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第二章 旅と王都
第四十六話 知ってしまうネリア(ネリア視点)
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剣姫としての力が相変わらず使えないことに落胆しながらも、私は、アルマさんから勉強用にともらった本を取り出す。
「……今日は、この本かな?」
基本的に、私は部屋から出られないため、本を読むくらいしかやることがない。いや、もちろん刺繍をするという手もあるのだろうが、残念ながら、私はそこまで器用ではない。
「でも、これって、本当に勉強、なのかな?」
勉強といえば、難しくて、厳しくて、痛いもの、というイメージが強い。しかし、アルマさんの言う勉強は、楽しくて、分かりやすくて、甘いお菓子がセットだ。ついでに、勉強用にと渡されたこの本達も、物語が大半だ。今日読もうと思って選んだ本も、冒険ものの本らしい。
「……でも、案外、地名とか、生産物とかは、現実のものと同じ、なんてことが多いから、勉強っていうのも間違ってないのかなぁ?」
そう思いながらも、ページを開いて読み進めれば、どうやら、物語の主人公は女の子だった。
とても平凡な家庭で育った女の子は、突如として何者かの襲撃によって家族を失い、呪われた力に目覚める。そして、その力で復讐を誓うものの、徐々に様々な人間の温かさに触れて、呪われた力を扱えなくなっていくのだ。ただ、呪われた力をそれまで用いていた代償は重く、女の子は代償によってどんどん弱っていき、周囲の人間が必死になって女の子を助けようとする。それから、ラストスパートで、女の子が再び、大切な人を失いかけたその時、呪われた力とは対となる聖なる力に目覚めて、脅威を撃退する。
「……何か、この文言って、剣姫のものに似てるなぁ」
その後の話もしっかりと読み進めたところで、私は、ページを遡って、女の子が力に目覚めた時の文章を読み返す。
「最初が、『我、地の底から復讐を望む者。我が身に宿りて怨敵を滅ぼせ』で、聖なる力の方が『我、天より守護を望む者。我が身に宿りて愛する者を守りたまえ』って、え?」
何気なく声に出して読んだだけ。しかし、それで、今までずっと反応することのなかった、剣姫としての力が、私の中に流れ込む。右手の甲から強い光が迸り、思わず目を閉じると、その力の使い方が、まるで、昔から知っていたかのように理解できてしまう。
「あ……こ、れ……」
同時に、なぜ、この力がオチ国で発揮されることがなかったのかも理解する。いや、万が一、発揮されるような事態になれば、私は殺されていたかもしれない。
そっと目を開いて、光がおさまった手の甲を見れば、そこには、赤と白の紋章が浮かんでいた。
「……そっか、私は、きっと、このために……」
幸せな時間は、きっと、もうお終いだ。私は、私の役目を果たさなければならないことを理解してしまったのだから。私は、このためだけに生まれたのだろうから。
けれど、なぜだろう。私の頬には、一滴の涙が伝っていた。
「……今日は、この本かな?」
基本的に、私は部屋から出られないため、本を読むくらいしかやることがない。いや、もちろん刺繍をするという手もあるのだろうが、残念ながら、私はそこまで器用ではない。
「でも、これって、本当に勉強、なのかな?」
勉強といえば、難しくて、厳しくて、痛いもの、というイメージが強い。しかし、アルマさんの言う勉強は、楽しくて、分かりやすくて、甘いお菓子がセットだ。ついでに、勉強用にと渡されたこの本達も、物語が大半だ。今日読もうと思って選んだ本も、冒険ものの本らしい。
「……でも、案外、地名とか、生産物とかは、現実のものと同じ、なんてことが多いから、勉強っていうのも間違ってないのかなぁ?」
そう思いながらも、ページを開いて読み進めれば、どうやら、物語の主人公は女の子だった。
とても平凡な家庭で育った女の子は、突如として何者かの襲撃によって家族を失い、呪われた力に目覚める。そして、その力で復讐を誓うものの、徐々に様々な人間の温かさに触れて、呪われた力を扱えなくなっていくのだ。ただ、呪われた力をそれまで用いていた代償は重く、女の子は代償によってどんどん弱っていき、周囲の人間が必死になって女の子を助けようとする。それから、ラストスパートで、女の子が再び、大切な人を失いかけたその時、呪われた力とは対となる聖なる力に目覚めて、脅威を撃退する。
「……何か、この文言って、剣姫のものに似てるなぁ」
その後の話もしっかりと読み進めたところで、私は、ページを遡って、女の子が力に目覚めた時の文章を読み返す。
「最初が、『我、地の底から復讐を望む者。我が身に宿りて怨敵を滅ぼせ』で、聖なる力の方が『我、天より守護を望む者。我が身に宿りて愛する者を守りたまえ』って、え?」
何気なく声に出して読んだだけ。しかし、それで、今までずっと反応することのなかった、剣姫としての力が、私の中に流れ込む。右手の甲から強い光が迸り、思わず目を閉じると、その力の使い方が、まるで、昔から知っていたかのように理解できてしまう。
「あ……こ、れ……」
同時に、なぜ、この力がオチ国で発揮されることがなかったのかも理解する。いや、万が一、発揮されるような事態になれば、私は殺されていたかもしれない。
そっと目を開いて、光がおさまった手の甲を見れば、そこには、赤と白の紋章が浮かんでいた。
「……そっか、私は、きっと、このために……」
幸せな時間は、きっと、もうお終いだ。私は、私の役目を果たさなければならないことを理解してしまったのだから。私は、このためだけに生まれたのだろうから。
けれど、なぜだろう。私の頬には、一滴の涙が伝っていた。
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