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第二章 吸血鬼編
第25話 吸血鬼
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じゅるじゅると首筋から、血が吸われていく。
セレナの白い喉が鳴り、俺の血が嚥下されていくのがわかる。
その度に、俺は全身を脈打たせて快感に悶えた。
「うあ……」
情けなくも声が漏れてしまう。
股間に血液が痛いほど集中していく。
俺は必死にセレナに抱きついて快感に抗おうとしたが、無理だった。
ダムが決壊するように、抑えきれない快楽が溢れ出し、身を焦がす。
しばらくして、セレナは俺の首筋から顔を上げると同時に、腹に刺していた剣も抜く。
俺はあまりの快感に、刺された痛みも忘れていた。
「……はあ、なんなの、あなたの血は」
セレナの口元は俺の血で真っ赤に濡れていた。
その血をゆっくりと舌で舐め取っていく。
そして頬を桜色に染め、恍惚の表情を浮かべた。
「こんなに美味しい血は飲んだことないわ。頭がくらくらしちゃう」
セレナが俺の頬を撫でる。
俺は間近に迫った死と、激しい快感の余韻に気絶する寸前だった。
薄れかける意識の中、先程から表示され続けているログが、俺の意識を繋ぎ止める。
『精神耐性:LV5が発動しました。』
『病気耐性:LV6が発動しました。』
『痛覚耐性:LV3が発動しました。』
『根性:LV7が発動しました。』
特に病気耐性のログが連続で表示されていく。
病気耐性は初めはレベル3だったのが、発動を繰り返し、今はレベル6にまでレベルアップしていた。
「うぐ……」
酷い頭痛と目眩がする。
体中が火照り、息苦しい。
「大丈夫よ」
セレナが俺を抱きしめて、耳元で囁く。
「あなたは今、私の子供として生まれ変わろうとしているの。全てを受け入れなさい。楽になるわよ」
体内で何かと何かが争っているような感じがする。
身体の火照りがどんどん酷くなっていく。
燃やされているかのように熱い。
「安心しなさい。私がここにいるわ」
『病気耐性:LV8を取得しました。』
『病気耐性:LV8が発動しました。』
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:吸血鬼に血を吸われる』
『解放スキル:特殊スキル 吸血鬼』
『取得に必要なスキルポイントは10です。』
そんなログが表示されたのを最後に、病気耐性のログ表示が止まる。
同時に身体の不調が消えていく。
意識も次第にはっきりとしていく。
頭の中に立ち込めていた霧が晴れていくようだった。
「……終わったのね。よく頑張ったわ」
びっくりするほど近い距離で、セレナが慈愛に満ちた表情をしていた。
セレナのそんな表情を見るのは初めてだった。
そして、セレナに抱きかかえられるようにしている今の状況を再認識する。
俺の顔は、ほぼセレナの巨乳に埋まっていた。
物凄く温かくて柔らかかった。
「生まれ変わった感想はどうかしら?」
そう聞かれて俺は思った。
え、特に何も。
「……え、う?」
そう答えようとしたが、体力が消耗しすぎて声が出せない。
HPは一桁しかなかった。
死ぬ一歩手前だ。
「ふふ、戸惑うのも無理はないわ。あなたは今、生まれたばかりの赤ちゃんと一緒なの」
セレナに優しく頭を撫でられる。
「いい子ね。私があなたのママよ?」
思わず吹き出しそうになった。
ママ!?
