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外へ出て神社の真逆の道路へと向かった。
そこは神社の通りとは違い、人がちらほら歩いていたのだ。
「さて問題!この中にいるお化けは誰でしょうか」
「えっ!?全部人じゃないの?」
「残念!あそこにスーツを着ている二人組がいるでしょ?その後ろにいる人」
「あの人お化けなの?」
「そうだよ。ああやって生きていた頃のことをするお化けもいるんだ」
不思議なことだ。
幽霊は死んだ人だから、もしこの世界に留まっていたら怖い存在だと思っていた。
なのに、実際にはっきりと幽霊を見てから言われても恐怖感はなかったのだ。
「何しているのでありんすか?」
「妖狐、帰って来たのか」
「何でありんすか?その言い方は。わっちの家はここでありんすよ」
道路のほうからポテポテと猫又と同じぐらいの大きさの狐が歩いてきた。
これまた猫又と同じように、しっぽの数が多い。
今度は9本も生えていた。
「そっちの子は?」
「鈴って言います」
「わっちが見えるでありんすか?また珍しい子が来たでありんすね」
鈴へ近づくと、ジロジロと周りながら見始めた。
鈴は動こうにも動けず、ただジッと終わるまで待っていた。
「それで何をしていたのでありんす?」
「そうだ!ストラップ!!」
「ストラップ?」
「鈴ちゃんが無くしてしまったみたいなんだ」
「あっ、でもお金がないから……」
ここは探偵事務所。
依頼を出したらお金を払わないといけない。
最後まで言わなかったが、一誠はすぐに理解した。
「大丈夫だよ。普通の人ならお金をもらうけど、鈴ちゃんの場合は特別なんだ」
「特別?」
「そうでありんす。猫狐探偵事務所は探偵事務所」
「元々わしらが始めた妖怪専用探偵事務所だったんじゃ」
「だからお金は普段貰わないんだ。だけどまあ、生きていくためには人の仕事をしないといけないから普通の探偵もしているんだけどね」
「でも私は人だよ?」
「まあまあ!これ以上深く考えなくて大丈夫だよ!」
「それに、妖怪が見えると言うことは妖怪が関わっているかもしれないでありんすから」
「と、いうわけじゃ。戻って詳しく聞こうか」
二人と二匹は再び部屋へと戻ると、再度全員にストラップのことを話した。
妖狐が加わったが、これ以上何か思い浮かぶことが無く、話は次へ移った。
「続きは明日調べるでありんす」
「でも、それじゃありーちゃんに……」
「あまりいい方法ではないでありんすが、明日はこれを付けていくでありんす」
妖狐が取り出したのは、ずっと探していたストラップと瓜二つだった。
「見つけてくれたの!?」
「違うでありんす。これはわっちがつくったストラップ。わっちが生きている間ストラップになっているだけでありんす」
「だから本物を見つけるまでこれを付けといてってことだね」
「分かった」
鈴はストラップを手に取り、ポケットへと仕舞った。
「明日調べるとして、また明日来ることって出来る?」
「放課後なら大丈夫だよ」
「じゃあまた明日。期待していてね」
「あの、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
空はもう赤く染まり始め、帰るにはちょうどいい時間だ。
一誠はしっかりと道路のほうへ案内し、その後どうやったら大通りに出れるか教えてあげた。
また明るいからいいが、少しでも人通りが多いところに早く出た方がいいと思い、最短ルートだけを教えた。
鈴は言われた通りに進み、そのまま家へと真っすぐに帰っていった。
神社経由で行くより、しっかりと道路から行ったほうが近かったのだ。
今度からは神社から出はなく、しっかりと道路から行こうと考えた。
「お帰り、鈴」
「ただいま、ママ」
「もうちょっとでお夕飯出来るから待っててね」
家へ帰ると真っすぐに洗面所へ向かい、しっかりと手洗いうがいをしてから自分の部屋へ向かった。
部屋の中は年相応の部屋であり、しっかりと綺麗に片付いている部屋だ。
その部屋に少し大きめのケージが置かれていた。
中には何もいないケージが。
空のケージへ近づくとしゃがみ込み、ケージに触ってささやき始めた。
「ミィちゃん、ミィちゃんも一緒にストラップが見つかるようにお願いしてね」
誰にも聞こえないような本当に小さな声。
そして数分の間動くことなくずっと止まっている。
「鈴ー!ご飯よー!」
「はーい!」
鈴は母親に呼ばれ、夕飯を食べるためにリビングへと向かった。
食後はお風呂へ入る前にポケットに入っていたストラップをランドセルに付けるために再び自分の部屋へ。
どこからどう見ても同じようにしか見えない。
こんな摩訶不思議なことを出来る狐がいる探偵事務所。
面白い出会いをした。
この日はいつもより早く寝ることが出来た鈴だった。
