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元Sランクの俺、イグナスのギルドマスターと出会う

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 ケルアから馬車に乗り、丸一日かけて到着する壮大な山の麓にある街、イグナス。

 そこは山岳地帯を利用しており、鉱山として使われていない山の表面に家が建てられていたりと、段々に連なっていた。

 そんな自然と共存している街の周囲には高い山と深い谷があり、モンスターを通さない天然の守りが築き上げられていた。

「ほれ、到着したぞ」

「あ、あぁ。長々と疲れただろ? ゆっくり休んでくれ」

「そうだな。ワシはシンバと共に街の中で停泊してるから、用事が終わったら声をかけてくれ」

「分かった。ほら、リルネスタ。行くぞ」

「う、うんっ! そうだねっ!」

 どこかぎこちない会話を交わす二人にガルドは疑問を抱いていたが、きっと気のせいだと感じて馬車を動かす。

 一方のレンとリルネスタは、昨日のやり取りのせいで朝から顔を合わせるどころか会話を交わすことすら難しくなっており、ほんの少しだけ距離ができていた。

 どちらかがなにか悪いことをしたというわけではない。ただ単純にお互い昨日の出来事が恥ずかしくて仕方がないのだ。

 レンはリルネスタに抱きつかれたときの感触を忘れられず、リルネスタは自分でやったことを忘れられず、二人共寝るに寝付けなかったのだ。

 だがどちらもお互いを探るように横目見ては、たまたま目が合って目をそらしたりしている。

 つまり、レンはリルネスタを妹ではなく女性として見て、リルネスタはレンを仲間・友達ではなく男性として見ているわけで。

「ユーク、なんかあの二人変じゃない?」

「確かに、ちょっと距離があるような……?」

 と、ついてきているユークとシスティに見られていて。

 そしてそれに気付いてるレン達は下手に後方を確認出来ず、なんだかよく分からない雰囲気になっているのだ。

「レン、今はどこに向かってるんだにゃん?」

「ん? あぁ、これからイグナスのギルドに行く。そこで許可をもらう必要があるからな。って、なぜ銀貨を渡す」

「さっきシスティと話したとき忘れたからね。気にしないでほしいにゃん」

「……お、おう」

 受け取った一枚の銀貨をポケットに突っ込み、レンは地図など見ることなくどんどん街の中央へと進んでいく。

「あの、レンさん? レンさんはギルドの道を分かっているのですか?」

「まぁな。過去に来たことがあるから少し曖昧だがたどり着くことはできる」

 それはまだレンがBランク冒険者だった頃。

 元パーティメンバーのギリュウが武器を新調するときに足りない鉱石があり、ガロド大鉱山とは違う《イーベス鉱山》にある鉱石を取りに来たことがあったのだ。

 そのときは天候が悪く、イグナスに1週間以上滞在したので、レンはイグナスのどこになにがあるのかを大体把握していた。

 しかしそれもかなり昔の話なので、レンは少ない記憶を頼りに曲がりくねった坂道を少しゆっくりめに進んでいく。

「過去に来たのは分かるが、いったいなにをしに来たんだい? 過去といってもレンがまだ冒険者じゃない時だろう? そもそも冒険者になる前はなにをやってたんだにゃん?」

「なぁに、父親と馬車に乗って色んな場所をふらふらしてただけだ。だから俺は意外とそこら辺の冒険者より土地勘はあるぞ」

「そうか、それは頼りがいがあるな。やっぱりレンはケルアの超新星だにゃん」

「やめてくれ、過大評価しすぎだ」

 道の真ん中で褒められと周囲から見られているような気がするので、レンは素直に喜べずにいた。

 なので露骨に嫌そうな顔をすると、ユークはそれを察してそれ以上なにも言うことはなかった。

「ところで、リルネスタ。なんか髪の毛に付いてるぞ?」

「え、どれどれ? 分からないよ~」

「動くな、俺が取ってやるから」

 そうやってレンが近付くと、リルネスタは目を閉じて少し頬を赤らめながら震えだしてしまう。

 なのでレンはリルネスタの髪に付いていた糸くずを取り、そっと『俺はもう気にしてないからいつも通りで頼む』と静かに耳打ちした。

 するとリルネスタは変な声を上げながら耳元を押さえて飛び退いてしまう。どうやらレンの吐く息が耳にかかったようで、口を半開きにしながらあわあわとなにか言葉を洩らしていた。