何言ってんだこいつ。
「……最初は2,3回オモチャにしたら殺そうと思っていたのだけれど、あなたが予想外にがんばるから、子供にしてあげたのよ。よかったわね」
何が良かったのか全然わからないのだが。
セレナは俺の頭を撫でながら、舐め回すように俺の顔を見る。
そして、だんだん興奮したように呼吸が荒くなっていく。
頬を染めて、その赤い瞳を蕩けさせている。
その様は、ひどく淫靡だった。
「……ねえ、ママとキスしましょう?」
そのセリフに、俺は身を強張らせた。
先程、首筋を噛まれた時のことを思い出してしまう。
あれはヤバイ。
自分が自分でなくなってしまう。
しかし、セレナは俺の唇に自分の唇を当ててきた。
普通のキスだった。
「あは。柔らかあい」
そのまま、セレナの熱い舌先が俺の口内に侵入してくる。
「うむぅ、ずずっ、むぐ」
全く抵抗できないまま、口の中をセレナに蹂躙されていく。
消耗した体力を振りぼって、身体に力を入れてみるが、セレナの柔腕に抱きしめられた身体はピクリとも動かない。
どれだけ怪力なのか。
「ちゅば、むぅ、はあはあ、……久しぶりの男は美味しいわ」
自分の事をママとか言っているくせに、セレナは完全に欲情しきっていた。
現状に、完全に脳がついてこない。
ナニコレ。
俺は抵抗できないままセレナに口内を好きにされ続けた。
湿った音が、絶え間なく聞こえるのをどこか他人事のように感じながら、俺はHPとMPを確認する。
『HP:11/1262』
『MP:13/137』
ジリ貧だ。
転んだだけでも死ぬかもしれない。
ただ、HPもMPもちょっとずつ回復していっている。
このまま時間さえ稼げれば、自由に動けるようになるだろう。
なんかよく分からないが、今の状況はチャンスだった。
このままセレナとキスをしながら、HPとMPを回復させよう。
俺は自分からセレナの舌を絡め取った。
「んむぅ!?」
驚いたセレナの身体がピクンと跳ねる。
ルーナのお陰で性技はレベル5になっている。
ルーナ。
俺は、憎しみを込めてセレナの口内に逆に侵入していった。
セレナとディープキスをしながら、俺は現状について分析してみる。
朦朧とした意識の中で、俺は変なスキルを解放していた。
『種族スキル 吸血鬼』
取得するのに10ポイントも使うらしい。
他のスキルは全て1ポイントでとれるので、ものすごい性能なのだろうか。
取る気はないが。
おそらく、セレナは吸血鬼なのだろう。
血を吸われたし。やたら強いし。美人だし。
たぶんセレナが俺を子供にしたと言っているのは、俺を自分と同じ吸血鬼にしたという意味だと思う。
吸血鬼に血を吸われたら、吸血鬼になるというのは有名な設定だ。
でも、俺の場合はおそらく病気耐性スキルが頑張ってくれて、吸血鬼になるのを防げた。
吸血鬼って病気なのかよと思うが。
病気耐性スキルは思った以上に優秀だった。
多分、最初はレベルが低すぎて吸血鬼化を防げなかったのだろうが、ガンガンレベルが上っていって、最終的には防いでくれた。
もはや俺が病気になることはないかもしれない。
今、重要なのは、セレナは俺が吸血鬼になっていないと気づいていないという事だった。
そこに僅かな勝機がある。
完全に俺を子供扱いしていて、隙だらけなのだ。
子供に対してベロチューするのはどうかと思うが。
一撃なら、絶対に先手を打てる。
問題は、どんな一撃を加えるかだった。
HPがやっと100に届くまで回復してきた頃だった。
セレナは今や、完全に俺の舌技に翻弄されている。
「ん……ちゅばちゅば……むちゅ……あへぁ」
俺は自分の足で立てるようになるまで回復し、今では逆に崩れ落ちそうになるセレナを抱きとめていた
少しやりすぎな気がしたが、キスをしてたら、だんだん乗ってきてしまったのだ。
セレナに俺が吸血鬼になっていないのがバレるかもしれないと危惧したが、セレナは不審に思うどころか、顔を完全に蕩けさせて、太ももをもじもじと磨り合わせている。
