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第二章 戻された世界

第八十九話 攻撃

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『……め…………て………れあ……』

「ん…………」


 神の世界で、眠りは必ずしも必要なものではない。しかし、レアナ達は長くその魂に傷がついてもおかしくないほどの箱庭における現実を味わってきていた。そのため、役割分担を終えてから、まず行われたのは、体調を回復させるための休眠だった。


「あ、れ……?」


 眠りから目覚めたレアナは、そっと目を開けて、その頬を濡らすものへと手を当てる。


「なんで、私、泣いて……」


 夢など、神は見ない。ただ一つの例外を除いて。


「……誰に、干渉されたんだろう?」


 神は神であるがゆえに、夢というものは見ないのだが、他者から精神干渉を受けた場合のみ、それに近いものを見ることがある。だからこそ、レアナはそれを自覚し、すぐさま身を起こして周囲へと視線を配る。

 真っ白なベッドが三つ並ぶだけのその部屋には、レアナだけではなく、サミュエルもアルガも眠っている。しかし、どうやら二人も精神干渉を受けているらしく、どことなく苦しそうなうめき声を発していた。


「っ、サミュエル義兄様、アルガ様!」


 とにかく、今は見えない敵を引きずり出さねばと、レアナは二人の側に這い寄って、干渉してきた者の特定を始める。


「っ……えっ……?」


 こうした精神干渉を行ってくる相手の特定というのは、通常、困難を極める。だからこそ、レアナもそれを覚悟して特定のための魔法を展開させたのだが、ほどなくして、その顔には困惑が浮かぶ。


「……お姉ちゃん……?」


 その呟きがきっかけだったのかどうかは定かではない。しかし、その瞬間、サミュエルとアルガの呻き声は止まる。


「……今のは、いったい……?」


 レアナが感知した敵の正体。それは、とても馴染みのある神力だった。


「どうして、お姉ちゃんが……?」


 すでに死んだはずのシェナの力。それが、サミュエルとアルガの精神に干渉していた。


「ん……レアナ? どうした?」


 と、そこでアルガが先に目覚める。青ざめた顔のレアナに気づいたアルガは、すぐにレアナへと声をかけるが、レアナはそれに応えず、うつむく。


「レアナ? 何があった?」


 そんなレアナに再度問うアルガ。しかし、それでも言えるわけがなかった。大切な姉のシェナが、自分達へ精神攻撃を仕掛けてきたかもしれないなど。そして……。


(多分、お姉ちゃんの体は、もう……)


 敵の手に落ちている。そう考える方が正しいのだろう。そうして黙り込んでいる間に、モゾモゾとサミュエルまで目を覚ました。
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