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普段なら学校からここまで20分もかからないはずなのだが、葉原の歩く速度に合わせていたため30分近くかかってしまった。

けれどまぁ、悪いことだとは思わない。

約1年振りに親しい後輩とこうして話すことができたのだから、有意義な時間だったと思うべきだろう。

と、そんな風に思っていると、隣を歩いていた葉原が一歩前に出て俺の正面立ち、足を止めた。


「それにしても、久し振りに晴人くんとちゃんと話せて良かったぁ。次からは学校で会っても無視しないでよね!」

「あぁ。なるべく声をかけるようにする」

「なるべくじゃなくて! 絶対!」

「はいはい絶対絶対」

「なんかテキトー……」

葉原はくりっとした大きな瞳を細めて、じっとりと睨むように俺の顔を見つめる。


「そういうお前はいい加減、その『晴人くん』ってのやめろよ。せめて学校では『先輩』って呼べ」

「えー、やだよぉ。晴人くんは晴人くんだし」

「なんだそれ……」

葉原は少しも検討する素振りも見せずに拒否すると、悪戯っぽくにこりと笑ってみせた。


「それじゃあ、晴人くん。お互いテスト頑張ろうね!」

「入学して初っ端から赤点とか取るなよ」

「取らないよぉ!」

「どうだかな。……まぁ、何か困ったことがあれば声かけてくれ。出来る限りのことはしてやる。先輩だからな」

最後の一言を強調して言う。

すると葉原は「ありがと! 晴人先・輩・」と生意気な口調で言葉を返し、俺が何かを口にする前に「またね」と軽く手を振りながら脇道へと消えていった。


そうして1人残された俺は、女子高生成り立ての葉原が持つ底知れぬの活力に圧倒されながら、自宅へと続く薄明の帰り道を一歩一歩ゆっくりと進んでいった。
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