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5.勇者を育てた俺、次は何を育てる?
5-4
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二人が食べ終わるときには本当に鍋の中が空になっていた。
一応多めにつくっておいたが、見た目以上の食事量だったな。
「ありがとうございます。姫様だけではなく、私まで助けて下さり」
「そういえば君の名前は?それとさっきからその姫様っていうのは?」
「私の名前はありません。それと姫様というのは私が呼んでいるだけです」
「呼んでいるだけ?特別な何かがあるというわけではなくて?」
「はい。元々は別種族、奇跡的に会って一緒にいたんです」
さっきから思うんだが、随分と丁寧な言い方をする子供だな。
まるで大人が子供の恰好をしているだけにしか見えない。
「ちなみにだが、君たちはこれからどこかに行こうと考えていたのか?」
「いえ、今を生きていくのだけで精一杯でしたので……」
「そうか、それなら好きなだけこの家にいるといい。食事も出すし寝る場所も用意する。ただ、食事とか手伝いはしてもらうけどな」
「「本当!?!?」」
これには姫様も食いついてきた。
本当に大変だったんだろう。
「そうだとしても名前がないと不便だよな」
「それなら付けてもらえないでしょうか」
「俺なんかが付けていいのか?」
「構いません。命の恩人に付けてくれるなら嬉しいほどです」
「私も嬉しい」
そういう事なら名前を考えなければな。
まずは鬼の子のほうだが、何がいいだろうか。
姫様のナイトみたいな存在だったし、少しずらしてイトナなんていいんじゃないか?
花の子はそのままフラワーから取ってきてフラウが似合いそう。
見てパッとでてきた名前ならすぐに覚えられそうだし、時間をかけて待たせるよりはいいのではないだろうか。
「君がイトナ、君がフラウなんてどうだ?」
「イトナ……」
「フラウ…うん、気に入った」
【名 前】イトナ
【種 族】鬼人子
【職 業】護衛
【レベル】32
【H P】360/360
【M P】300/300
【ATK】160
【DEF】90
【スキル】『鬼化』
【名 前】フラウ
【種 族】上位植物人
【職 業】――
【レベル】22
【H P】100/100
【M P】200/200
【ATK】30
【DEF】20
【スキル】『栄養操作』
体力も全快しているようだし、しっかりと休められていたようだ。
イトナは鬼人子、フラウはアルラウネ?
アルラウネってあれだよな、森とかにいる植物が人間になったようなやつだった気がする。
その頭の花が取れなかったのはアルラウネだったからなのか。
「さて、二人も無事だと分かったことだし、俺たちは修行をするか」
「「修行?」」
「ああ。ネスト、そこにいるスライムの修行だ」
二人は驚いた顔でネストを見ている。
そりゃあ君たちにとってスライムを育てるなんてバカらしいと思うだろう。
俺と同じ人間でも同じように思うだろうし。
それでもネストには可能性があると思うんだ。
何せ昨日の時点でレベルが大幅に上がったんだし。
「私も見ていい?」
「私もお願いします。邪魔はしませんので」
「もちろんいいとも。だが無理はするなよ?」
「「はい……!!」」
嬉しそうに答える二人。
そんなに面白いのだろうか?
