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1.プロローグ
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「残念ですが、もう……」
「そんなっ!!」
僕の横に立っているお母さんが泣き崩れた。
お父さんはお母さんに肩に手を当てて慰めている。
だけどお父さんも目には涙が溢れていた。
「お父さん……」
「勇輝、どうかしたか?」
「僕、この家に生まれてよかったよ。最後の最期まで一緒にいてくれる、それだけで本当にうれしいよ」
「勇輝……!」
「今まで、本当にありがとう。バイバイ」
病室に心電図の音が鳴り響いた。
橘勇輝の最期はこうして迎えた。
死因は末期症状の病気、何千万人に一人の確率を当ててしまった。
こんな確率なら宝くじでもあたってくれると嬉しいのに。
それにしても17歳で死んじゃったのか。
高校1年、入学時の健康診断では健康だった。
だが翌年の健康診断では一気に症状が悪化していた。
そこから1年におよぶ闘病生活。
学校に行っていたとしたら高校3年生になっていた。
「それにしても、死んだらどうしたらいいんだろう?」
僕は今、見渡す限り白い部屋にいる。
誰もいない。
「あーあ。ゲームみたいにスキルポイントが増えて何か病気無効とかに振れればよかったのに」
『確認しました。【スキルポイント増幅】を選択しました』
「えっ、誰の声?」
ここには誰もいないはずなのに。
まさかのホラゲー展開?
『残り2つ選択できます』
「2つ?どういうこと?」
『次の世界へ持っていける能力です』
「えっ、次の世界?能力?死なないとか?」
『確認しました。【不死身】を選択しました』
「あっ……」
やっちゃった、質問したつもりが不死身になっちゃった。
僕、死なない身体になるの?
できれば生前にほしかったなあ。
「もう1つは慎重に選ばないと。なんか別のところで生きられるみたいだし」
『警告。残り1分以内に言わない場合、2つのまま移動されます』
「ちょっと!それはずるいって!!」
まさかの制限時間あり!?
せめてこれぐらいゆっくり考えさせてよ!!
「えっと、無限!なんかの!」
『【無限】を選択しました。この能力は対象が少ないため、使えない場面があります』
またやっちまったー!
もしかしていいんじゃないか?と思ったけど対象が少ないって。
もっと考える時間が欲しかった。
『それでは行ってらっしゃいませ。よい人生を』
「えっ」
白い部屋なのに視界が白くなっていった。
―――――――――――――――――――――――――
「アンディー!どこー!」
「部屋にいるよー!どうしたのー!」
「お昼ご飯だよー!!」
「わかったー!すぐ行くよー!」
新しい世界で僕はアンディ・ルーク・デルクという名前で生まれた。
今はもう6歳になる。
僕の家系であるデルク家はけっこうなお金持ちで裕福。
かと言って悪名高いというわけではなくどちらかと言えば良い印象だ。
僕がいるこの国の名前はダディス王国。
昔、僕の先祖のルークがこの国の復興をしたため、デルク家は今でも裕福になっている。
もちろん、裕福だからと言って好き勝手はしていない。
やることはしっかりしている。
「おそーい!」
「ごめんなさい、お姉ちゃん」
「べ、別にあやまらなくてもいいんだけど!」
4つ上のお姉ちゃんのカラリア。
僕がまだ生まれる前から弟か妹が欲しかったみたいで、今でも甘やかされる。
「アンディ、何をしていたの?」
「お勉強。今日の分終わらせたら遊んでいいって言っていたから」
「おいおい、あの量を午前中に終わらせようとしたのか?」
「うん、というか終わったよ」
金髪ロングのお母さんのアンリ。
黒髪短髪のお父さんのダルク。
二人とも青い目をしていて僕とお姉ちゃんも青い目。
僕はお父さんの髪色を、お姉ちゃんはお母さんの髪色を引いている。
こっちの世界では4人家族だ。
「旦那様、こちらが昼食でございます」
「おお!今日は牛肉か!」
「旦那様のリクエストですよ」
「もう、甘やかしちゃいけないわよ」
「まあまあ、俺のわがままなんだから責めなないでやってくれ」
「はぁ、今回だけですよ」
料理を運んでくれた白髭おじいちゃんの使用人ダルダ・ドール。
少し太っている茶髪女性のコックのアンドレア・アリアンロット。
「あれ?スープがまだないね」
「スープがあったのか?」
「ええ、ルーシュが持っていったはずだよ」
ルーシュ・アリアンロット。
年は15歳でアンドレアさんの娘。
アンドレアさんと同じく茶髪。
先に持っていったはずなのに、いないということは別の事でもしているのか?
