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第一章 傷だらけの剣姫
第六話 見えないネリア(ネリア視点)
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「よかった、目が、覚めたんだな?」
相変わらず、誰かの声が聞こえて、私は目を開けたはずだったのに……そこに広がるのは暗闇のみ。
(あ……やっぱり、夢、なのね……)
もしかしたら、本当に、誰かが私を心配してくれていたのかもしれない。もしかしたら、本当に、誰かが私の手に触れてくれたのかもしれない。そんな希望は、呆気なく打ち砕かれた。
(まだ、希望を持てたなんて……)
それでも、大きな希望を抱いていたわけではない。胸は……少ししか、痛まない。
「……目が、覚めたんだよな?」
「殿下、まだぼんやりしているだけかもしれませんから、そう不安にならないでください」
「あ、あぁ、そう、だよな……」
視界は真っ暗。それなのに、あの声はまだ聞こえる。それを不思議に思って、意識して瞬きしてみるものの、やはり、視界は暗いまま、何一つ映し出すことはない。
(死んだら、視界はなくなるの?)
神様について、詳しいとは言えないものの、そんな話を聞いた覚えはない。そもそも、死後の世界に関してだって、あまり知らない。つまりは……。
(死んだら、きっと、見る必要なんてないのね)
恐らくはそういうことだろうと結論づけたところで、先程から聞こえる声がまた近くで聞こえる。
「なぁ、本当に大丈夫か? ぼんやりしてるだけ、なのか?」
「……とりあえず、呼びかけてみますか?」
「そ、そうだな。お、おい、ちゃんと、目は覚めたか? 痛いとか、苦しいとか、ないか?」
まるで、私に呼びかけているかのような距離に感じるのは、目が見えないせいかもしれない。返事をして、違ったらツラいので、とりあえずは黙ったままにしておく。
「……もしかして、話せないの、か?」
「……殿下、懸念はそれだけではなさそうです」
暗闇の中で、戸惑ったような声が聞こえる。どこか、痛ましいと思っていそうな声が聞こえる。
「もしかしたら、彼女は、目が見えていないのかもしれません」
(目……? でも、死んだのなら、別に……)
「っ、なっ……確かに……そのようだ、な……」
何をしたのかは分からないけれど、私の目が見えないことを確認したらしい彼らは、また、二人で話し合う。
「だが、医者は異常はないと言っていたぞ?」
「えぇ、ですが、精神的なものであれば、その括りには入らないかと」
「精神的なもの……彼女の身元に関して、何か分かったことは?」
「いえ、何も……そもそも、こちら側の国の者かどうかすら怪しいというのが個人的な意見ではありますが」
(ん……? こちら側の、国……?)
そんな疑問に答えるように、彼らは、『こちら側の国』について話し始めた。
相変わらず、誰かの声が聞こえて、私は目を開けたはずだったのに……そこに広がるのは暗闇のみ。
(あ……やっぱり、夢、なのね……)
もしかしたら、本当に、誰かが私を心配してくれていたのかもしれない。もしかしたら、本当に、誰かが私の手に触れてくれたのかもしれない。そんな希望は、呆気なく打ち砕かれた。
(まだ、希望を持てたなんて……)
それでも、大きな希望を抱いていたわけではない。胸は……少ししか、痛まない。
「……目が、覚めたんだよな?」
「殿下、まだぼんやりしているだけかもしれませんから、そう不安にならないでください」
「あ、あぁ、そう、だよな……」
視界は真っ暗。それなのに、あの声はまだ聞こえる。それを不思議に思って、意識して瞬きしてみるものの、やはり、視界は暗いまま、何一つ映し出すことはない。
(死んだら、視界はなくなるの?)
神様について、詳しいとは言えないものの、そんな話を聞いた覚えはない。そもそも、死後の世界に関してだって、あまり知らない。つまりは……。
(死んだら、きっと、見る必要なんてないのね)
恐らくはそういうことだろうと結論づけたところで、先程から聞こえる声がまた近くで聞こえる。
「なぁ、本当に大丈夫か? ぼんやりしてるだけ、なのか?」
「……とりあえず、呼びかけてみますか?」
「そ、そうだな。お、おい、ちゃんと、目は覚めたか? 痛いとか、苦しいとか、ないか?」
まるで、私に呼びかけているかのような距離に感じるのは、目が見えないせいかもしれない。返事をして、違ったらツラいので、とりあえずは黙ったままにしておく。
「……もしかして、話せないの、か?」
「……殿下、懸念はそれだけではなさそうです」
暗闇の中で、戸惑ったような声が聞こえる。どこか、痛ましいと思っていそうな声が聞こえる。
「もしかしたら、彼女は、目が見えていないのかもしれません」
(目……? でも、死んだのなら、別に……)
「っ、なっ……確かに……そのようだ、な……」
何をしたのかは分からないけれど、私の目が見えないことを確認したらしい彼らは、また、二人で話し合う。
「だが、医者は異常はないと言っていたぞ?」
「えぇ、ですが、精神的なものであれば、その括りには入らないかと」
「精神的なもの……彼女の身元に関して、何か分かったことは?」
「いえ、何も……そもそも、こちら側の国の者かどうかすら怪しいというのが個人的な意見ではありますが」
(ん……? こちら側の、国……?)
そんな疑問に答えるように、彼らは、『こちら側の国』について話し始めた。
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