スライムを育てる光景なんてまず見れないし、面白半分なのだろう。
それでも興味を持ってくれるだけでもうれしい。
俺とネスト、それに加えてイトナとフラウは外へ向かった。
場所はいつも通り、だけど今回は人数が倍になっている。
「今日はさっそく魔法の練習をしようと思う」
「スライムが魔法を使うの?」
「使えるかは分からないが、使えるには十分なレベルになっている。使えなくてもおかしくはないだろう」
「でもスライムが魔法を使うなんて聞いたことがありません」
「試すにはちょうどいいだろう?出来ても出来なくても別の方法で育てればいい」
ブラッド曰く、魔法を使わずに剣一本で英雄と言われるまで上り詰めた人がいる。
それは魔法を使わなくても何か一つに絞って成長をすれば強くなれると言うことだ。
ブラッドのように魔法も使えるに越したことはないが、それ以外でも方法があるというわけだ。
そして、いつもの声が聞こえると俺はさっそく行動に移った。
「まずは俺がお手本を見せるからそれをお手本に――」
ネストに説明していると、フラウは俺の服を引っ張ってきた。
「どうしたんだ?」
「私も修行に付けてほしい」
「姫様!!」
「えっ?それは構わんが、一体どうしたんだ?」
「イトナに助けてもらってばかりではダメ。私も強くなりたい」
「それなら私もお願いします!もう二度と姫様が倒れないほど強くなりたいです!」
二人は二人を助け合うために強くなりたい。
それなら断る理由もないだろう。
助け合う強さは根拠がないけど強くなれる糧になれると俺は考えている。
「なら二人も一緒にやろうか。だが、さっきも言った通り無理はするなよ?」
「「はい!!」」
『イトナとフラウの職業が変更されました。ステータスに反映いたします』
二人ともレベルはネストのレベルに近い。
人によってはレベルが一桁から魔法が使える者もいるが、平均的にレベルが二桁になると大体の人が使える。
これはあくまでも人に限った話だが、ネストたちはどうだろうか。
「まずどんな魔法を覚えたいかだが、どういうのを覚えたい?」
「何でもいいの?」
「ああ、覚えたいのがあったらそれを覚えたいだろう?」
「それなら私は雷の魔法を強化したいです」
「私は操作魔法」
ネストは…何を言っているか分からないけど、話せるようになりたそうにしていた。
確かに話せないと不便だから覚えたいのも分かる。
俺とイトナ、それにフラウと話しているとき全く会話に入れないのも寂しいからな。
イトナの雷の魔法を強化ということは元々魔法を使えるのだろう。
レベルも32と、この3人のなかでも一番レベルが高い。
それにスキルの『鬼化』も気になる。
フラウの言っていた操作魔法は、スキルにある『栄養操作』で間違いない。
何の栄養かは、アルラウネという所から考えるに植物の栄養のはず。
それを使うとどうなるかは分からないけど、どうも便利そうで三人の中で一番注目している。
もしかしたらリガの木にも使えるかもしれない。
『鬼化』:角が伸び、肌は赤くなり鬼と化す
『栄養操作』:自身付近に存在する栄養の操作が可能
栄養操作のほうは分かったけど、鬼化のほうは変化することしか書かれていない。
使うと強くなる代わりにデメリットがあるとかそんな感じだろう。
見てみたい気持ちはあるが、万全の状態でしか使わせないようにしておいた方がいい。
早速教えるために俺が分身して見ることが出来たら一番楽だが、俺の分身が悪いのか分からないけど分身の記憶が残らない。
スタート地点の今は一人一人の能力を知っておきたいのだ。
みんなには悪いけど順番に見ていくことにした。
まず、ネストに出した課題は『音操作』を覚えてもらうことだ。
これは俺たち人間の声帯の代わりに音を操って声の代わりにさせることだ。
頭に直接話すテレパシーもいいと思ったが、これは少し難易度が高いから簡単なほうをピックアップした。
お手本として使ってみると、感覚では出したいと思った場所から振動を与えるような感じだ。
「音とは空気が振動して伝わる」なんて聞いたことがあったから、この魔法はどちらかと言うと「振動を操る」といったほうが正しい。
とりあえず空気に衝撃を与える、という課題を与えた。
今更だが、教える分には俺も魔法を使うことが出来る。
もちろんいつも通りだと使えない、便利なようで便利じゃないこのスキル。
このスキルについては三人にしっかりと伝えた。
いざという時に俺に頼られても期待に応えられないかもしれない、とも言っておいた。
それは置いといて、次はフラウ。
ネストと同じようにまず自分自身で使ってみると、スキルに書いてあった通り自分の周りにある栄養を操れた。
試しに何かの芽に向けて使ってみると、急成長を遂げて大きな木へと変貌した。
植物を操る魔法の一つでもあるみたいで、アルラウネには持ってこいなのかもしれない。
課題はとりあえず小さな芽を成長させること。
出来たら徐々に速度を上げていくことだ。
最後にイトナだ。
イトナの「雷の魔法を強化」は既に実戦で使えると考えて間違いない。
もし、使えない場合は使えるようにしたいと言うはずだからな。