スープ持っているなら真っすぐ持ってきてほしかったなあ。
「お待たせしましたー!こちらがスープでございあああっ!!」
何かに躓いたのか、スープが宙へ舞った。
僕に目掛けて。
「キャアアアアッ!アンディが!」
「カラリア驚きすぎ!大丈夫、アンディ?」
「ま、まあ一応。やけどもないよ」
「すみません!坊ちゃま!!」
僕はスープまみれになってしまった。
これ普通に食べたら美味しかっただろうに。
「そのままにいるわけにはいかないな。風呂に入ってきなさい」
「それじゃあ私が連れて行きます!私のミスなので!」
「えっ、いや別に一人で大丈夫だよ」
「なら私が連れて行く!」
「カラリア、お前はたしか昨日の勉強すら終わっていないようだな」
「うっ!?」
「ご飯を食べてすぐ勉強をしなさい。ルーシュ、すまないが頼む」
「わかりました!」
僕の意見は!?
これでも一応中身は17歳なんだよ?
それにルーシュはその、身長のわりに大きいし……。
「どうしました?さあ行きましょう」
「ちょっ、下ろして!一人で歩けるから!」
「そのままだと床まで汚してしまいます。少しの間ですから我慢してくださいね」
あっ、ちょっと頭に…ってちがーう!
僕は一人で入りたいんだー!!
「そんなっ!!」
僕の横に立っているお母さんが泣き崩れた。
お父さんはお母さんに肩に手を当てて慰めている。
だけどお父さんも目には涙が溢れていた。
「お父さん……」
「勇輝、どうかしたか?」
「僕、この家に生まれてよかったよ。最後の最期まで一緒にいてくれる、それだけで本当にうれしいよ」
「勇輝……!」
「今まで、本当にありがとう。バイバイ」
病室に心電図の音が鳴り響いた。
橘勇輝の最期はこうして迎えた。
死因は末期症状の病気、何千万人に一人の確率を当ててしまった。
こんな確率なら宝くじでもあたってくれると嬉しいのに。
それにしても17歳で死んじゃったのか。
高校1年、入学時の健康診断では健康だった。
だが翌年の健康診断では一気に症状が悪化していた。
そこから1年におよぶ闘病生活。
学校に行っていたとしたら高校3年生になっていた。
「それにしても、死んだらどうしたらいいんだろう?」
僕は今、見渡す限り白い部屋にいる。
誰もいない。
「あーあ。ゲームみたいにスキルポイントが増えて何か病気無効とかに振れればよかったのに」
『確認しました。【スキルポイント増幅】を選択しました』
「えっ、誰の声?」
ここには誰もいないはずなのに。
まさかのホラゲー展開?
『残り2つ選択できます』
「2つ?どういうこと?」
『次の世界へ持っていける能力です』
「えっ、次の世界?能力?死なないとか?」
『確認しました。【不死身】を選択しました』
「あっ……」
やっちゃった、質問したつもりが不死身になっちゃった。
僕、死なない身体になるの?
できれば生前にほしかったなあ。
「もう1つは慎重に選ばないと。なんか別のところで生きられるみたいだし」
『警告。残り1分以内に言わない場合、2つのまま移動されます』
「ちょっと!それはずるいって!!」
まさかの制限時間あり!?