よしまだイケる。
そう思った時だった。
「……もうダメ、ガマンできないわ」
不意にセレナがそんな事を言って、ドレスの胸の部分を下ろす。
押さえつけられていた巨大な生乳がポロンとこぼれ出た。
俺は何かが、ドクンとたぎるのを感じた。
「はあはあ、ねえ、きて?」
どこに? と思いながら、セレナは俺の上着とシャツを破り捨てる。
お互いに上半身をはだけながら向き合う。
セレナの身体は美しかった。
シミひとつない真っ白な肌が、上気して僅かな桜色を帯びている。
俺はそんなセレナの裸体に目が釘付けになっていた。
セレナは熱を帯びた瞳で、俺の身体を眺めている。
「……思い出したわ」
今にも何かが始まりそうな雰囲気の中、突然、セレナが口を開く。
「あの小娘に見せつけてやりながら、あなたを頂こうとしていたのだったわ」
言いながらセレナは俺の手を引いて歩きだす。
俺はよろよろとセレナについていきながら、状況が理解できていなかった。
あの小娘とはルーナの事だろうか。
ルーナが倒れた時の状況を思い浮かべる。
ルーナはセレナの雷に打たれて、倒れた。
物凄い魔力の込められた雷だった。
……おそらく、即死だった。
あれだけの雷に打たれたのだ。
死体はさぞや、ひどい状況になっているだろう。
俺はそんなルーナを見たくなかった。
そんなルーナに見せつけるとはどういうことだろう。
セレナは、本当は俺が吸血鬼になっていない事を気づいているのではないだろうか。
気づいた上で、俺の心を完全に折ろうとしている気がする。
俺の手を引いて先を歩く女の背中を見つめる。
まっすぐ伸びた美しい銀髪に、丸出しの白い背中が覗く。
俺はそんなセレナに恐怖を覚え始めていた。
MPは結構回復してきている。
だが、この女にどこまで通用するのだろうか。
俺とセレナは、倒れるルーナの下まで来ていた。
俺は思わず、目線を反らせて地面を見つめる。
「……起きなさい。小娘。いつまで寝ているの?」
セレナが何かを蹴飛ばす音がする。
「……ふえ?」
その時。
聞き慣れた声がした。
思わず顔を上げる。
見れば、傷一つないルーナが目をこすりながら身体を起こしている。
様々な感情が同時多発して湧き上がってくる。
俺は、咄嗟に駆け出して、ルーナを抱きしめていた。
「わわっ、なんだ、お前か。……また我慢できなくなっちゃったのか? 先に寝ちゃって悪かったな」
何と勘違いしているのか、ルーナがとぼけたことを言いながら、優しく抱き返してくれる。
いつもと変わらない反応。
いつもと同じ温もり。
いつもと同じ、ルーナの匂い。
俺は日常の偉大さを噛み締めながら、ルーナを抱きしめ続けた。
「……ちょっと待って。ありえない。なぜ、あなたは私を置いて、小娘を抱いているの?」
セレナが背後で何かを言っている。
「え? なんでお前おっぱい出してるんだ? え、ええ!? なにそれ、おっきい……」
セレナに気づいたルーナが戸惑っている。
気にするな。
あいつは変態なんだ。
俺はとりあえず、セレナの足元に《土形成》を発動させる。
ルーナを抱きしめたまま、セレナの方は見ずに。
それでも、狙い通り床から隆起した棘がセレナを貫く感触がした。
「ぐはっ!」
オーバーロードさせて剣と同じくらい硬質化させた土の棘だ。
大きさはヒト一人分くらい。
俺はゆっくりと振り返る。
股下から首にかけて、棘はセレナを貫いていた。
「……ごほっ……ありえない……ありえないわ……何なの……あなた」
口から血を吹き出しながら、セレナは棘に貫かれて苦悶の表情を浮かべている。
「……私は、たしかにあなたを眷属にしたはず」
棘に貫かれたくらいじゃ、セレナは死なない。
そんな事はわかっている。
今まで、何度も経験した。
棘で貫いたのは、固定するためだ。
串刺しにしてじっくり燃やし尽くしてみようと思う。
