貶められた聖女候補は、復讐します

第二章 戻された世界

第九十九話 自己紹介

「では、わたくしから。わたくしは、二の神にして、毒の女神。メルフィーよ。今回だけはよろしくして差し上げますわ」


　銀の髪に紫の瞳を持つ彼女は、ニコリと微笑んで告げる。


「では、私も。私はアマンダ。位階は二の、糸の女神ですよ。よろしくお願いします」


　淡い水色の髪と茶色の瞳をもつ大人しそうな女神は淡々と告げる。


「なら、私もぉっ！　私は、暴力の女神！　あっ、位階は三ね！　アルリエだから、リエちゃんって呼んでも良いわぁ。よろしくぅっ」


　元気に告げるピンクの悪魔、いや、ピンクの女神。髪も瞳も服もピンクとくれば、少しばかり目を休めたくなる。


「アルリエが言ったのであれば、次は私ですね。同じく三の神で虫の女神、シエラと申します。あまり気は進みませんが、協力はさせていただきます」


　腰までの長い黒髪に緑の瞳を持つスタイル抜群な女神。


「最後が私ですねっ。私はエリアナです。位階は三で、影の女神ですよっ。ロジエル様を奪う機会であれば、いくらでも協力しますともっ」


　アルリエとはまた違った元気の良さを見せるのは、黄色のフワフワとした髪に蒼い瞳を持つ女神。

　彼女達は、姿形こそ、箱庭で見た姿から成長して大人になったような姿ではあったものの、その性格には多少の差があるようであった。


「では、私も名乗ることとしよう。私は、サミュエル。二の神であり、勇の神だ」

「なら、俺も。俺は、アルガ。三の神で、魔の神だよ」

「わ、私は、レアナです。三の神で、善意の神です」


　そこから、サミュエル、アルガ、レアナの三人も自己紹介を行う。ただし、三人は完全には警戒を解いてはいなかった。シェナを殺した神がアニエスであることは判明したし、彼女達が貶めたのはアニエスであろうことは分かってきている。しかし、彼女達がシェナと関わりがないという証拠は何もないし、そもそも、レアナ達の行いで彼女達は酷い目に遭ってきたのだ。簡単に味方してくれるとは考えにくい。


「警戒するのは分かりますが、私達にそれは無意味ですよ？　私達は別に、あなた方程度には何も思っていませんし、ね」


　と、そんなレアナ達の心情に気づいたのか、まず、アマンダがそう告げる。


「んー？　私はぁ、暴れられればそれで良いのよぉ？　思うところがないとは言わないけど、あの女に直接ぶつける方が良いわよねぇ」

「アルリエ、あんまり迷惑をかけると、また牢屋に入れられるよ？　あぁ、私も、特にあなた達に思うことはないから、気にしないで。アニエスを止めることが最優先でしょう？」

「私も、ロジエル様さえ手に入れられるなら、どうでも良いです」


　そんな、バッサリと割り切った言葉に唖然とするレアナ達だったが、それでもやはり、一人くらいは違う意見もあるようで……。


「……わたくしは、完全に認めてはいませんので、あまり馴れ合いを求められても困りますわ」


　メルフィーだけは、そう冷たく告げる。しかし、その反応に、レアナ達はむしろ安心した様子で、大きく頷いていた。