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第二章 戻された世界
第七十九話 終わりかけのお茶会
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「いや、特に暴走をした覚えはないが?」
「そうそう、ちょっと姫への愛が溢れただけだよ?」
真剣に心当たりがないと告げるサミュエルと、全てを理解しながら熱い視線をレアナに送るアルガ。もはや、彼らは救いようがないということだけは良く分かる状況だろう。
そんな二人の姿を見て、レアナは、全てを察して、ニッコリと微笑む。
「……お母様、少しだけ、二人をお借りしても?」
「え、えぇ、良いですけど……」
「では、お借りしますね?」
ニッコリと微笑みながらも、有無を言わせぬ迫力で母親である王妃に許可を取ったレアナは、サミュエルとアルガをお茶会会場から連れ出す。
残された王妃とご令嬢達は、さすがにすぐに動き出すことはなかったものの、一応は、普通のお茶会として再開する。このままサミュエルやアルガが戻ってこなかったとしても、何の問題もなく解散するであろうと言えるだけの状態だ。……いや、むしろ、先程までの衝撃を忘れたいのか、ご令嬢達の話題の中に、サミュエルやアルガの名前が上がることはない。どう考えても、サミュエルの婚約者選びは失敗だった。しかし、誰もがそれに目を向けることなく、お茶会を続ける。それは、一層、不気味なほどに……。
「では、これでお茶会はお開きにしましょうか」
そんな声をあげたのは、言うまでもなく王妃だ。しかし、その声に、ご令嬢達は困惑の表情を見せる。
「お、王妃様、その、お二人を待たずに、よろしいのですか?」
一応はサミュエルの婚約者候補として呼ばれたご令嬢達。当然、家の者から様々なことを言い含められているご令嬢だって存在する。それなのに、貴重なサミュエルとのお茶会はこれで終わろうとしているのだ。いかにサミュエルのシスコン発言に引いていたとしても、このままでは終われない、というご令嬢達の方が多かった。
「えぇ、待つ必要はないわ。後日、また似たような集まりを企画しましょう。サミュエルに婚約者が必要なのは事実ですから、ね」
そんな王妃の言葉にホッとする者、どこか引きつった表情を浮かべる者、さっと表情を扇で隠す者と様々ではあったが、概ね、王妃の意見は聞き入れられたようだった。
「では、また会いましょう」
「お待ちください、母上」
と、その時、幼い声が王妃の背後からかけられる。
「レアナ?」
そこには、レアナが、サミュエルとアルガを伴うことなく、一人で立っていた。
「私から、本日のことに関してお詫びをさせていただきたいのです」
そして、レアナはそんなことをのたまった。
「そうそう、ちょっと姫への愛が溢れただけだよ?」
真剣に心当たりがないと告げるサミュエルと、全てを理解しながら熱い視線をレアナに送るアルガ。もはや、彼らは救いようがないということだけは良く分かる状況だろう。
そんな二人の姿を見て、レアナは、全てを察して、ニッコリと微笑む。
「……お母様、少しだけ、二人をお借りしても?」
「え、えぇ、良いですけど……」
「では、お借りしますね?」
ニッコリと微笑みながらも、有無を言わせぬ迫力で母親である王妃に許可を取ったレアナは、サミュエルとアルガをお茶会会場から連れ出す。
残された王妃とご令嬢達は、さすがにすぐに動き出すことはなかったものの、一応は、普通のお茶会として再開する。このままサミュエルやアルガが戻ってこなかったとしても、何の問題もなく解散するであろうと言えるだけの状態だ。……いや、むしろ、先程までの衝撃を忘れたいのか、ご令嬢達の話題の中に、サミュエルやアルガの名前が上がることはない。どう考えても、サミュエルの婚約者選びは失敗だった。しかし、誰もがそれに目を向けることなく、お茶会を続ける。それは、一層、不気味なほどに……。
「では、これでお茶会はお開きにしましょうか」
そんな声をあげたのは、言うまでもなく王妃だ。しかし、その声に、ご令嬢達は困惑の表情を見せる。
「お、王妃様、その、お二人を待たずに、よろしいのですか?」
一応はサミュエルの婚約者候補として呼ばれたご令嬢達。当然、家の者から様々なことを言い含められているご令嬢だって存在する。それなのに、貴重なサミュエルとのお茶会はこれで終わろうとしているのだ。いかにサミュエルのシスコン発言に引いていたとしても、このままでは終われない、というご令嬢達の方が多かった。
「えぇ、待つ必要はないわ。後日、また似たような集まりを企画しましょう。サミュエルに婚約者が必要なのは事実ですから、ね」
そんな王妃の言葉にホッとする者、どこか引きつった表情を浮かべる者、さっと表情を扇で隠す者と様々ではあったが、概ね、王妃の意見は聞き入れられたようだった。
「では、また会いましょう」
「お待ちください、母上」
と、その時、幼い声が王妃の背後からかけられる。
「レアナ?」
そこには、レアナが、サミュエルとアルガを伴うことなく、一人で立っていた。
「私から、本日のことに関してお詫びをさせていただきたいのです」
そして、レアナはそんなことをのたまった。
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