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第二章 戻された世界
第九十一話 憎悪の凶刃
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アニエスという名の神は、レアナとシェナの母親であり、とても穏やかな女神だった。神としての位も高く、アニエスに嫉妬する女神は多かったというのが、レアナ、アルガ、サミュエルの共通認識、だった。
「お、母様? なぜ……?」
攻めきれないと考えたのか、距離を取ったアニエスに、レアナは戦闘態勢を解かないまま、それでも呆然とした様子で問う。
「なぜ? そんなの決まっているでしょう? あなた達が憎くて憎くて堪らないのっ。さぁ、死んで? 私の、わたくしのためにっ」
穏やかさなど欠片も感じ取れない、おぞましいほどの憎悪に顔を歪めたアニエス。その異様な様子に、思わず硬直したレアナとアルガに、神速の凶刃が迫る。
「させるかっ!!」
ガキンッという音とともに、大剣は、サミュエルの剣によって受け止められる。
憎悪に歪んだ顔は、サミュエルは嫌と言うほどに見てきた。それが身内であり、敵対しなければならない状態にだって、何度も陥っていた。だからこそ、この場ではサミュエルのみが動ける。ただし……。
「お義兄様……」
「サミュエル……」
レアナもアルガも、憎悪に歪んだ顔に慣れていないわけではなかった。片や、憎悪を身に宿し、滅亡をもたらした者として。片や、憎悪に晒されて、狂気を友とした者として。
原因は不明。身内から向けられる憎悪に戸惑いがないわけではない。それでも、彼らの信頼は、その程度で切り崩せるようなものではなかった。
瞬時に、アルガは持てる全ての知識で魔法陣を組み上げる。レアナはそれを補助して、同時にサミュエルへの補助魔法も欠かさない。
「死ねっ、死ねっ、シネッ、シネェェェエッ!!!」
剣を日常的に扱う神による剣戟を、サミュエルは必死に受け流して耐える。力の差がある神を相手に、受け流しができるだけ見事だと言えるが、それも限界が近い。
「っ、いくぞ!!」
剣と剣の切り結びには似合わない重厚な音が何度も何度も響き渡り、ついにサミュエルの剣が折れたその瞬間、アルガの魔法は完成して……その場には、悪鬼のごとく顔を歪ませたアニエスのみが取り残されることとなった。
「お、母様? なぜ……?」
攻めきれないと考えたのか、距離を取ったアニエスに、レアナは戦闘態勢を解かないまま、それでも呆然とした様子で問う。
「なぜ? そんなの決まっているでしょう? あなた達が憎くて憎くて堪らないのっ。さぁ、死んで? 私の、わたくしのためにっ」
穏やかさなど欠片も感じ取れない、おぞましいほどの憎悪に顔を歪めたアニエス。その異様な様子に、思わず硬直したレアナとアルガに、神速の凶刃が迫る。
「させるかっ!!」
ガキンッという音とともに、大剣は、サミュエルの剣によって受け止められる。
憎悪に歪んだ顔は、サミュエルは嫌と言うほどに見てきた。それが身内であり、敵対しなければならない状態にだって、何度も陥っていた。だからこそ、この場ではサミュエルのみが動ける。ただし……。
「お義兄様……」
「サミュエル……」
レアナもアルガも、憎悪に歪んだ顔に慣れていないわけではなかった。片や、憎悪を身に宿し、滅亡をもたらした者として。片や、憎悪に晒されて、狂気を友とした者として。
原因は不明。身内から向けられる憎悪に戸惑いがないわけではない。それでも、彼らの信頼は、その程度で切り崩せるようなものではなかった。
瞬時に、アルガは持てる全ての知識で魔法陣を組み上げる。レアナはそれを補助して、同時にサミュエルへの補助魔法も欠かさない。
「死ねっ、死ねっ、シネッ、シネェェェエッ!!!」
剣を日常的に扱う神による剣戟を、サミュエルは必死に受け流して耐える。力の差がある神を相手に、受け流しができるだけ見事だと言えるが、それも限界が近い。
「っ、いくぞ!!」
剣と剣の切り結びには似合わない重厚な音が何度も何度も響き渡り、ついにサミュエルの剣が折れたその瞬間、アルガの魔法は完成して……その場には、悪鬼のごとく顔を歪ませたアニエスのみが取り残されることとなった。
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