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第二章 戻された世界

第七十話 勇者と魔王の同盟

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 レアナの記憶は、全ての真の聖女達の記憶を引き継ぐ形で、そのまま続いている。当然、サミュエルが勇者であったことも、アルガが魔王であったことも記憶にある。ただ、そのサミュエルとアルガには記憶がなく、しかも、サミュエルが兄で、アルガが幼馴染という状態は、記憶が戻るまでに形成された関係性だ。人間の全てを憎み、消し去りたいレアナにとって、その事実はあまりにも重く、記憶が戻った直後は、酷く悩むことが多かったようだ。
 そして、記憶が戻る頃に、ちょうど、事件が起きる。シエラ・ポンピーネ伯爵令嬢が、虫に襲われて死ぬ、という事件だ。それから立て続けに、アルリエ・リナス伯爵令嬢、エリアナ・ナシス男爵令嬢、アマンダ・シェルフィリア侯爵令嬢、メルフィー・リッテル公爵令嬢が、様々な方法で死んでいく。それは、かつてのレアナの恨みを晴らすかのような、悲惨な死。
 最初のレアナは、復讐を誰かに取られたと憤り、誰が犯人なのかを捜そうとした。しかし、それに気づいた黒幕に殺される。次のレアナは、もう少し慎重に行動するものの、やはり、途中で殺される。その次も、その次も、そして、幾度も殺されるうちに、もう関わりたくないと、その事件を避けるようになったものの、それでもやはり、レアナは様々な方法で殺された。
 だから、今のレアナは、とても疲れたような表情で、それでも、助けを求めているようだった。


「……話は、分かった」

「っ、信じて、もらえるんですか?」

「信じるも何も、今回は、俺達も記憶があるからねぇ」


 アルガの言葉に、レアナは『えっ』と目を見開く。


「私達の記憶では、レアナが経験したループに関するものはない。最後の記憶は、私がレアナを殺して、自分も死んだところまでだ」

「げっ、そんなことになってたの? 俺は……レアナに色々教えてる途中だったのは覚えてるんだけど、その後の記憶がないんだよねぇ」

「アルガ、お前、行方不明になってたらしいぞ」

「そうなの?」

「それで、私に原因があると思われて、レアナと対立した」

「……えっと、ごめん?」


 加害者と被害者が混在しながらも、刺々しい雰囲気のない会話に、レアナは目を白黒させる。


「レアナ。私は、あの時お前を止めたことに後悔はない。だが、今のレアナが世界の破滅を望まないのであれば、私はレアナのために手を貸そう」

「あ、俺は元々レアナの味方だからね? 俺、レアナのことが大好きだし」

「人の妹を口説くな」

「えー?」


 勇者と魔王が、レアナのために手を結ぶその瞬間を、レアナ本人は呆然と眺めていた。
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