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第二章 旅と王都

第四十七話 違和感を探るアルス(アルス視点)

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 最近、姫様の様子がおかしい。と、いうのはもちろん叔母上の報告でもあるが、私自身もそれは感じ取っていた。


「姫様、本日の紅茶をお持ちしました。……姫様?」

「……え? あ、はい。あ、ありがとうございます」


 どこかぼんやりとした上の空。しかし、何がきっかけだったのかが、全く分からない。本来なら姫様を支えるべきゼス殿下も、まだ事件の決着がつかないために、姫様と会うこともできない。


(ここは、我々がカバーをするしかありませんが……)


 姫様はただでさえ、我慢をして、何も話してはくれないお方だ。護衛の面々にも注意を促しているが、特に報告はない。


(何があったのかを調べても、何も出てこない。我々以外で姫様に何者かが接触した形跡もなく、それで姫様がこの状態になる何か……)


 叔母上とも何度も話し合いをしたが、答えは出ない。ただ、姫様が外を見ていることが多いことから、もしかしたら外に出たいのではないかとも考えるが、叔母上に言わせると、それも違うらしい。


「……姫様、勉強の方はいかがですか? 何か、分かりにくいところなどございましたら、微力ながら、私もお手伝いできますよ?」


 姫様の状況は、殿下にも伝えている。ただ、どんな状態でも焦ってはいけないとも伝えて、しばらくは私達に任せてほしいとも告げている。それでも、あまりに長くこの状態が続けば、殿下が強硬策に出る可能性もある。


「勉強……そう、ですね。その……一つだけ、聞きたいことがあります」


 特に質問してもらえることを期待していなかった私は、そんな姫様の言葉に内心驚きながらも、微笑んで姫様が聞きやすいように『なんなりと』と告げる。


「……この国には、剣姫と守王は居ますか?」


 ただ、姫様からの質問は、私の知らないことだった。


「『けんひめ』に『しゅおう』、ですか? 申し訳ございません。どうやら、私の知識外のもののようです。少なくとも、私が知る限り、そうしたモノは存在しませんね」

「そう、ですか……」


 そう言った直後、姫様はどこか思いつめた表情になる。


(……もしかして、この内容が……?)


 それは、ただの直感。ただ、その『けんひめ』だとか『しゅおう』といったものが、今の姫様の状況に影響を与えているのだと思えただけだった。


「姫様、よろしければ、浅学な私に、その『けんひめ』や『しゅおう』という存在について教えてはいただけませんか?」


 気づいた時には、私は、姫様にそんな不躾な質問をしてしまっていた。
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