「ん? どうした? もしかして糸くずと一緒に髪の毛引っ張ったか? それなら悪かった、謝る」

「う、ううん! 違うの! これはちょっと……言えないけど、レンは悪くないから!」

「そうなのか? ならいいが……いつも通りで頼むぞ?」

「そ、そうだよね。いつも通りに……ね」

 リルネスタの同意を得たレンはユーク達にアイコンタクトで先に進むよう伝え、歩き出す。

 そしてそれからものの数分でレン達はイグナスのギルドにたどり着く。

 そこはケルアとは違って派手で色鮮やかな赤いレンガの壁で建築されたギルドで、ところどころ土や砂で汚れた壁がどこかアンティーク調を醸し出していた。

 大きさでいえばケルアより少し大きめだろうか。その分人通りも多く、ガタイのいい男冒険者や露出が多めな女冒険者が多く点在していた。

「あったあった、あそこだ」

「まるで祭りみたいだね。なんだかすごい賑わってる」

「確かに。ここまで活発的ならここはギルドとして成功してるはずだ」

 ギルド周りが活発的ということは、その分血気盛んでやる気に満ち溢れているということだ。

 冒険者で成功するには、意外と精神面での強さも役に立ってくる。そう考えると、やる気が有ると無いとでは天と地の差が生まれることもあるのだ。

 となると、このイグナスのギルドは冒険者ギルドとしての理想形といっても過言ではないのである。

「よし、入るか」

 レンの一言に皆が頷き、早速ガロド大鉱山に踏み込むための許可を得るためにギルドの重い扉を押して開く。

 すると正面からぶわっと暑い風が吹いたと思えば、まるで闘技場の真ん中に放り込まれたかのような騒音が床を振動させて体全体に伝わってくる。

 普通ならここで怯むだろう。
 実際、リルネスタはどこか怯えるようにレンの後ろに隠れていた。

 だがそれとは対照的に、レンとユーク、そしてシスティは顔色一つ変えることなくギルドの中へと踏み込んでいく。

 この辺りではあまり見ない顔に、中で騒いでる冒険者の視線がレン達に向けられる。しかしレンは一定のペースを崩すことなくギルドカウンターへと目指す。

 いくら場所が違えど、ギルドの内装はほとんど同じだ。なのでレンは一切迷うことなく受付嬢の待つクエストカウンターへもたどり着くことが出来た。

「知人の指名依頼でガロド大鉱山に足を運ぶ必要がある。許可を取りたいのだが」

 懐から取り出したクエスト用紙をカウンターに置くと、受付嬢は難しい表情をして目を瞑ってしまう。

 そして突然深々と頭を下げたと思えば、カウンターを出て階段を登っていき、レン達はその場で放置されてしまっていた。

 だが追いかけることもできないので、レンはリルネスタ達と顔を見合わせてとりあえず待つことを決める。

 すると待つことおよそ3分ほどで受付嬢がある女性を連れてカウンターへ戻ってきた。

「お待たせしました。こちら、このギルドのギルドマスターでございます」

「やぁ、あたしはミレイダ。とりあえず君たちをあたしの部屋に招待するよ。話はそれからにしようじゃないか」

 物静かな群青色の長髪に対し、どこか『姉貴』と呼びたくなってしまいそうになる人柄をしたギルドマスターのミレイダは、初対面にも関わらずレン達全員と握手を交わす。

 その握る力は見た目通り──いや、見た目以上に強く、レンよりも身長が高く目がキリッとしているので、本当に女性なのかとレンは心の中でこっそりと呟いていた。

 だが顕になっている大きすぎる胸と露出されたクビレのある腹回りから立派な女性であることが必要以上に醸し出されていた。

「じゃ、ついてきてくれ。おいお前ら、お客様だよ! そんなに睨んで帰ったらどうするんだい!?」

『すいませんっ! ミレイダさんっ!!』