しかも、内側から。
セレナを貫いた棘を中心に《火形成》でセレナを内部から燃やす炎を生成する。
「ぐああああああ!」
セレナが獣のように叫ぶ。
セレナは、ちゃんと燃えていた。
今度は、火柱で包んだ時のようなミスは犯さない。
じっくり燃え尽きるまで、じわじわと燃やし尽くしてやる。
やがて、セレナが燃え尽き、灰となるまで、俺は慎重に《火形成》を発動し続けた。
「……なあ、状況が理解できないんだが。なんでお前も裸なんだ?」
「後で説明してやるから、ちょっと黙れ」
俺は改めて、ルーナを抱きしめる。
この女には言いたいことがたくさんある。
タイムマシンがあったら、この女が死んだと思って、柄にもなく必死に戦っていたあの頃の自分を殴りに行きたい。
でも、まあ。
本当によかった。
セレナの白い喉が鳴り、俺の血が嚥下されていくのがわかる。
その度に、俺は全身を脈打たせて快感に悶えた。
「うあ……」
情けなくも声が漏れてしまう。
股間に血液が痛いほど集中していく。
俺は必死にセレナに抱きついて快感に抗おうとしたが、無理だった。
ダムが決壊するように、抑えきれない快楽が溢れ出し、身を焦がす。
しばらくして、セレナは俺の首筋から顔を上げると同時に、腹に刺していた剣も抜く。
俺はあまりの快感に、刺された痛みも忘れていた。
「……はあ、なんなの、あなたの血は」
セレナの口元は俺の血で真っ赤に濡れていた。
その血をゆっくりと舌で舐め取っていく。
そして頬を桜色に染め、恍惚の表情を浮かべた。
「こんなに美味しい血は飲んだことないわ。頭がくらくらしちゃう」
セレナが俺の頬を撫でる。
俺は間近に迫った死と、激しい快感の余韻に気絶する寸前だった。
薄れかける意識の中、先程から表示され続けているログが、俺の意識を繋ぎ止める。
『精神耐性:LV5が発動しました。』
『病気耐性:LV6が発動しました。』
『痛覚耐性:LV3が発動しました。』
『根性:LV7が発動しました。』
特に病気耐性のログが連続で表示されていく。
病気耐性は初めはレベル3だったのが、発動を繰り返し、今はレベル6にまでレベルアップしていた。
「うぐ……」
酷い頭痛と目眩がする。
体中が火照り、息苦しい。
「大丈夫よ」
セレナが俺を抱きしめて、耳元で囁く。
「あなたは今、私の子供として生まれ変わろうとしているの。全てを受け入れなさい。楽になるわよ」
体内で何かと何かが争っているような感じがする。
身体の火照りがどんどん酷くなっていく。
燃やされているかのように熱い。
「安心しなさい。私がここにいるわ」
『病気耐性:LV8を取得しました。』
『病気耐性:LV8が発動しました。』
『エクストラスキル解放条件を達成しました。』
『解放条件:吸血鬼に血を吸われる』
『解放スキル:特殊スキル 吸血鬼』
『取得に必要なスキルポイントは10です。』
そんなログが表示されたのを最後に、病気耐性のログ表示が止まる。
同時に身体の不調が消えていく。
意識も次第にはっきりとしていく。
頭の中に立ち込めていた霧が晴れていくようだった。
「……終わったのね。よく頑張ったわ」
びっくりするほど近い距離で、セレナが慈愛に満ちた表情をしていた。
セレナのそんな表情を見るのは初めてだった。
そして、セレナに抱きかかえられるようにしている今の状況を再認識する。
俺の顔は、ほぼセレナの巨乳に埋まっていた。
物凄く温かくて柔らかかった。
「生まれ変わった感想はどうかしら?」
そう聞かれて俺は思った。
え、特に何も。
「……え、う?」
そう答えようとしたが、体力が消耗しすぎて声が出せない。
HPは一桁しかなかった。
死ぬ一歩手前だ。
「ふふ、戸惑うのも無理はないわ。あなたは今、生まれたばかりの赤ちゃんと一緒なの」
セレナに優しく頭を撫でられる。
「いい子ね。私があなたのママよ?」
思わず吹き出しそうになった。
ママ!?
