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3.回復99

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「アンディ、今日だがお客さんが来るぞ」
「僕に?」
「ああ、そうだ」

 僕はこの家に生まれてからは箱入り娘状態。
 だからこの家にいる人以外とは滅多に会わないんだ。

「どんな人なの?」
「それは会ってからのお楽しみだ。ただし、決して怒らせないように」
「? わかった」

 よくわからないけど今日は僕にお客さんが来るみたい。
 お父さんはそういうと部屋を出ていった。
 今日はお勉強のほうはお休みだ。

「来るまで何しようかなあ」

 そのお客さんがいつ来るかもわからないし、どういう人かもわからない。
 ただ怒らせてはいけないという事しか分からなかった。

「来るまでどんなスキルがあるか見ておくか。スキルオープン」

 僕は目を閉じてスキルを見始める。
 まだ見ていない、というか見たか覚えていないスキルがたくさんある。
 五十音順に並んでくれればまだしも、毎回ランダムに並んでいるのが厄介だ。
 まるで雑に並べている図書館にいるみたい。

「あなた何をしているの?」
「えっ?」

 目を開けると、窓に一人の女の子が座っていた。
 年は僕と同じぐらい、きれいな桜色の髪を両方で結んでいる。

「えっと、どうやって入ってきたの?ここ2階だよ」
「上ったのよ。そこの木からね」

 確かに窓に入れそうな木はあるけど、大人でも難しいよ。
 どんだけ運動神経がいいんだ。
 しかもスカートを穿いているのに。

「いたっ!」
「足にケガをしているじゃん。ちょっと見せて」
「治せるの?」
「できる、と思うよ」
「思うって……」
「まあまあ、スキルオープン」

 確かスキルの中にいいのがあったはず。
 あったあった、この回復スキルというやつだ。
 これを99にして。

回復ヒール
「おおぉ!」

 ケガはみるみる回復していき、何もなかった状態にまでなった。
 よかった、成功したようだ。

「魔法を使えるんだね」
「使えるよ。君も使えるの?」
「君じゃないわ。エイミーよ!あなたは?」
「僕はアンディだよ。よろしくね、エイミー」
「アンディ…アンディね。覚えたわ!さあ行くわよ!」

 急に僕の手を引っ張ると、窓から飛び出した。

「ちょちょちょっとおおおおお!!」
「大丈夫だよ!風のトランポリン!!」

 地面に着く寸前、体がふわりと浮いた。

「これって、魔法だよね?」
「そう!私は魔法の才能があるのよ!」

 小さい子供が魔法を使うのは珍しくはないことだが。
 まあ周りがそう言っているならそうなんだろう。

「ねえ!せっかくだから遊びましょうよ!」
「遊べないよ。僕はお客さんが来るから待たないと」
「大丈夫!私が何とかするから!」
「何とかって……」
「ほらいくよ!」

 また手をつかまれ、引っ張られた。

 結局2、3時間ぐらい外で遊んでしまった。
 お姉ちゃんとも遊ぶときはあったけど、同じ年の人と遊ぶのはまたこれで楽しい。
 誰かと外で遊ぶ、病院にいた時にはできなかったこと。
 それに小学校の時を思い出してついついお客さんが来ることを忘れてしまっていた。

「はー!遊んだ遊んだ!」
「ちょっと…遊び過ぎた……」
「何よだらしない。男の子でしょ?」

 君が元気ありすぎるんだよ!
 流石に男の僕でも、もう休みたい。

「お嬢様、こちらにいらしたんですか」
「じいや!見つかっちゃったか……」
「ご勝手に行かれては――おや?」

 じいやと呼ばれている人は僕を見つけると、しゃがみ込んでこちらを見てきた。

「あなたは……アンディ様でしょうか?」
「そ、そうだけど」
「そうでしたかそうでしたか。急にお嬢様がどこかへ行かれたかと思いましたが、無事に会えていらしたんですね」

 何の話をしているんだろう?
 足を怪我していたから無事にはついていなかったけど。

「じいや!私この人にする!」
「アンディ様をですか?ふうむ……」

 また僕のほうに顔を向けると、さっきよりジロジロと見始めた。
 一体何に僕を指名しているんだろうか。

「いいかもしれませんね。あとは国王様にお聞きになりましょう」
「国王様?」
「おや、お嬢様。お名前を教えにならなかったんですか?」
「言ったわよ!エイミーってしっかり言ったわ!」
「それだけでしたら足りません。しっかりエイミー・ダディス・ユグドラシルと言わなければ」
「ダディス?っていうことはもしかして……」
「国王様の娘でございます」

 このおてんばな子が?
 木に登って2階まで来たから、とてにもそうは見えない。

「ちょっと待って、さっきの名指しは何なの?」
「許婚でございます」
「えっ……。僕とエイミーの?」
「そう!最近お父様が勝手に決め始めたから、私が連れてくれば認めてあげるって言ったの!」
「待って、僕の意見は?」
「……嫌なの?」

 その言い方はずるい。
 可愛さが増して断りづらくするのは反則だ。

 でも将来をここで簡単に決めたくはない。

「ごめん、そんなすぐには答えを出せない」
「……うっ」
「「う?」」
「うわああああああん!!アンディのばかーー!!」
「お、お嬢様!?」

 泣きながら走り去ってしまった。
 そ、そこまでショックを受けるとは思わなかった。

「アンディ様、後はわたくしがお相手するのでお休みになっていてください」
「じゃあお願いします」

 僕は自分の部屋へ戻った。
 ん?部屋は暗いのに、中に誰かがいる。

「アーンーディー?」
「お、お姉ちゃん!?どうしてこんな暗い部屋の中に?」
「勝手に何処かに行かないでよ!心配したでしょ!!」
「ご、ごめんなさい」
「もう、次から気を付けてね。ご飯だってさ」

 ずっと遊んでいたからなあ。
 めちゃくちゃお腹が空いた。

「アンディか。どこ行っていたんだ?」
「友達が来てたからちょっと遊んでいた」
「友達?いつの間にできたんだか」

 何かそういわれると「今まで友達いなかったよね?」みたいに聞こえる。

「まあお客向こうもどこかへ行ってみたいだからよかった。だが今から会ってもらうぞ」
「さっき言っていたお客さんだよね?」
「ああ、そうだ。では入ってくれ」
「失礼します。初めまして、エイミー・ダディス・ユグドラシルと言いま――」
「「あっ」」

 そこにはエイミーがいた。
 初めて会ったときとは違い、スカートを少し持ち上げて挨拶をしていた。

 エイミーは僕に気づくとニヤリと笑い、とんでもないことを言い始めた。

「初めましてアンディのお父様。いきなりですが、私はアンディの花嫁候補に立候補させていただきます」

 何とも頭を抱えることを言い始めた。
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