そこは神社の通りとは違い、人がちらほら歩いていたのだ。
「さて問題!この中にいるお化けは誰でしょうか」
「えっ!?全部人じゃないの?」
「残念!あそこにスーツを着ている二人組がいるでしょ?その後ろにいる人」
「あの人お化けなの?」
「そうだよ。ああやって生きていた頃のことをするお化けもいるんだ」
不思議なことだ。
幽霊は死んだ人だから、もしこの世界に留まっていたら怖い存在だと思っていた。
なのに、実際にはっきりと幽霊を見てから言われても恐怖感はなかったのだ。
「何しているのでありんすか?」
「妖狐、帰って来たのか」
「何でありんすか?その言い方は。わっちの家はここでありんすよ」
道路のほうからポテポテと猫又と同じぐらいの大きさの狐が歩いてきた。
これまた猫又と同じように、しっぽの数が多い。
今度は9本も生えていた。
「そっちの子は?」
「鈴って言います」
「わっちが見えるでありんすか?また珍しい子が来たでありんすね」
鈴へ近づくと、ジロジロと周りながら見始めた。
鈴は動こうにも動けず、ただジッと終わるまで待っていた。
「それで何をしていたのでありんす?」
「そうだ!ストラップ!!」
「ストラップ?」
「鈴ちゃんが無くしてしまったみたいなんだ」
「あっ、でもお金がないから……」
ここは探偵事務所。
依頼を出したらお金を払わないといけない。
最後まで言わなかったが、一誠はすぐに理解した。
「大丈夫だよ。普通の人ならお金をもらうけど、鈴ちゃんの場合は特別なんだ」
「特別?」
「そうでありんす。猫狐探偵事務所は探偵事務所」
「元々わしらが始めた妖怪専用探偵事務所だったんじゃ」
「だからお金は普段貰わないんだ。だけどまあ、生きていくためには人の仕事をしないといけないから普通の探偵もしているんだけどね」
「でも私は人だよ?」
「まあまあ!これ以上深く考えなくて大丈夫だよ!」
「それに、妖怪が見えると言うことは妖怪が関わっているかもしれないでありんすから」
「と、いうわけじゃ。戻って詳しく聞こうか」
二人と二匹は再び部屋へと戻ると、再度全員にストラップのことを話した。
妖狐が加わったが、これ以上何か思い浮かぶことが無く、話は次へ移った。
「続きは明日調べるでありんす」
「でも、それじゃありーちゃんに……」
「あまりいい方法ではないでありんすが、明日はこれを付けていくでありんす」
妖狐が取り出したのは、ずっと探していたストラップと瓜二つだった。
「見つけてくれたの!?」
「違うでありんす。これはわっちがつくったストラップ。わっちが生きている間ストラップになっているだけでありんす」
「だから本物を見つけるまでこれを付けといてってことだね」
「分かった」
鈴はストラップを手に取り、ポケットへと仕舞った。
「明日調べるとして、また明日来ることって出来る?」
「放課後なら大丈夫だよ」
「じゃあまた明日。期待していてね」
「あの、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして」
空はもう赤く染まり始め、帰るにはちょうどいい時間だ。
一誠はしっかりと道路のほうへ案内し、その後どうやったら大通りに出れるか教えてあげた。
また明るいからいいが、少しでも人通りが多いところに早く出た方がいいと思い、最短ルートだけを教えた。
鈴は言われた通りに進み、そのまま家へと真っすぐに帰っていった。
神社経由で行くより、しっかりと道路から行ったほうが近かったのだ。
今度からは神社から出はなく、しっかりと道路から行こうと考えた。
「お帰り、鈴」
「ただいま、ママ」
「もうちょっとでお夕飯出来るから待っててね」
家へ帰ると真っすぐに洗面所へ向かい、しっかりと手洗いうがいをしてから自分の部屋へ向かった。
部屋の中は年相応の部屋であり、しっかりと綺麗に片付いている部屋だ。
その部屋に少し大きめのケージが置かれていた。
中には何もいないケージが。
空のケージへ近づくとしゃがみ込み、ケージに触ってささやき始めた。
「ミィちゃん、ミィちゃんも一緒にストラップが見つかるようにお願いしてね」
誰にも聞こえないような本当に小さな声。
そして数分の間動くことなくずっと止まっている。
「鈴ー!ご飯よー!」
「はーい!」
鈴は母親に呼ばれ、夕飯を食べるためにリビングへと向かった。
食後はお風呂へ入る前にポケットに入っていたストラップをランドセルに付けるために再び自分の部屋へ。
どこからどう見ても同じようにしか見えない。
こんな摩訶不思議なことを出来る狐がいる探偵事務所。
面白い出会いをした。
この日はいつもより早く寝ることが出来た鈴だった。
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