47 / 72
第二章 旅と王都
第四十七話 違和感を探るアルス(アルス視点)
しおりを挟む
最近、姫様の様子がおかしい。と、いうのはもちろん叔母上の報告でもあるが、私自身もそれは感じ取っていた。
「姫様、本日の紅茶をお持ちしました。……姫様?」
「……え? あ、はい。あ、ありがとうございます」
どこかぼんやりとした上の空。しかし、何がきっかけだったのかが、全く分からない。本来なら姫様を支えるべきゼス殿下も、まだ事件の決着がつかないために、姫様と会うこともできない。
(ここは、我々がカバーをするしかありませんが……)
姫様はただでさえ、我慢をして、何も話してはくれないお方だ。護衛の面々にも注意を促しているが、特に報告はない。
(何があったのかを調べても、何も出てこない。我々以外で姫様に何者かが接触した形跡もなく、それで姫様がこの状態になる何か……)
叔母上とも何度も話し合いをしたが、答えは出ない。ただ、姫様が外を見ていることが多いことから、もしかしたら外に出たいのではないかとも考えるが、叔母上に言わせると、それも違うらしい。
「……姫様、勉強の方はいかがですか? 何か、分かりにくいところなどございましたら、微力ながら、私もお手伝いできますよ?」
姫様の状況は、殿下にも伝えている。ただ、どんな状態でも焦ってはいけないとも伝えて、しばらくは私達に任せてほしいとも告げている。それでも、あまりに長くこの状態が続けば、殿下が強硬策に出る可能性もある。
「勉強……そう、ですね。その……一つだけ、聞きたいことがあります」
特に質問してもらえることを期待していなかった私は、そんな姫様の言葉に内心驚きながらも、微笑んで姫様が聞きやすいように『なんなりと』と告げる。
「……この国には、剣姫と守王は居ますか?」
ただ、姫様からの質問は、私の知らないことだった。
「『けんひめ』に『しゅおう』、ですか? 申し訳ございません。どうやら、私の知識外のもののようです。少なくとも、私が知る限り、そうしたモノは存在しませんね」
「そう、ですか……」
そう言った直後、姫様はどこか思いつめた表情になる。
(……もしかして、この内容が……?)
それは、ただの直感。ただ、その『けんひめ』だとか『しゅおう』といったものが、今の姫様の状況に影響を与えているのだと思えただけだった。
「姫様、よろしければ、浅学な私に、その『けんひめ』や『しゅおう』という存在について教えてはいただけませんか?」
気づいた時には、私は、姫様にそんな不躾な質問をしてしまっていた。
「姫様、本日の紅茶をお持ちしました。……姫様?」
「……え? あ、はい。あ、ありがとうございます」
どこかぼんやりとした上の空。しかし、何がきっかけだったのかが、全く分からない。本来なら姫様を支えるべきゼス殿下も、まだ事件の決着がつかないために、姫様と会うこともできない。
(ここは、我々がカバーをするしかありませんが……)
姫様はただでさえ、我慢をして、何も話してはくれないお方だ。護衛の面々にも注意を促しているが、特に報告はない。
(何があったのかを調べても、何も出てこない。我々以外で姫様に何者かが接触した形跡もなく、それで姫様がこの状態になる何か……)
叔母上とも何度も話し合いをしたが、答えは出ない。ただ、姫様が外を見ていることが多いことから、もしかしたら外に出たいのではないかとも考えるが、叔母上に言わせると、それも違うらしい。
「……姫様、勉強の方はいかがですか? 何か、分かりにくいところなどございましたら、微力ながら、私もお手伝いできますよ?」
姫様の状況は、殿下にも伝えている。ただ、どんな状態でも焦ってはいけないとも伝えて、しばらくは私達に任せてほしいとも告げている。それでも、あまりに長くこの状態が続けば、殿下が強硬策に出る可能性もある。
「勉強……そう、ですね。その……一つだけ、聞きたいことがあります」
特に質問してもらえることを期待していなかった私は、そんな姫様の言葉に内心驚きながらも、微笑んで姫様が聞きやすいように『なんなりと』と告げる。
「……この国には、剣姫と守王は居ますか?」
ただ、姫様からの質問は、私の知らないことだった。
「『けんひめ』に『しゅおう』、ですか? 申し訳ございません。どうやら、私の知識外のもののようです。少なくとも、私が知る限り、そうしたモノは存在しませんね」
「そう、ですか……」
そう言った直後、姫様はどこか思いつめた表情になる。
(……もしかして、この内容が……?)
