異世界モノつめあわせセット

銀狐

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4.異世界で女神様と町づくりしませんか?

4-1

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「はぁ…疲れた……」

 俺は時田真司ときた しんじ、28歳のサラリーマンだ。

 今はこうして帰宅途中。
 忙しい時期になると日が越えるのは当たり前。

 でもこれが1週間で終わるのが幸いだ。
 他は定時帰宅なんだからな。

「やばい…眠すぎて足取りが……」

 時間は朝6時。
 朝の電車での帰宅だ。

 これから家に帰って寝て、お昼にまた出勤。
 家に帰れるだけ、まだマシだと思った方がいいかもしれない。

「や、やばい。久しぶりの不眠不休で…もう…だめだ……」

 俺はその場で倒れてしまった。
 意識も段々遠のいていく。

 次に目が覚めた時、俺は驚きの光景を目にした。

「ここは…一体どこだ……?」

 どこかの部屋なのか?
 何も家具はないけど。

 歩こうと思ったその時だ。
 何か違和感があった。

「手足が…身体がない……!?」

 えっ、俺の身体どこいったの!?
 体を動かしそうにも動くのは視線だけ。
 まるで監視カメラみたいだな。

「さて、目覚めたかな?」
「うおっ!?」

 目のまえに綺麗な天使が現れた。

「天使……」
「ん?私はどっちかと言うと女神様!名前はメリア」

 ニコッと笑顔で教えてくれた。
 可愛い……。

「どうかしたの?」
「いや、可愛いなあって……」
「ふふっ、ありがとう」

 それにしてもなんで俺はこんなところに?
 なんでこんな可愛いこと一緒の部屋にいるの?
 その上身体はない。

「実は君、死んじゃったのよ」
「……えっ?」
「驚くのも無理はないわ。唐突な死だったんだから」

 そうか俺、死んでしまったのか。
 でもなぜか冷静でいられる。
 パニックでも起こしているのかな?

 前回は全然耐えられていたのに、まさかこうなるとは。
 まだ倒れて病院なら分かるけど、そのまま死んじゃうとは。

「それでね、いきなりなんだけど、なんと君は選ばれました!!」
「今日死ぬ人とかにでも?」
「そうじゃないよ。そんなものではないよ」

「生まれ変わって私と異世界で町をつくらない?」
「生まれ変わって…町を……?」
「そう!生まれ変わって!だから今身体がないんだよ」

 だから、ってどういう事なんだろうか。
 前の世界と同じ見た目ではダメなのかな?

「ちょっと待ってね……。よし、何かメニューみたいなのが出たかな?」
「あっ、出ました。なんですかこれ?」
「敬語じゃなくていいわよ。これから一緒に異世界に行くんだから」
「は、はあ……」

 何か、拒否権はないらしい。
 まあもう1回人生をやれるなら嬉しいから了承するつもりだったけど。

「そのメニューはゲームで言うキャラメイキングだよ」
「次の世界で使うための?」
「そう!私がつくってもいいんだけど、自分でつくりたいでしょう?」

 そりゃあ自分でつくりたい!
 次の世界で使うならできれば凝りたいし。

 それにしてもいろんな項目があるな。
 目、鼻、口。
 髪型や身長体重まで全部選べる。

「へぇー!本当にゲームと一緒だね」
「ちなみにだけど、おすすめの見た目もあるからよかったら見てみてね!」

 本当だ、おすすめってある。
 少し見てみようか。
 試しに一番上にあった『おすすめ①』を選んだ。

「おおぉ……」
「ちなみにこれは私のおすすめ!」
「いいね、これ」

 てっきりデフォルトで固めただけの平均的な顔をイメージだった。
 だけど整った顔、外国人と言うより日本人のイケメンな感じ。

 せっかくだし、このイケメンにしようかな?
 おすすめって言っていたし。

「じゃあこれで!」
「分かった!魂を入れるからちょっと待ってね」

 メリアは俺に近づくと俺を手に取り、さっき見ていた人間に押し込んだ。
 すると俺はその人間になっていた。

「すげぇ……」
「しっかり入れている?」
「入れているよ。ほら」

 試しに手足、腰を曲げたりしてみた。
 前の身体と違って軽く感じる。

「ちなみにこれでも君と同じ28歳だよ」
「嘘だろ……」

 世の中にはこんなにすごいアラサーがいるのかよ。
 自分との差が悲しい。

「詳しくは向こうに行ってから話すけど、まずはこれからよろしくね」

 俺はこれから異世界に行って、町をつくるみたい。
 前と違い、会社に行って仕事をするのとは違う。

 それに町をつくるって聞いたとき、心のどこかで喜んでいた。
 初めてのことでもあるし、何よりこうして何かをつくる系は好きだ。
 しかもまだ知らない世界、異世界で。

 言わずとも、楽しみで胸がいっぱいだ。

「ああ、よろしくな」

 俺たちは握手をした。
 これからこの女神様と一緒に町をつくっていく。

 …一緒に?
 というと一緒に暮らすのかな?
 町づくりの方に目が行ってて見逃していた。

「じゃあ行きましょう」

 目のまえに大きな扉が出てきた。
 そして開き始め、向こう側は光っていてよく見えない。

 俺は勇気を振り絞り、その扉をくぐった。

「……ここはどこ?」
「さ、さあ……?」

 通った先は洞窟の中だった。
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