「まず俺に魔法をぶつけてみろ」
「えっ、いいのですか?」
「構わない。実力を見るのはこれが一番だからな」
「そ、そうですか。では行きます!電撃!!」
俺に向けて手を向けると手から電気、というより小さな雷が飛んできた。
ブラッドには及ばないものの、レベル32とは思えないほど威力がある。
これは種族による個体差なのだろうか。
もしくはフラウを守っていた時にここまで強くなったのだろう。
問題はこれ以上強化するにはどうするべきかだ。
戦闘を重ねて強化するのもいいとは思うが、それでは上限が近い。
となると、他に考えられるのは新しい魔法を覚えることだ。
雷の魔法だったらゲームから連想できるし教えもしやすい。
ブラッドの場合は年齢が年齢で次から次へと魔法を考えてくれたから楽だったけど。
ならどういう雷の魔法がいいかだ。
さっきのを見た限り、電気以上雷未満の威力だった。
単純に雷レベルの魔法を使えるようにするのもいいけど、俺に当たる分ならいいが他の二人、ましてや魔法を使うイトナに当たるのは避けたい。
それならパワー以外で考えることだ。
ゲームでもパワーが全てなら他のステータスはいらない。
遠距離、近距離で攻撃を使い分けるのも大切だ。
…これだな。
電撃は遠距離魔法、近距離魔法を覚えてもらうのがいいかと思った。
「ちなみにだが、電気への耐性とかあるか?あと他に魔法を使えるか?」
「耐性はありますが、魔法はこれだけしか使えません」
「それならちょうどいい。今から俺がやる魔法のどれがいいか選んでくれ」
「はい!」
「まずはこれ、電気鎧」
これは魔法と肉弾戦を合わせる感じになるが、相手に触れれば電気が流れる。
肉弾戦とは言ったものの、力が要らなくて当てればいいだけの技。
それに電気が流れているから相手も触ることが難しくなる。
何より剣の対策にもなって使えるのなら使うに越したことはない。
デメリットは常に使っておかないと意味がないところだ。
「次はこれだ。電撃剣」
近距離と言ったらやっぱり剣が最初にでてくる。
もちろん剣にこだわらず、槍やハンマー、鉄扇など幅広い武器にもできる。
これは剣にこだわってこの名前にしたが、最終的には雷の形状変化まで出来ればいいと思っている。
これはその前段階だ。
「最後はこれ。電撃の塔」
自分の周囲に電気の柱をつくる魔法だ。
これは耐性がないと使えない魔法だが、イトナは持っていると言っていたからピックアップした。
範囲を広げて使えば相手が近寄った瞬間使えばいいし、捕らえられた場合も使える。
他の二つに比べれば使いにくいが、覚えといて損はない魔法だ。
「この3つのうちどれがいい?」
「全部覚えたいです!」
「…そうか」
なんとなく予想はしていたが、本当に当たっていた。
全部教えてもいいが、出来れば一番に覚えたいのも言って欲しかったな。
一応多めにつくっておいたが、見た目以上の食事量だったな。
「ありがとうございます。姫様だけではなく、私まで助けて下さり」
「そういえば君の名前は?それとさっきからその姫様っていうのは?」
「私の名前はありません。それと姫様というのは私が呼んでいるだけです」
「呼んでいるだけ?特別な何かがあるというわけではなくて?」
「はい。元々は別種族、奇跡的に会って一緒にいたんです」
さっきから思うんだが、随分と丁寧な言い方をする子供だな。
まるで大人が子供の恰好をしているだけにしか見えない。
「ちなみにだが、君たちはこれからどこかに行こうと考えていたのか?」
「いえ、今を生きていくのだけで精一杯でしたので……」
「そうか、それなら好きなだけこの家にいるといい。食事も出すし寝る場所も用意する。ただ、食事とか手伝いはしてもらうけどな」
「「本当!?!?」」
これには姫様も食いついてきた。
本当に大変だったんだろう。
「そうだとしても名前がないと不便だよな」
「それなら付けてもらえないでしょうか」
「俺なんかが付けていいのか?」
「構いません。命の恩人に付けてくれるなら嬉しいほどです」
「私も嬉しい」
そういう事なら名前を考えなければな。
まずは鬼の子のほうだが、何がいいだろうか。
姫様のナイトみたいな存在だったし、少しずらしてイトナなんていいんじゃないか?
花の子はそのままフラワーから取ってきてフラウが似合いそう。
見てパッとでてきた名前ならすぐに覚えられそうだし、時間をかけて待たせるよりはいいのではないだろうか。
「君がイトナ、君がフラウなんてどうだ?」
「イトナ……」
「フラウ…うん、気に入った」
【名 前】イトナ
【種 族】鬼人子
【職 業】護衛
【レベル】32
【H P】360/360
【M P】300/300
【ATK】160
【DEF】90
【スキル】『鬼化』
【名 前】フラウ
【種 族】上位植物人
【職 業】――
【レベル】22
【H P】100/100
【M P】200/200
【ATK】30
【DEF】20
【スキル】『栄養操作』
体力も全快しているようだし、しっかりと休められていたようだ。
イトナは鬼人子、フラウはアルラウネ?
