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第二章 旅と王都

第四十一話 気づくゼス(ゼス視点)

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 ネリアさんに会えない日々は、俺の精神を容易に追い詰めた。


「く……ネリアさんに会いたい……」

「会いたいのなら、仕事を終わらせなければなりませんよね」


 隣に立つアルスは平然とそう言ってのけるが、それができるのであればとっくに終わらせている。


「……半身だと錯覚させるさせるために有効な薬か魔法か、そういったものがどこかに存在するはずだが、少なくとも、あの二人の半身の家には何もなかった。そうなると、背後に何者かが存在するはずだが、尻尾が掴めない」

「そう、ですよね。姫様は絶対に殿下の半身だと思えますが、正直、ルキウス殿下とジェス殿下の半身は、違和感がありましたし、家を調べるのは当然ですが……参りましたね」


 解決の糸口が全く見えない中、俺は、密偵を放っていくつかの黒い噂がある家を探ったりもしているが、出てくるのは関係のない内容ばかり。先の見えない状況で、ネリアさんが自立を目指しているということを聞かされた俺は、とにかく焦っていた。そして……。


「……? アルス、これは、最近のことか?」


 王子としての業務……今は、ルキウスもジェスも居ないため、それを一手に引き受けていた俺は、今眺めていた書類に書かれている内容をアルスに確認する。アルスは、正式に俺の側近として、俺の仕事に関与できる権限を持つため、こうした質問も可能なのだ。


「花の価格の高騰、ですか? そうですね、書類としてこの内容を見るのは初めてではありますが、ここに記されている内容からして、急激なものではないように見受けられますね」


 平民達の間で行われる花を贈る年に一度のイベント。特に国が主催する祭りだとかいうものではなく、本当に、ただの慣習として行われているそれは、贈る花がただ一種類にのみ限定されている。そして、その花が今、異例の高騰をしているとのことだった。


「通称、想いの花。正式名称は、プリムレインか……」


 花の花弁といえば、一枚一枚が少しずつ重なり合って広がるのを想像するだろうが、プリムレインは一枚の花弁が、ちょうどツバの広い帽子のような形を取る特殊な花で、その花の色合いが雨を吸収しているかのように青い飛沫のような斑点を持っている。甘く穏やかな香りで、栽培が簡単な花だ。だからこそ、この花が高騰したことは、過去に一度もない。


「プリムレイン……確か、媚薬の原料の一つでもあったな」


 俺が目をつけたのは、その花の愛らしさなどではなく、実用面だ。ただし、植物にそこまで詳しいわけでもないので、少し調べる必要がありそうだった。


「アルス、プリムレインの実用面について書かれた書物を用意しておいてくれ」

「はい、畏まりました」


 何かが引っかかるが、今はまだ、それに辿り着けない。そのため、とりあえずは情報を集めるべく、本の手配をしておいた。
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