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第二章

第三十四話 目覚めは土下座とともに

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 目が覚めると、土下座したセインさんが目の前に居た。


「すみませんっ、リコさんっ!」

「……ぇ?」


 寝起きのせいか、声がいつも以上に出ない。
 いや、そうではなくて。


「セイン、さん……? ……あれ?」


 なぜ、どうして、セインさんが目の前に居るのか。そして、なぜ、土下座しているのか。何もかもが分からずに混乱する私へ、セインさんは何があって私が意識を飛ばしたのかを事細かに説明してくれて……。


「も……いい、です……」


 その時のドキドキがぶり返して、私は堪らず、セインさんにストップをかける。


「本当に、すみません。お詫びとして連れて来たにもかかわらず、リコさんの体調を慮ることができず、同じことを繰り返すなんて……」


 体調が悪かったわけではない、と言いたいところではあるものの、そこから『では、なぜ?』と突っ込まれて答えられる自信はない。


「大、丈夫です……。だから、セインさんも、座って、ください……」


 いつまでも愛しい人を土下座させていたいわけではないので、すぐそこにあった椅子を勧めてみる。そして……。


「その……ここは、どこ、ですか?」


 セインさんの話を聞いている間にも思っていたが、この場所は、見覚えのない場所だった。
 どこのログハウスの一室かと思えるような、木造の部屋。今は季節ではないから使われていないものの、暖炉があるし、小さなテーブルに花が飾られているし、ついでに、私が居る場所は、可愛らしいピンクの花柄の掛け布団がかけられたベッドの上で……。


「ここは、先程の店の二階です。どうやら、ここは貴族がお忍びで来ることもあるようで、応接室と休憩室を作っていたようなんです」


 『ちなみに、ここは休憩室です』との話を聞いて、気絶してからそれほど経ってはいなさそうだと薄っすらと考える。
 ……いや、今、思考の大半を占めているのは、セインさんと二人っきりで、私がベッドの上に居るという状況なのだが、どうやら、また気絶するのは無理そうだ。


「本当に、すみません……」


 目の前でションボリしている番を前に、気絶なんてしていられない、と、私の本能が訴えているのだから。


「え……と……その、店員、さん、は……?」


 他にも聞くことはあるはずなのに、私の口から出てきた言葉は、何を問いかけているのかも曖昧な言葉で、それでも、セインさんは私の意思を汲み取ったかのようにうなずく。


「あぁ、どうやら、あの男はこの店に随分と迷惑をかけていたようで、俺達に感謝していましたよ。この部屋も、そのおかげですんなり案内してもらえたのでしょうしね」


 そうして、セインさんから聞くゼラフの迷惑行為の数々に、私は絶句することとなった。
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