異世界最強のレベル1

銀狐

文字の大きさ
上 下
22 / 60
クラーの町

17

しおりを挟む
「それじゃあ行こうか」
「おっけー」

 ファラとメルはディエイダムに乗った。
 鱗が固いから長くは座っていたくないなあ。

「じゃあ行ってきます、サリーさん」
「ちょっと待って!少ししゃがんでもらえる?」
「こうですか?」

 サリーさんと同じ目線の高さまでしゃがんだ。
 これけっこう腰にくるぞ。

「あなたの旅が無事でありますよに」

 おでことおでこを合わせてお祈りをした。
 顔が近いんだけど……。

「ありがとう、行ってくる」
「何か用があったらまた来てね!」

 ディエイダムに乗ると飛び始めた。
 いい高さまで上がると教えてもらった道の上を飛んで行った。

「まさかディラがロリコンなんてね」
「意外だよねー」
「ちょっと待って、俺は違うぞ」
「……否定しなくてもいいのよ。人それぞれなんだから」
「そうそう、気にしなくても大丈夫だよ」
「なぜだあああ!!」

 勝手にロリコン扱いされた。
 ……うん、でもいい匂いがした。
 上品な花の匂いみたいな感じ。

*

「結構遠いなあ」
「ゆっくり飛んでいるからねー」

 別に急いでいる旅ではない。
 せっかくだから周りをみながら飛んでいる。
 だが見渡す限り森が続いている。

 ドゴーンッ!!
 森の中で大きな物音がした。
 そこから煙が上がっている。

「あそこね」
『寄ってみますか?』

 俺たちは顔を見合わせ、軽く頷いた。

「少し寄ってみましょう」

 煙が昇っている方へ行ってみると煙を中心に森の木が無くなっていた。
 おかげで降りやすくなっている。

『主様、誰かいます』

 そっちのほうを見てみると2人の人間と一匹の生物がいた。
 人間のほうは遠くてあまり見えないが、生物のほうは遠めでも何か分かった。
 攻撃しているようだけど、戦闘中かな。

「イグザタートルだな。戦い方としてはいいけど」
「あのままだと負けちゃうよー」

 イグザタートルは一言で言えば大きい亀。
 ただ、他のモンスターに比べて硬さが尋常ではない。
 ただの剣で攻撃するなら一生倒せない。

 その上魔法まで使う。
 使う魔法は木から生えているつるで攻撃をしてくる。
 周りを焼き野原にしたのはいい判断だ。

「おせっかいでしょうが手伝ってあげましょうかしら」
『あの亀を倒せばいいのでしょうか?』
「ええ、お願い」

 ディエイダムは一旦空へ飛び、降下すると亀の上に乗った。
 そしてそのまま爪を使い、めりめりと地面に押し付け潰した。

「な、何が起きたの?」
「分からない。ただ恐ろしいドラゴンがやってきたのは分かる」

 ここからだと話しにくいな。
 いったん降りよう。

「誰だ!」
「俺はディラ、ファラとメルだ」
「一体何の用だ」
「用っていうか、あのままだと負けるだろうなあって」
「助けてくれた、ということか?」
「そうそう、いい加減に剣を向けないでほしいけど」

 一人は男の剣士でもう一人は女の剣士。
 二人とも似たような鎧を着ているところから同じパーティとかなんだろう。

「もう一つ聞きたい、そのドラゴンは」
「仲間だよ」
「……ふ、ふむ」

 あまり納得してはいないようだな
 そりゃあサリーさんがあれほど驚いたからね。

「まずはお礼を、ありがとう」
「別に構わないよ。こっちが勝手にやったんだし」
「俺はガルガン王国3番隊隊長、デルガン・ムートと言います」
「同じく3番隊の副隊長、ミラ・フェイシスです」

 ガルガン王国だって?
 今向かっている王国じゃないか。
 しかも隊長だって言っている。

「俺たちはガルガン王国へ向かっていた途中なんだ」
「それでしたら案内しますよ」
「いえ、その前にお願いがあります」
「お願い?」
「そのイグザタートルを譲ってもらいたいのです」

 あの潰れている亀を?
 全然かまわないし、こいつの素材は防御特化の装備。
 俺たちはまず使わない。

「別にいいよ。何か防具でも作るのか?」
「そうです」
「でもなんでこいつにその人数?普通なら何人か連れてくるだろう?」
「その、大変言いづらいのですが」
「現在ガルガン王国は近くにある王国、メルメシア王国に攻められているのです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。

克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。

無職だけど最強でした〜無職と馬鹿にされたが修行して覚醒したから無双してくる〜

えんじょい
ファンタジー
ある日、いつものように幼なじみと学校から帰宅している時に、交通事故に遭い幼なじみと共に死んでしまった… 気がつくとそこは異世界だった。 俺は転生してしまったらしい。 俺が転生してきた世界は、職というものがあり、その職によって人生が決まるという。 俺は職受礼の儀式という神々から職をもらう儀式で、無職という職を貰う。 どうやら無職というのは最弱の職らしい。 その職により俺は村から追放された。 それから修行を重ね数年後、初めてダンジョンをクリアした時に俺の職に変化が起きる。 俺の職がついに覚醒した。 俺は無職だけど最強になった。 無職で無双してやる! 初心者ですが、いい作品を書けるように頑張ります! 感想などコメント頂けると嬉しいです!

処理中です...