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第四章 隠し事
第四十八話 今さらながらに
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リリスさんとローレルさんを見送って、俺は自室で少しグッタリする。
「何か、色々と濃かった……」
特に、ローレルさんとか、ローレルさんとか、ローレルさんとか……。
ちなみに、そのローレルさんには、日本に帰る方法を聞いて、バッサリと『知らないっ』と告げられはしたのだが……何だかもう、色々とあり過ぎて、大した感想も抱けなかった。
「もう少ししたら、ライナードのところに行こう……」
てっきり、ライナードはお茶会が終わればすぐにでも突撃してくるかと思っていたのだが、何やら用事があるらしく、今は屋敷に居ないそうだ。お茶会が終わったことは、ドム爺が何らかの手段で伝えてくれたようなので、もうしばらくすれば帰ってくるらしい。
「……って、ちょっと待てよ? 俺、このままだと不味くないか?」
そうやって、ぼんやりと布団の上でゴロゴロとしている中、俺は、はたと一つの事実に気づく。
(片翼ってことは、ライナードは俺が好きで、手放したくなくて、それで、俺はここに残るって話をしたわけで……)
正確には、もう帰ることができないということを話したわけだが、他に行くところがない俺は、どうしてもこの屋敷に残るということになってしまう。
(それに、あの時、ライナードは酔っていたとはいえ、側に居るって約束をしたし……)
そう、別に、俺はあの約束を忘れたわけではない。もちろん、帰る方法が見つかれば、説明して、納得してもらおうとは考えていたものの、それまではずっと側に居るつもりだった。
(片翼、イコール好きな人……俺、貞操の危機だったりしないか?)
本当に今さらではあるものの、俺は、その事実に気づいた途端、布団の上で頭を抱える。
(いやいやいやいや、俺にとって、ライナードは頼りになる友達的な存在であって、決して、恋愛対象ではないというか……)
そう、あくまでも、俺はノーマルだ。一瞬、チラリと大浴場で見たライナードの素晴らしい肉体が頭に過ったものの、ノーマルなはず……だ。
(でも……俺ってもしかして、この世界に居る限り、女性と恋愛できないんじゃあ……)
自分の体が女性のものだということを考えれば、相手が同性愛者でもない限り、女性との恋愛は厳しい。いや、そもそも、俺は男の体に戻りたいわけで、その男の体で女性と恋愛したいわけで……。
(……この世界に、性転換の魔法とかあったりしないかなぁ?)
そんな特殊すぎる魔法について思いを馳せていると、障子戸の向こうに影ができる。
「カイト、入っても良いか?」
それは、今、思考の中心に居た人物、ライナードの声で、俺は声が上ずらないように気をつけながら、起き上がって許可を出す。
障子を開けて入ってきたライナードは、俺の姿を認めると、ズンズンと大股で近寄ってきて、ぎゅうぅっと抱き締めてくる。
(うわっ、うわぁっ!)
魔本にやられて、目覚めてからは、会う度に抱き締められて、慣れていたはずなのだが……今だけは、色々と余計なことを考えていたため、勘弁してほしかった。
「カイト、会いたかった」
切なそうに、そして、男の俺からしてもエロいと思えるその声音に、俺は思わずビクッと震える。
(いやいやいや、一日も離れてないからっ! せいぜい、三時間くらいのものだからっ!)
そう思いながら、ライナードが俺を案じてくれているということも分かっているため、抵抗らしい抵抗もできない。
「カイト、カイトっ」
そして、そんなライナードに抱き締められている間に、俺はまた、余計なことへと思考を飛ばしてしまう。
(そういえば……ライナードが女性だったら、男の理想にピッタリだったりしないか……?)
そう思ってしまった途端に、なぜだか分からないが、顔に熱が集まるのを感じる。
「ライナード……」
思わずライナードの名前を呼ぶが、その声は随分と可愛らしいものになったような気がした。
「っ、カ、カイト?」
ビクゥッと肩を跳ねさせて、恐る恐るといった具合に俺から体を離して顔を見てくるライナード。そして、そのライナードは……。
ポフンッ!