アルラウネってあれだよな、森とかにいる植物が人間になったようなやつだった気がする。
その頭の花が取れなかったのはアルラウネだったからなのか。
「さて、二人も無事だと分かったことだし、俺たちは修行をするか」
「「修行?」」
「ああ。ネスト、そこにいるスライムの修行だ」
二人は驚いた顔でネストを見ている。
そりゃあ君たちにとってスライムを育てるなんてバカらしいと思うだろう。
俺と同じ人間でも同じように思うだろうし。
それでもネストには可能性があると思うんだ。
何せ昨日の時点でレベルが大幅に上がったんだし。
「私も見ていい?」
「私もお願いします。邪魔はしませんので」
「もちろんいいとも。だが無理はするなよ?」
「「はい……!!」」
嬉しそうに答える二人。
そんなに面白いのだろうか?
スライムを育てる光景なんてまず見れないし、面白半分なのだろう。
それでも興味を持ってくれるだけでもうれしい。
俺とネスト、それに加えてイトナとフラウは外へ向かった。
場所はいつも通り、だけど今回は人数が倍になっている。
「今日はさっそく魔法の練習をしようと思う」
「スライムが魔法を使うの?」
「使えるかは分からないが、使えるには十分なレベルになっている。使えなくてもおかしくはないだろう」
「でもスライムが魔法を使うなんて聞いたことがありません」
「試すにはちょうどいいだろう?出来ても出来なくても別の方法で育てればいい」
ブラッド曰く、魔法を使わずに剣一本で英雄と言われるまで上り詰めた人がいる。
それは魔法を使わなくても何か一つに絞って成長をすれば強くなれると言うことだ。
ブラッドのように魔法も使えるに越したことはないが、それ以外でも方法があるというわけだ。
そして、いつもの声が聞こえると俺はさっそく行動に移った。
「まずは俺がお手本を見せるからそれをお手本に――」
ネストに説明していると、フラウは俺の服を引っ張ってきた。
「どうしたんだ?」
「私も修行に付けてほしい」
「姫様!!」
「えっ?それは構わんが、一体どうしたんだ?」
「イトナに助けてもらってばかりではダメ。私も強くなりたい」
「それなら私もお願いします!もう二度と姫様が倒れないほど強くなりたいです!」
二人は二人を助け合うために強くなりたい。
それなら断る理由もないだろう。
助け合う強さは根拠がないけど強くなれる糧になれると俺は考えている。
「なら二人も一緒にやろうか。だが、さっきも言った通り無理はするなよ?」
「「はい!!」」
『イトナとフラウの職業が変更されました。ステータスに反映いたします』
二人ともレベルはネストのレベルに近い。
人によってはレベルが一桁から魔法が使える者もいるが、平均的にレベルが二桁になると大体の人が使える。
これはあくまでも人に限った話だが、ネストたちはどうだろうか。
「まずどんな魔法を覚えたいかだが、どういうのを覚えたい?」
「何でもいいの?」
「ああ、覚えたいのがあったらそれを覚えたいだろう?」
「それなら私は雷の魔法を強化したいです」
「私は操作魔法」
ネストは…何を言っているか分からないけど、話せるようになりたそうにしていた。
確かに話せないと不便だから覚えたいのも分かる。
俺とイトナ、それにフラウと話しているとき全く会話に入れないのも寂しいからな。
イトナの雷の魔法を強化ということは元々魔法を使えるのだろう。
レベルも32と、この3人のなかでも一番レベルが高い。
それにスキルの『鬼化』も気になる。
フラウの言っていた操作魔法は、スキルにある『栄養操作』で間違いない。
何の栄養かは、アルラウネという所から考えるに植物の栄養のはず。
それを使うとどうなるかは分からないけど、どうも便利そうで三人の中で一番注目している。
もしかしたらリガの木にも使えるかもしれない。
『鬼化』:角が伸び、肌は赤くなり鬼と化す
『栄養操作』:自身付近に存在する栄養の操作が可能
栄養操作のほうは分かったけど、鬼化のほうは変化することしか書かれていない。
使うと強くなる代わりにデメリットがあるとかそんな感じだろう。
見てみたい気持ちはあるが、万全の状態でしか使わせないようにしておいた方がいい。
早速教えるために俺が分身して見ることが出来たら一番楽だが、俺の分身が悪いのか分からないけど分身の記憶が残らない。
スタート地点の今は一人一人の能力を知っておきたいのだ。
みんなには悪いけど順番に見ていくことにした。