何言ってんだこいつ。
「……最初は2,3回オモチャにしたら殺そうと思っていたのだけれど、あなたが予想外にがんばるから、子供にしてあげたのよ。よかったわね」
何が良かったのか全然わからないのだが。
セレナは俺の頭を撫でながら、舐め回すように俺の顔を見る。
そして、だんだん興奮したように呼吸が荒くなっていく。
頬を染めて、その赤い瞳を蕩けさせている。
その様は、ひどく淫靡だった。
「……ねえ、ママとキスしましょう?」
そのセリフに、俺は身を強張らせた。
先程、首筋を噛まれた時のことを思い出してしまう。
あれはヤバイ。
自分が自分でなくなってしまう。
しかし、セレナは俺の唇に自分の唇を当ててきた。
普通のキスだった。
「あは。柔らかあい」
そのまま、セレナの熱い舌先が俺の口内に侵入してくる。
「うむぅ、ずずっ、むぐ」
全く抵抗できないまま、口の中をセレナに蹂躙されていく。
消耗した体力を振りぼって、身体に力を入れてみるが、セレナの柔腕に抱きしめられた身体はピクリとも動かない。
どれだけ怪力なのか。
「ちゅば、むぅ、はあはあ、……久しぶりの男は美味しいわ」
自分の事をママとか言っているくせに、セレナは完全に欲情しきっていた。
現状に、完全に脳がついてこない。
ナニコレ。
俺は抵抗できないままセレナに口内を好きにされ続けた。
湿った音が、絶え間なく聞こえるのをどこか他人事のように感じながら、俺はHPとMPを確認する。
『HP:11/1262』
『MP:13/137』
ジリ貧だ。
転んだだけでも死ぬかもしれない。
ただ、HPもMPもちょっとずつ回復していっている。
このまま時間さえ稼げれば、自由に動けるようになるだろう。
なんかよく分からないが、今の状況はチャンスだった。
このままセレナとキスをしながら、HPとMPを回復させよう。
俺は自分からセレナの舌を絡め取った。
「んむぅ!?」
驚いたセレナの身体がピクンと跳ねる。
ルーナのお陰で性技はレベル5になっている。
ルーナ。
俺は、憎しみを込めてセレナの口内に逆に侵入していった。
セレナとディープキスをしながら、俺は現状について分析してみる。
朦朧とした意識の中で、俺は変なスキルを解放していた。
『種族スキル 吸血鬼』
取得するのに10ポイントも使うらしい。
他のスキルは全て1ポイントでとれるので、ものすごい性能なのだろうか。
取る気はないが。
おそらく、セレナは吸血鬼なのだろう。
血を吸われたし。やたら強いし。美人だし。
たぶんセレナが俺を子供にしたと言っているのは、俺を自分と同じ吸血鬼にしたという意味だと思う。
吸血鬼に血を吸われたら、吸血鬼になるというのは有名な設定だ。
でも、俺の場合はおそらく病気耐性スキルが頑張ってくれて、吸血鬼になるのを防げた。
吸血鬼って病気なのかよと思うが。
病気耐性スキルは思った以上に優秀だった。
多分、最初はレベルが低すぎて吸血鬼化を防げなかったのだろうが、ガンガンレベルが上っていって、最終的には防いでくれた。
もはや俺が病気になることはないかもしれない。
今、重要なのは、セレナは俺が吸血鬼になっていないと気づいていないという事だった。
そこに僅かな勝機がある。
完全に俺を子供扱いしていて、隙だらけなのだ。
子供に対してベロチューするのはどうかと思うが。
一撃なら、絶対に先手を打てる。
問題は、どんな一撃を加えるかだった。
HPがやっと100に届くまで回復してきた頃だった。
セレナは今や、完全に俺の舌技に翻弄されている。
「ん……ちゅばちゅば……むちゅ……あへぁ」
俺は自分の足で立てるようになるまで回復し、今では逆に崩れ落ちそうになるセレナを抱きとめていた
少しやりすぎな気がしたが、キスをしてたら、だんだん乗ってきてしまったのだ。
セレナに俺が吸血鬼になっていないのがバレるかもしれないと危惧したが、セレナは不審に思うどころか、顔を完全に蕩けさせて、太ももをもじもじと磨り合わせている。
よしまだイケる。
そう思った時だった。
「……もうダメ、ガマンできないわ」
不意にセレナがそんな事を言って、ドレスの胸の部分を下ろす。
押さえつけられていた巨大な生乳がポロンとこぼれ出た。
俺は何かが、ドクンとたぎるのを感じた。
「はあはあ、ねえ、きて?」
どこに? と思いながら、セレナは俺の上着とシャツを破り捨てる。
お互いに上半身をはだけながら向き合う。
セレナの身体は美しかった。
シミひとつない真っ白な肌が、上気して僅かな桜色を帯びている。
