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第二章 旅と王都
第十九話 意気込むゼス(ゼス視点)
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ネリアへ全てを告げれば、もしかしたら怖がられてしまうかもしれない。そう考えて、俺は、ネリアへ治療のために王都へ向かうのだと教えていた。目が見えないネリアであれば、俺達に無断で離れることもないだろうというのを見込んでのことだった。
そして、出発前に、俺は、俺の乳母であり、アルスの叔母であるアルマを捕まえることにも成功していた。これで、女性の手が必要なネリアの世話は、アルマに任せることができる。
「それで、殿下は、姫君に全く説明しないおつもりですか?」
「……もちろん、ネリアの体調がもう少し良くなってきたなら、説明したいとは思っている。だが、現状では、いたずらに不安を煽るだけだ」
真っ赤な長い髪を結い上げ、キリッとした真紅の瞳を持つアルマは、すでに成人済みの息子が居るというのに、若々しさは変わらない。乳母という職業から思い浮かべるのは、穏やかで優しい女性らしいが、俺が知る乳母は、苛烈で口が達者な、怒らせるととても恐ろしい女性である。
現在、ネリアは体が求めるままに、眠りの中に居る。馬車の中でスヤスヤと眠る彼女の姿は天使そのものなのだが、あまり見つめていれば、きっとアルマからの叱責が来るだろう。
「確かに、それはそうでしょうね。で、あるならば、殿下もアルスも、姫君にけっして悟られることなく、全てを片付けなさい。できますね?」
「「はいっ!」」
ギンッと音がしそうなほどに力強く睨まれて、俺もアルスも良い返事をする。こういう時のアルマに反論するのは、絶対にダメだ。俺達は幼い頃からそれを理解しているので、無駄口を叩くことはない。
「よろしい。では、私は姫君の湯浴みの準備を整えて参ります。その間、お二人はお片付けをお願いしますね?」
そう言われて、周囲を取り囲もうとしている人間達の存在に、アルマが気づいていたことを知る。
「あぁ、もちろん。ネリアを起こすことなく、手早く終わらせよう」
「殿下。殿下は守られる側なんですから、私に全部お任せください。すぐに、滅殺して参ります」
殺る気を迸らせる俺に対して、アルスもまた、殺る気満々だ。ネリアと旅に出て三日目。追手がかかるのは予想通りだ。そして、ネリアが良い子過ぎて、不憫過ぎて、アルマのみならずアルスまでもがネリアの味方につくのは、予想外だ。しかし、それは何もマイナスというわけではない。ただ、俺達は、ネリアを共通の宝として認識して、それを守るドラゴンのように警戒を強めているだけなのだから。
「どっちでも良いので、さっさと蹴散らしてきてください」
「「はいっ」」
そして、俺達は襲撃を画策していたらしい奴らを、軒並み締め上げておくのだった。
そして、出発前に、俺は、俺の乳母であり、アルスの叔母であるアルマを捕まえることにも成功していた。これで、女性の手が必要なネリアの世話は、アルマに任せることができる。
「それで、殿下は、姫君に全く説明しないおつもりですか?」
「……もちろん、ネリアの体調がもう少し良くなってきたなら、説明したいとは思っている。だが、現状では、いたずらに不安を煽るだけだ」
真っ赤な長い髪を結い上げ、キリッとした真紅の瞳を持つアルマは、すでに成人済みの息子が居るというのに、若々しさは変わらない。乳母という職業から思い浮かべるのは、穏やかで優しい女性らしいが、俺が知る乳母は、苛烈で口が達者な、怒らせるととても恐ろしい女性である。
現在、ネリアは体が求めるままに、眠りの中に居る。馬車の中でスヤスヤと眠る彼女の姿は天使そのものなのだが、あまり見つめていれば、きっとアルマからの叱責が来るだろう。
「確かに、それはそうでしょうね。で、あるならば、殿下もアルスも、姫君にけっして悟られることなく、全てを片付けなさい。できますね?」
「「はいっ!」」
ギンッと音がしそうなほどに力強く睨まれて、俺もアルスも良い返事をする。こういう時のアルマに反論するのは、絶対にダメだ。俺達は幼い頃からそれを理解しているので、無駄口を叩くことはない。
「よろしい。では、私は姫君の湯浴みの準備を整えて参ります。その間、お二人はお片付けをお願いしますね?」
そう言われて、周囲を取り囲もうとしている人間達の存在に、アルマが気づいていたことを知る。
「あぁ、もちろん。ネリアを起こすことなく、手早く終わらせよう」
「殿下。殿下は守られる側なんですから、私に全部お任せください。すぐに、滅殺して参ります」
殺る気を迸らせる俺に対して、アルスもまた、殺る気満々だ。ネリアと旅に出て三日目。追手がかかるのは予想通りだ。そして、ネリアが良い子過ぎて、不憫過ぎて、アルマのみならずアルスまでもがネリアの味方につくのは、予想外だ。しかし、それは何もマイナスというわけではない。ただ、俺達は、ネリアを共通の宝として認識して、それを守るドラゴンのように警戒を強めているだけなのだから。
「どっちでも良いので、さっさと蹴散らしてきてください」
「「はいっ」」
そして、俺達は襲撃を画策していたらしい奴らを、軒並み締め上げておくのだった。
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