まず、ネストに出した課題は『音操作』を覚えてもらうことだ。
これは俺たち人間の声帯の代わりに音を操って声の代わりにさせることだ。
頭に直接話すテレパシーもいいと思ったが、これは少し難易度が高いから簡単なほうをピックアップした。
お手本として使ってみると、感覚では出したいと思った場所から振動を与えるような感じだ。
「音とは空気が振動して伝わる」なんて聞いたことがあったから、この魔法はどちらかと言うと「振動を操る」といったほうが正しい。
とりあえず空気に衝撃を与える、という課題を与えた。
今更だが、教える分には俺も魔法を使うことが出来る。
もちろんいつも通りだと使えない、便利なようで便利じゃないこのスキル。
このスキルについては三人にしっかりと伝えた。
いざという時に俺に頼られても期待に応えられないかもしれない、とも言っておいた。
それは置いといて、次はフラウ。
ネストと同じようにまず自分自身で使ってみると、スキルに書いてあった通り自分の周りにある栄養を操れた。
試しに何かの芽に向けて使ってみると、急成長を遂げて大きな木へと変貌した。
植物を操る魔法の一つでもあるみたいで、アルラウネには持ってこいなのかもしれない。
課題はとりあえず小さな芽を成長させること。
出来たら徐々に速度を上げていくことだ。
最後にイトナだ。
イトナの「雷の魔法を強化」は既に実戦で使えると考えて間違いない。
もし、使えない場合は使えるようにしたいと言うはずだからな。
「まず俺に魔法をぶつけてみろ」
「えっ、いいのですか?」
「構わない。実力を見るのはこれが一番だからな」
「そ、そうですか。では行きます!電撃!!」
俺に向けて手を向けると手から電気、というより小さな雷が飛んできた。
ブラッドには及ばないものの、レベル32とは思えないほど威力がある。
これは種族による個体差なのだろうか。
もしくはフラウを守っていた時にここまで強くなったのだろう。
問題はこれ以上強化するにはどうするべきかだ。
戦闘を重ねて強化するのもいいとは思うが、それでは上限が近い。
となると、他に考えられるのは新しい魔法を覚えることだ。
雷の魔法だったらゲームから連想できるし教えもしやすい。
ブラッドの場合は年齢が年齢で次から次へと魔法を考えてくれたから楽だったけど。
ならどういう雷の魔法がいいかだ。
さっきのを見た限り、電気以上雷未満の威力だった。
単純に雷レベルの魔法を使えるようにするのもいいけど、俺に当たる分ならいいが他の二人、ましてや魔法を使うイトナに当たるのは避けたい。
それならパワー以外で考えることだ。
ゲームでもパワーが全てなら他のステータスはいらない。
遠距離、近距離で攻撃を使い分けるのも大切だ。
…これだな。
電撃は遠距離魔法、近距離魔法を覚えてもらうのがいいかと思った。
「ちなみにだが、電気への耐性とかあるか?あと他に魔法を使えるか?」
「耐性はありますが、魔法はこれだけしか使えません」
「それならちょうどいい。今から俺がやる魔法のどれがいいか選んでくれ」
「はい!」
「まずはこれ、電気鎧」
これは魔法と肉弾戦を合わせる感じになるが、相手に触れれば電気が流れる。
肉弾戦とは言ったものの、力が要らなくて当てればいいだけの技。
それに電気が流れているから相手も触ることが難しくなる。
何より剣の対策にもなって使えるのなら使うに越したことはない。
デメリットは常に使っておかないと意味がないところだ。
「次はこれだ。電撃剣」
近距離と言ったらやっぱり剣が最初にでてくる。
もちろん剣にこだわらず、槍やハンマー、鉄扇など幅広い武器にもできる。
これは剣にこだわってこの名前にしたが、最終的には雷の形状変化まで出来ればいいと思っている。
これはその前段階だ。
「最後はこれ。電撃の塔」
自分の周囲に電気の柱をつくる魔法だ。
これは耐性がないと使えない魔法だが、イトナは持っていると言っていたからピックアップした。
範囲を広げて使えば相手が近寄った瞬間使えばいいし、捕らえられた場合も使える。
他の二つに比べれば使いにくいが、覚えといて損はない魔法だ。
「この3つのうちどれがいい?」
「全部覚えたいです!」
「…そうか」
なんとなく予想はしていたが、本当に当たっていた。
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