「ミレイダじゃなくてギルドマスターだろ!?」

『すいませんっ! ギルドマスターッ!!』

 そんなまるで一種の宗教のような流れを目の当たりにしたレンは目を丸くしていた。

 前ギルドに来た時は確かに賑やかだった。だがここまで暑苦しいかったかと聞かれたら否である。

 しかし前といっても数年前だ。
 時の流れは早い。なのでその数年で変わることもあるし、逆に変わらないこともある。

 きっとこのギルドではこれが普通なのだろうとレンが後方を確認すると、あのシスティですら眉尻を下げて頬に一筋の汗を垂らしていたのを見て、自分と同じく困惑していることが分かったのかレンは苦笑いを浮かべていた。

「いや~、すまないね。あいつら、いい子なんだがバカしかいないんだ。だからすぐに客人を睨みつけるんだ」

「あ、あぁ……それなら大丈夫です。安心してください」

「そうかい? はっはっは! 今日は可愛い客人が4人も来たんだ! めいいっぱいおもてなしさせてくれ!」

「は、ははは。それはどうも」

 あまりの勢いに負けてしまい、レンは乾いた笑いしか出てこなかった。

 後ろを見て助けを求めてもなぜか三人とも目を背けてしまうので、『こいつら……』と思いつつもレンはミレイダのあとをついて行く。

 そして案内された場所は来客室ではなく、なんとミレイダが普段生活しているギルドマスターの大部屋であった。

「さぁ、遠慮なく入ってくれ!」

「はい、お邪魔しま──すっ!?」

 部屋に入った瞬間、その異質な空間を見てレンはむせ返っていた。

 そこはミレイダの見た目に合わない内装で、一面ピンク、ピンク、ピンクであった。

 しかも置いてある小物が可愛らしい。
 ピンクのクマのぬいぐるみがあると思えば、ピンクのアロマキャンドルにピンクのカーペットなど、とにかくピンクに染まっていた。

 それにはレンだけでなくユークやシスティもギョッとしていた。だがその中でただ一人。リルネスタはそんな異質な空間を見て目を輝かせていた。

「か、可愛い~っ!」

「っ! わ、分かるのかい!? この素晴らしいさを!」

「はいっ! このカーテンは全部丁寧な刺繍があるし、こっちのソファにはフワフワな可愛いファーがあって、どれも工夫されていて可愛いですっ!」

 リルネスタの表情から見るに、これはミレイダの機嫌を良くするためのものではなく、嘘偽りのない心からの言葉であった。

 それを聞き、当然ミレイダが気を悪くすることはなく、むしろ有頂天になってリルネスタの手を取っていた。

「あんた、名前は!?」

「わ、私ですか? 私はリルネスタっていいます。よろしくお願いします、ミレイダさん!」

「リルネスタちゃん……! こんないい子、生まれて初めてだよ! これからよろしくねぇ!」

「わっ、く、苦しいですよ~」

 小柄な少女が大柄のまるで巨人のような女性に抱きつかれているという謎の一面を見て、レン達はただ唖然としていた。

 だがリルネスタはミレイダに応えるようにハグを返し、それに驚いたのかミレイダは目を見開き、更に強くハグをする。

 傍から見れば絞め殺してるのではないかと思われるかもしれないが、ミレイダもそこはしっかりしているのか力加減はしており、ある程度抱きしめたらすぐに離し、満足気にソファに座っていた。

 そしてミレイダから座るように言われたレン一行は素直に従い、反対側のソファに腰を下ろしてからクエスト用紙をミレイダに提出する。

 これからどれだけ長い説明があるのかは不明だ。だがレンは指名依頼を絶対に失敗するわけにはいかないと、一度深呼吸をしてから真剣な眼差しでミレイダの話に耳を傾けていた。
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