悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
上 下
400 / 412
第三章 少女期 女神編

第三百九十九話 暗中模索

しおりを挟む
 創世神様、私、ミーシャ、セイがイルト様とルクレチアの救出担当。リリアナ様、鋼、ネシス、レインボードラゴン達が邪神の殲滅担当に分かれて、それぞれに行動を開始する。


(そういえば、次元が安定してないなら、いつ、魔王が来てもおかしくないのかも……?)


 ふと、神界に来る前に、ミルラスへ手渡すよう頼んでおいた、魔王をこちらへ喚ぶための道具を思い出して、首を振る。


(それよりも、今は、こっち)


 ルクレチアの結界は後回しにして、まずは、イルト様の方へと取りかかることにする。


「創世神様、破壊装置というのは、魂に直接馴染ませたもので、分離は不可能ということで良いですか?」

「うむ、そうじゃ。ワシの知る限り、無理に分離させようとすれば、神界を滅ぼすほどの威力の大爆発が起きるらしい」


 そんな創世神様の言葉で、やはり、分離というのは無理だと判断する。


「この破壊装置というのは、ワシの上司に当たる神々が与えた命令式じゃ。その時が来たと判断されれば、それは発動し、イリアスとルクレチアの意思なぞ関係なしにイリアスとルクレチア自身が神界を滅ぼしにかかる。止める方法は、討伐のみ。それ以外に関する情報は、ここに」


 創世神様から渡された資料にざっと目を通して確認をした私は、いくつかの推測をしながら、イルト様に目を向ける。


「……なら、ちょっと、色々調べてみますね」

「うむ、頼む」


 イリアスとルクレチアにかけられた破壊装置たる所以の命令式。その性質さえ理解できれば、対処法も浮かぶかもしれない。
 創世神様も、ただ黙って二人が破壊装置として動き出す瞬間を見るつもりはなかったらしく、様々な神が調べた結果が資料として残されていた。医学的な観点、生物学的な観点はもちろん、呪術や神力、魔力、ウイルスなどなど、思いつく限り、全ての方面で、専門の神々が知見を残していた。


(魔法一辺倒ではないっていうのが、複雑にしてる部分もあるみたいだね……)


 イルト様の胸に両手を置いて、じっと、資料と照らし合わせて確認作業を進めていく。


(呪術に近いものと、神力、魔力による歪み、あとは、異物に変なウイルスまでっ。神として覚醒しなければ、こんなの気づけなかった)


 ユレイラの頃は、そもそもここまで深く、イリアスを調べることはなかった。そして、ユミリアとしてイルト様の状態を確認する機会はいくらでもあったが、これほどの情報は、神にならなければ確認できない領域でもある。


「これは……」


 分離ができないのであれば、発動させないようにするか、解除するしかない。
 私が今、試みようとしているのは完全なる解除であり、それの途方もない難しさに、どうしても、その成功を思い描けず唇を噛む。


「お姉様……」

「ユミリア……」

「……大丈夫。まだ、考えてることはあるから」


 そもそも、私のような新米からちょっと育ったくらいの神に解除できるのであれば、創世神様もこんなに悩まなかったに違いない。


「創世神様、ちょーっとキツイですけど、実験に付き合ってくださいね?」

「う、うむ」


 イルト様とルクレチアを助けるためなのだ。そんなに青ざめないでもらいたい。そう思いながらも、実験リストを作成して、創世神様へ説明を始めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした代わりに攻略対象の婚約者だったことを思い出しました

冬野月子
恋愛
ある日目覚めると記憶をなくしていた伯爵令嬢のアレクシア。 家族の事も思い出せず、けれどアレクシアではない別の人物らしき記憶がうっすらと残っている。 過保護な弟と仲が悪かったはずの婚約者に大事にされながら、やがて戻った学園である少女と出会い、ここが前世で遊んでいた「乙女ゲーム」の世界だと思い出し、自分は攻略対象の婚約者でありながらゲームにはほとんど出てこないモブだと知る。 関係のないはずのゲームとの関わり、そして自身への疑問。 記憶と共に隠された真実とは——— ※小説家になろうでも投稿しています。

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

私の婚約者は6人目の攻略対象者でした

みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。 すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。 そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。 確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。 って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?  ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。 そんなクラウディアが幸せになる話。 ※本編完結済※番外編更新中

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。 貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。 そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい? あんまり内容覚えてないけど… 悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった! さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドを堪能してくださいませ? ******************** 初投稿です。 転生侍女シリーズ第一弾。 短編全4話で、投稿予約済みです。

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

処理中です...