それは、ただの直感。ただ、その『けんひめ』だとか『しゅおう』といったものが、今の姫様の状況に影響を与えているのだと思えただけだった。
「姫様、よろしければ、浅学な私に、その『けんひめ』や『しゅおう』という存在について教えてはいただけませんか?」
気づいた時には、私は、姫様にそんな不躾な質問をしてしまっていた。
0
お気に入りに追加
292
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結】フェリシアの誤算
伽羅
恋愛
前世の記憶を持つフェリシアはルームメイトのジェシカと細々と暮らしていた。流行り病でジェシカを亡くしたフェリシアは、彼女を探しに来た人物に彼女と間違えられたのをいい事にジェシカになりすましてついて行くが、なんと彼女は公爵家の孫だった。
正体を明かして迷惑料としてお金をせびろうと考えていたフェリシアだったが、それを言い出す事も出来ないままズルズルと公爵家で暮らしていく事になり…。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
魔法の使えない不良品伯爵令嬢、魔導公爵に溺愛される
ねこいかいち
恋愛
魔法で栄えた国家グリスタニア。人々にとって魔力の有無や保有する魔力《オド》の量が存在価値ともいえる中、魔力の量は多くとも魔法が使えない『不良品』というレッテルを貼られた伯爵令嬢レティシア。両親や妹すらまともに接してくれない日々をずっと送っていた。成人間近のある日、魔導公爵が嫁探しのパーティーを開くという話が持ち上がる。妹のおまけとして参加させられたパーティーで、もの静かな青年に声をかけられ……。
一度は書いてみたかった王道恋愛ファンタジーです!
義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
【書籍化決定】断罪後の悪役令嬢に転生したので家事に精を出します。え、野獣に嫁がされたのに魔法が解けるんですか?
氷雨そら
恋愛
皆さまの応援のおかげで、書籍化決定しました!
気がつくと怪しげな洋館の前にいた。後ろから私を乱暴に押してくるのは、攻略対象キャラクターの兄だった。そこで私は理解する。ここは乙女ゲームの世界で、私は断罪後の悪役令嬢なのだと、
「お前との婚約は破棄する!」というお約束台詞が聞けなかったのは残念だったけれど、このゲームを私がプレイしていた理由は多彩な悪役令嬢エンディングに惚れ込んだから。
しかも、この洋館はたぶんまだ見ぬプレミアム裏ルートのものだ。
なぜか、新たな婚約相手は現れないが、汚れた洋館をカリスマ家政婦として働いていた経験を生かしてぴかぴかにしていく。
そして、数日後私の目の前に現れたのはモフモフの野獣。そこは「野獣公爵断罪エンド!」だった。理想のモフモフとともに、断罪後の悪役令嬢は幸せになります!
✳︎ 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
竜王の加護を持つ公爵令嬢は婚約破棄後、隣国の竜騎士達に溺愛される
海野すじこ
恋愛
この世界で、唯一竜王の加護を持つ公爵令嬢アンジェリーナは、婚約者である王太子から冷遇されていた。
王太子自らアンジェリーナを婚約者にと望んで結ばれた婚約だったはずなのに。
無理矢理王宮に呼び出され、住まわされ、実家に帰ることも許されず...。
冷遇されつつも一人耐えて来たアンジェリーナ。
ある日、宰相に呼び出され婚約破棄が成立した事が告げられる。そして、隣国の竜王国ベルーガへ行く事を命じられ隣国へと旅立つが...。
待っていたのは竜騎士達からの溺愛だった。
竜騎士と竜の加護を持つ公爵令嬢のラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる