防御網というか、警戒レベルは上の下程度なんすよ~。魔王様が上の上なのは当然☆ とはいえ魔王様のが部下より強いが。うむ。まぁ魔王様は魔族達から大人気なので。強いし美しいし。あと強いし。うむ。モテ基準はまぁ…魔界なので☆

 魔族の侵入者はレアかも。脳筋も多いっすし。まぁ禁書は逆に知能指数と狂気具合が振り切った奴等の力作なんですけどね(目を逸らし)

 というか人間界では何か手に入れたら世界を制す…レベルの賢者の書達みたいな変な感じで伝わってるという…、いやまぁあまりに魔族どころか世界に傍迷惑過ぎて禁書指定くらった本達だからあながち間違いではないんですけど、まぁ禁書ですしね。大概の禁書は普通の者が触れると大概が悲惨な末路を辿りまっす☆ 禁書に操られたり脳がぱっぎゃーんしたり…etc…ね!☆

 魔族も人間もお構いなしでっす☆うむ、傍迷惑過ぎる。というか、原産場所魔界なんで、魔族のが被害者が絶賛多い。

 魔族の守りたくないけど仕方なしの気持ちも分かる様な気もする裏事情である。でも、下手に守らなくて出回ったら余計に被害大だしなぁ…(遠い目)という訳で一番お客さんが来ないようにと最奥。実際侵入者は数える程しか来ていないし、今の所被害は一度もない。むしろ今回が初被害であった。

 トカゲさんやったね!☆

 まぁ禁書も役に立つ時もあるにはあるんだけどね…うん、長くなったのでここらで割愛☆
 
 詳しくはまた禁書についての話にて~☆





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

側室は…私に子ができない場合のみだったのでは?

ヘロディア
恋愛
王子の妻である主人公。夫を誰よりも深く愛していた。子供もできて円満な家庭だったが、ある日王子は側室を持ちたいと言い出し…

殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。 真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。 そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが… 7万文字くらいのお話です。 よろしくお願いいたしますm(__)m

夫の裏切りの果てに

恋愛
 セイディは、ルーベス王国の第1王女として生まれ、政略結婚で隣国エレット王国に嫁いで来た。  夫となった王太子レオポルドは背が高く涼やかな碧眼をもつ美丈夫。文武両道で人当たりの良い性格から、彼は国民にとても人気が高かった。  王宮の奥で大切に育てられ男性に免疫の無かったセイディは、レオポルドに一目惚れ。二人は仲睦まじい夫婦となった。  結婚してすぐにセイディは女の子を授かり、今は二人目を妊娠中。  お腹の中の赤ちゃんと会えるのを楽しみに待つ日々。  美しい夫は、惜しみない甘い言葉で毎日愛情を伝えてくれる。臣下や国民からも慕われるレオポルドは理想的な夫。    けれど、レオポルドには秘密の愛妾がいるらしくて……? ※ハッピーエンドではありません。どちらかというとバッドエンド?? ※浮気男にざまぁ!ってタイプのお話ではありません。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

【完結】捨てられ正妃は思い出す。

なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」    そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。  人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。  正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。  人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。  再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。  デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。  確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。 ––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––  他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。  前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。  彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。  

【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。

たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。 わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。 ううん、もう見るのも嫌だった。 結婚して1年を過ぎた。 政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。 なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。 見ようとしない。 わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。 義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。 わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。 そして彼は側室を迎えた。 拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。 ただそれがオリエに伝わることは…… とても設定はゆるいお話です。 短編から長編へ変更しました。 すみません

処理中です...