俺はそんなセレナの裸体に目が釘付けになっていた。
セレナは熱を帯びた瞳で、俺の身体を眺めている。
「……思い出したわ」
今にも何かが始まりそうな雰囲気の中、突然、セレナが口を開く。
「あの小娘に見せつけてやりながら、あなたを頂こうとしていたのだったわ」
言いながらセレナは俺の手を引いて歩きだす。
俺はよろよろとセレナについていきながら、状況が理解できていなかった。
あの小娘とはルーナの事だろうか。
ルーナが倒れた時の状況を思い浮かべる。
ルーナはセレナの雷に打たれて、倒れた。
物凄い魔力の込められた雷だった。
……おそらく、即死だった。
あれだけの雷に打たれたのだ。
死体はさぞや、ひどい状況になっているだろう。
俺はそんなルーナを見たくなかった。
そんなルーナに見せつけるとはどういうことだろう。
セレナは、本当は俺が吸血鬼になっていない事を気づいているのではないだろうか。
気づいた上で、俺の心を完全に折ろうとしている気がする。
俺の手を引いて先を歩く女の背中を見つめる。
まっすぐ伸びた美しい銀髪に、丸出しの白い背中が覗く。
俺はそんなセレナに恐怖を覚え始めていた。
MPは結構回復してきている。
だが、この女にどこまで通用するのだろうか。
俺とセレナは、倒れるルーナの下まで来ていた。
俺は思わず、目線を反らせて地面を見つめる。
「……起きなさい。小娘。いつまで寝ているの?」
セレナが何かを蹴飛ばす音がする。
「……ふえ?」
その時。
聞き慣れた声がした。
思わず顔を上げる。
見れば、傷一つないルーナが目をこすりながら身体を起こしている。
様々な感情が同時多発して湧き上がってくる。
俺は、咄嗟に駆け出して、ルーナを抱きしめていた。
「わわっ、なんだ、お前か。……また我慢できなくなっちゃったのか? 先に寝ちゃって悪かったな」
何と勘違いしているのか、ルーナがとぼけたことを言いながら、優しく抱き返してくれる。
いつもと変わらない反応。
いつもと同じ温もり。
いつもと同じ、ルーナの匂い。
俺は日常の偉大さを噛み締めながら、ルーナを抱きしめ続けた。
「……ちょっと待って。ありえない。なぜ、あなたは私を置いて、小娘を抱いているの?」
セレナが背後で何かを言っている。
「え? なんでお前おっぱい出してるんだ? え、ええ!? なにそれ、おっきい……」
セレナに気づいたルーナが戸惑っている。
気にするな。
あいつは変態なんだ。
俺はとりあえず、セレナの足元に《土形成》を発動させる。
ルーナを抱きしめたまま、セレナの方は見ずに。
それでも、狙い通り床から隆起した棘がセレナを貫く感触がした。
「ぐはっ!」
オーバーロードさせて剣と同じくらい硬質化させた土の棘だ。
大きさはヒト一人分くらい。
俺はゆっくりと振り返る。
股下から首にかけて、棘はセレナを貫いていた。
「……ごほっ……ありえない……ありえないわ……何なの……あなた」
口から血を吹き出しながら、セレナは棘に貫かれて苦悶の表情を浮かべている。
「……私は、たしかにあなたを眷属にしたはず」
棘に貫かれたくらいじゃ、セレナは死なない。
そんな事はわかっている。
今まで、何度も経験した。
棘で貫いたのは、固定するためだ。
串刺しにしてじっくり燃やし尽くしてみようと思う。
しかも、内側から。
セレナを貫いた棘を中心に《火形成》でセレナを内部から燃やす炎を生成する。
「ぐああああああ!」
セレナが獣のように叫ぶ。
セレナは、ちゃんと燃えていた。
今度は、火柱で包んだ時のようなミスは犯さない。
じっくり燃え尽きるまで、じわじわと燃やし尽くしてやる。
やがて、セレナが燃え尽き、灰となるまで、俺は慎重に《火形成》を発動し続けた。
「……なあ、状況が理解できないんだが。なんでお前も裸なんだ?」
「後で説明してやるから、ちょっと黙れ」
俺は改めて、ルーナを抱きしめる。
この女には言いたいことがたくさんある。
タイムマシンがあったら、この女が死んだと思って、柄にもなく必死に戦っていたあの頃の自分を殴りに行きたい。
でも、まあ。
本当によかった。
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併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
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