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第二章 戻された世界
第八十八話 これからの復讐
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『詳しいことは分からない』と前置きをした上で告げられたのは、とてもではないが、許容できない内容だった。
「シェナの肉体を使って、あなた達を攻撃してくる可能性があります」
瞬間、凄まじい濃度の殺気が空間に満ちる。レアナは姉のシェナを愛していたし、アルガは幼馴染として大切に想っていた。そして、もっとも怒りをあらわにしているのは、当然、深く深く、シェナを愛していた伴侶たるサミュエルだ。
「へぇ、お姉ちゃんの肉体を使って、ねぇ?」
「シェナの肉体か……確かに、見つからなかったよね」
「…………コロス」
怒気が、殺気が、痛いほどに満ちて、母親たる女神は頬を引きつらせる。
「あ、あくまでも、可能性の話ですよ? ですが、そうした脅威があるからこそ、シェナは浄化されまいと抵抗しているのではないかと思うのです」
「抵抗……?」
シェナの憎しみを一身に背負っていたレアナは、その言葉に首をかしげる。
「えぇ、抵抗、です。そもそも、あれだけ繰り返し復讐をしても浄化されないという現象そのものがおかしいのですよ」
「……そう、かなぁ……?」
釈然としない様子のレアナ。しかし、母親の中でそれは確定事項らしく、話はそのまま進む。
「ただ、シェナの肉体の場所は、未だに分かりません。ですので、恐らくは向こうが行動に移さない限り、私達も動くことはできないでしょう」
それに関しては、レアナ達も理解しているのか、素直にうなずく。ただ、そこでアルガが問いかける。
「ところで、ロジエル様は、今、どこに?」
ロジエル、と言えば、国王の名前であり、レアナとシェナの父親でもある。むろん、かの存在も神であり、そのためにアルガはその存在の居場所を問いかけたのだった。
「ロジエルは、まだ、色々とやることが山積みらしくて、今は居場所を伝えるわけにはいきません」
ロジエルは、シェナが理不尽に殺されたであろう事実に憤っていた仲間でもある。つまり、ロジエルの山積みとなっている仕事の大半は、シェナのためのものだと思われた。
「お父様……」
「絶対に、シェナの魂は救ってみせると言っていたから、きっと、大丈夫です」
心配そうにするレアナへと告げた母親に、レアナは小さくうなずく。
今から彼女達が行うのは、まごうことなき復讐だ。シェナを殺した女神達へ、死よりも惨い結末を与えるために。そして、シェナの魂を救い上げるために。とにかく、迅速な行動が求められる。
「さぁ、では、役割分担を行いましょうか」
だから、レアナ達は、母親のその言葉に素直に従った。
「シェナの肉体を使って、あなた達を攻撃してくる可能性があります」
瞬間、凄まじい濃度の殺気が空間に満ちる。レアナは姉のシェナを愛していたし、アルガは幼馴染として大切に想っていた。そして、もっとも怒りをあらわにしているのは、当然、深く深く、シェナを愛していた伴侶たるサミュエルだ。
「へぇ、お姉ちゃんの肉体を使って、ねぇ?」
「シェナの肉体か……確かに、見つからなかったよね」
「…………コロス」
怒気が、殺気が、痛いほどに満ちて、母親たる女神は頬を引きつらせる。
「あ、あくまでも、可能性の話ですよ? ですが、そうした脅威があるからこそ、シェナは浄化されまいと抵抗しているのではないかと思うのです」
「抵抗……?」
シェナの憎しみを一身に背負っていたレアナは、その言葉に首をかしげる。
「えぇ、抵抗、です。そもそも、あれだけ繰り返し復讐をしても浄化されないという現象そのものがおかしいのですよ」
「……そう、かなぁ……?」
釈然としない様子のレアナ。しかし、母親の中でそれは確定事項らしく、話はそのまま進む。
「ただ、シェナの肉体の場所は、未だに分かりません。ですので、恐らくは向こうが行動に移さない限り、私達も動くことはできないでしょう」
それに関しては、レアナ達も理解しているのか、素直にうなずく。ただ、そこでアルガが問いかける。
「ところで、ロジエル様は、今、どこに?」
ロジエル、と言えば、国王の名前であり、レアナとシェナの父親でもある。むろん、かの存在も神であり、そのためにアルガはその存在の居場所を問いかけたのだった。
「ロジエルは、まだ、色々とやることが山積みらしくて、今は居場所を伝えるわけにはいきません」
ロジエルは、シェナが理不尽に殺されたであろう事実に憤っていた仲間でもある。つまり、ロジエルの山積みとなっている仕事の大半は、シェナのためのものだと思われた。
「お父様……」
「絶対に、シェナの魂は救ってみせると言っていたから、きっと、大丈夫です」
心配そうにするレアナへと告げた母親に、レアナは小さくうなずく。
今から彼女達が行うのは、まごうことなき復讐だ。シェナを殺した女神達へ、死よりも惨い結末を与えるために。そして、シェナの魂を救い上げるために。とにかく、迅速な行動が求められる。
「さぁ、では、役割分担を行いましょうか」
だから、レアナ達は、母親のその言葉に素直に従った。
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