せめてこれぐらいゆっくり考えさせてよ!!
「えっと、無限!なんかの!」
『【無限】を選択しました。この能力は対象が少ないため、使えない場面があります』
またやっちまったー!
もしかしていいんじゃないか?と思ったけど対象が少ないって。
もっと考える時間が欲しかった。
『それでは行ってらっしゃいませ。よい人生を』
「えっ」
白い部屋なのに視界が白くなっていった。
―――――――――――――――――――――――――
「アンディー!どこー!」
「部屋にいるよー!どうしたのー!」
「お昼ご飯だよー!!」
「わかったー!すぐ行くよー!」
新しい世界で僕はアンディ・ルーク・デルクという名前で生まれた。
今はもう6歳になる。
僕の家系であるデルク家はけっこうなお金持ちで裕福。
かと言って悪名高いというわけではなくどちらかと言えば良い印象だ。
僕がいるこの国の名前はダディス王国。
昔、僕の先祖のルークがこの国の復興をしたため、デルク家は今でも裕福になっている。
もちろん、裕福だからと言って好き勝手はしていない。
やることはしっかりしている。
「おそーい!」
「ごめんなさい、お姉ちゃん」
「べ、別にあやまらなくてもいいんだけど!」
4つ上のお姉ちゃんのカラリア。
僕がまだ生まれる前から弟か妹が欲しかったみたいで、今でも甘やかされる。
「アンディ、何をしていたの?」
「お勉強。今日の分終わらせたら遊んでいいって言っていたから」
「おいおい、あの量を午前中に終わらせようとしたのか?」
「うん、というか終わったよ」
金髪ロングのお母さんのアンリ。
黒髪短髪のお父さんのダルク。
二人とも青い目をしていて僕とお姉ちゃんも青い目。
僕はお父さんの髪色を、お姉ちゃんはお母さんの髪色を引いている。
こっちの世界では4人家族だ。
「旦那様、こちらが昼食でございます」
「おお!今日は牛肉か!」
「旦那様のリクエストですよ」
「もう、甘やかしちゃいけないわよ」
「まあまあ、俺のわがままなんだから責めなないでやってくれ」
「はぁ、今回だけですよ」
料理を運んでくれた白髭おじいちゃんの使用人ダルダ・ドール。
少し太っている茶髪女性のコックのアンドレア・アリアンロット。
「あれ?スープがまだないね」
「スープがあったのか?」
「ええ、ルーシュが持っていったはずだよ」
ルーシュ・アリアンロット。
年は15歳でアンドレアさんの娘。
アンドレアさんと同じく茶髪。
先に持っていったはずなのに、いないということは別の事でもしているのか?
スープ持っているなら真っすぐ持ってきてほしかったなあ。
「お待たせしましたー!こちらがスープでございあああっ!!」
何かに躓いたのか、スープが宙へ舞った。
僕に目掛けて。
「キャアアアアッ!アンディが!」
「カラリア驚きすぎ!大丈夫、アンディ?」
「ま、まあ一応。やけどもないよ」
「すみません!坊ちゃま!!」
僕はスープまみれになってしまった。
これ普通に食べたら美味しかっただろうに。
「そのままにいるわけにはいかないな。風呂に入ってきなさい」
「それじゃあ私が連れて行きます!私のミスなので!」
「えっ、いや別に一人で大丈夫だよ」
「なら私が連れて行く!」
「カラリア、お前はたしか昨日の勉強すら終わっていないようだな」
「うっ!?」
「ご飯を食べてすぐ勉強をしなさい。ルーシュ、すまないが頼む」
「わかりました!」
僕の意見は!?
これでも一応中身は17歳なんだよ?
それにルーシュはその、身長のわりに大きいし……。
「どうしました?さあ行きましょう」
「ちょっ、下ろして!一人で歩けるから!」
「そのままだと床まで汚してしまいます。少しの間ですから我慢してくださいね」
あっ、ちょっと頭に…ってちがーう!
僕は一人で入りたいんだー!!
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