「っ、す、すまないっ、すぐ、戻るっ!」
一瞬にして真っ赤になったかと思えば、一気に俺から離れて、部屋から出ていく。
「……えっと……?」
ライナードの温もりが離れて、何だか寂しい気がしたものの、そのひんやりとした感覚で、俺はどうにか正気を取り戻す。
(……ライナードが戻るまでに、冷静にならないと)
何がどうして、こんなことになったのかは分からないが、今はとにかく、冷静になることが優先だ。そうして、俺は火照った顔に両手を当てて、長い、長いため息を吐くのだった。
「何か、色々と濃かった……」
特に、ローレルさんとか、ローレルさんとか、ローレルさんとか……。
ちなみに、そのローレルさんには、日本に帰る方法を聞いて、バッサリと『知らないっ』と告げられはしたのだが……何だかもう、色々とあり過ぎて、大した感想も抱けなかった。
「もう少ししたら、ライナードのところに行こう……」
てっきり、ライナードはお茶会が終わればすぐにでも突撃してくるかと思っていたのだが、何やら用事があるらしく、今は屋敷に居ないそうだ。お茶会が終わったことは、ドム爺が何らかの手段で伝えてくれたようなので、もうしばらくすれば帰ってくるらしい。
「……って、ちょっと待てよ? 俺、このままだと不味くないか?」
そうやって、ぼんやりと布団の上でゴロゴロとしている中、俺は、はたと一つの事実に気づく。
(片翼ってことは、ライナードは俺が好きで、手放したくなくて、それで、俺はここに残るって話をしたわけで……)
正確には、もう帰ることができないということを話したわけだが、他に行くところがない俺は、どうしてもこの屋敷に残るということになってしまう。
(それに、あの時、ライナードは酔っていたとはいえ、側に居るって約束をしたし……)
そう、別に、俺はあの約束を忘れたわけではない。もちろん、帰る方法が見つかれば、説明して、納得してもらおうとは考えていたものの、それまではずっと側に居るつもりだった。
(片翼、イコール好きな人……俺、貞操の危機だったりしないか?)
本当に今さらではあるものの、俺は、その事実に気づいた途端、布団の上で頭を抱える。
(いやいやいやいや、俺にとって、ライナードは頼りになる友達的な存在であって、決して、恋愛対象ではないというか……)
そう、あくまでも、俺はノーマルだ。一瞬、チラリと大浴場で見たライナードの素晴らしい肉体が頭に過ったものの、ノーマルなはず……だ。
(でも……俺ってもしかして、この世界に居る限り、女性と恋愛できないんじゃあ……)
自分の体が女性のものだということを考えれば、相手が同性愛者でもない限り、女性との恋愛は厳しい。いや、そもそも、俺は男の体に戻りたいわけで、その男の体で女性と恋愛したいわけで……。
(……この世界に、性転換の魔法とかあったりしないかなぁ?)
そんな特殊すぎる魔法について思いを馳せていると、障子戸の向こうに影ができる。
「カイト、入っても良いか?」
それは、今、思考の中心に居た人物、ライナードの声で、俺は声が上ずらないように気をつけながら、起き上がって許可を出す。
障子を開けて入ってきたライナードは、俺の姿を認めると、ズンズンと大股で近寄ってきて、ぎゅうぅっと抱き締めてくる。
(うわっ、うわぁっ!)
魔本にやられて、目覚めてからは、会う度に抱き締められて、慣れていたはずなのだが……今だけは、色々と余計なことを考えていたため、勘弁してほしかった。
「カイト、会いたかった」
切なそうに、そして、男の俺からしてもエロいと思えるその声音に、俺は思わずビクッと震える。
(いやいやいや、一日も離れてないからっ! せいぜい、三時間くらいのものだからっ!)
そう思いながら、ライナードが俺を案じてくれているということも分かっているため、抵抗らしい抵抗もできない。
「カイト、カイトっ」
そして、そんなライナードに抱き締められている間に、俺はまた、余計なことへと思考を飛ばしてしまう。
(そういえば……ライナードが女性だったら、男の理想にピッタリだったりしないか……?)
そう思ってしまった途端に、なぜだか分からないが、顔に熱が集まるのを感じる。
「ライナード……」
思わずライナードの名前を呼ぶが、その声は随分と可愛らしいものになったような気がした。
「っ、カ、カイト?」
ビクゥッと肩を跳ねさせて、恐る恐るといった具合に俺から体を離して顔を見てくるライナード。そして、そのライナードは……。
ポフンッ!
「っ、す、すまないっ、すぐ、戻るっ!」
一瞬にして真っ赤になったかと思えば、一気に俺から離れて、部屋から出ていく。
「……えっと……?」
ライナードの温もりが離れて、何だか寂しい気がしたものの、そのひんやりとした感覚で、俺はどうにか正気を取り戻す。
(……ライナードが戻るまでに、冷静にならないと)
何がどうして、こんなことになったのかは分からないが、今はとにかく、冷静になることが優先だ。そうして、俺は火照った顔に両手を当てて、長い、長いため息を吐くのだった。
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