59 / 108
第一章 復讐の聖女候補
第五十九話 サミュエルの答え
しおりを挟む
魔王の居城にして、レアナの安息の地。その場所へと足を踏み入れたサミュエルは、捜し回るまでもなく、レアナの姿を見つける。
「あなたが、今代の真の聖女だな?」
真っ黒なドレスを身に纏う黒目黒髪の少女。玄関で待ち構えていた少女は、元々庶民であるとは思えないほど優雅に見えた。
「ふふっ、あハハっ、ネェ? 魔王をどコニやっタノ?」
しかし、彼女が壊れてしまったことに、そのどこかおかしな笑みを見て気づいてしまう。
「魔王? いや、知らないが。それよりも、私は、あなたを止めに来た」
「シラナイ? とめル? トメル? フフ、フフフフッ。ワタシヲ? タカダカ、勇者ゴトキガ?」
「勇者だとかはどうでもいい。私は、この負の連鎖を絶ち切る。ただ、それだけのために生きてきた」
その言葉に嘘はない。レアナを見つけられなければ、サミュエルは、大切な存在を失うのだから。何度も何度も転生して、大切なものなど作りたくないと思うのに、何度も何度も、大切に想う誰かを得てしまう。
「フフフッ、ジャア、ヤッテミナヨ? ネェ、ユウシャサ、マ…………?」
何度も何度も説得した。何度も何度も失敗した。そして……何度も何度も思考を巡らせて、サミュエルは、ようやく、勇者としてあり得ない選択肢を取った。
「ァ…………」
救うべき存在に剣を向けるなど、本当の勇者であればあり得ないこと。しかし、サミュエルは、彼女達を救えないのだと諦める。
「すまない。しかし、こうする以外に、この世界の滅びを止める手段などない」
絶望の昏い瞳が、徐々に光彩を失う様子を、レアナの心臓に剣を突き立てたサミュエルは黙って眺める。
「ワ、タシ、タチハ…………」
『ただ、幸せになりたかっただけなのに……』そんな、声にならない声は、サミュエルの耳に届くことなく消えていく。
「安心してくれ。私も、このまま生きながらえるつもりはない」
完全に力を失ったレアナから剣を引き抜いたサミュエルは、レアナをその場に横たえ、そのまぶたを閉じてやる。
「私は……あなた達とともに、幸せな未来を築きたかった」
レアナの頬にそっと手を滑らせたサミュエルは、そのまま、短剣を取り出す。予め毒を塗った短剣。少しでも傷つけば死に至る猛毒。それを、サミュエルは躊躇うことなく自身の胸に突き刺す。
所有者が不明の魔の森に建てられた建築物。そこには、二つの遺体がいつまでも、残されていた……。
『エラー発生、エラー発生、エラー発生、修正開始、修正、エラー、エラー、修正、エラー、エラー、エラー、エラー、修正――――――。修復不能。上位権限者の応答を求めます。――――承認。十以上のエラー、及び、特異点の出現により、次の段階へ移行します。処理、開始――――完了。魔王、勇者、真の聖女は、これより$%^☆&?*="――――。……を開始します』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この作品に関しては、年内の更新はこれにて終了です。(キリも良いですし)
第一章が終わりですので、次は第二章。
いや、だって、聖女候補達は残っていましたし、レアナちゃんやらサミュエルやらに救いがなさすぎですからねぇ?
ただ、ちょーっとプロットを練る時間も必要なので、しばらくは休止しているかと思います。
第二章で、ようやく、恋愛要素を書けるっ、と思って張り切っていますので、しばしお待ちください。
それでは、よいお年を~♪
「あなたが、今代の真の聖女だな?」
真っ黒なドレスを身に纏う黒目黒髪の少女。玄関で待ち構えていた少女は、元々庶民であるとは思えないほど優雅に見えた。
「ふふっ、あハハっ、ネェ? 魔王をどコニやっタノ?」
しかし、彼女が壊れてしまったことに、そのどこかおかしな笑みを見て気づいてしまう。
「魔王? いや、知らないが。それよりも、私は、あなたを止めに来た」
「シラナイ? とめル? トメル? フフ、フフフフッ。ワタシヲ? タカダカ、勇者ゴトキガ?」
「勇者だとかはどうでもいい。私は、この負の連鎖を絶ち切る。ただ、それだけのために生きてきた」
その言葉に嘘はない。レアナを見つけられなければ、サミュエルは、大切な存在を失うのだから。何度も何度も転生して、大切なものなど作りたくないと思うのに、何度も何度も、大切に想う誰かを得てしまう。
「フフフッ、ジャア、ヤッテミナヨ? ネェ、ユウシャサ、マ…………?」
何度も何度も説得した。何度も何度も失敗した。そして……何度も何度も思考を巡らせて、サミュエルは、ようやく、勇者としてあり得ない選択肢を取った。
「ァ…………」
救うべき存在に剣を向けるなど、本当の勇者であればあり得ないこと。しかし、サミュエルは、彼女達を救えないのだと諦める。
「すまない。しかし、こうする以外に、この世界の滅びを止める手段などない」
絶望の昏い瞳が、徐々に光彩を失う様子を、レアナの心臓に剣を突き立てたサミュエルは黙って眺める。
「ワ、タシ、タチハ…………」
『ただ、幸せになりたかっただけなのに……』そんな、声にならない声は、サミュエルの耳に届くことなく消えていく。
「安心してくれ。私も、このまま生きながらえるつもりはない」
完全に力を失ったレアナから剣を引き抜いたサミュエルは、レアナをその場に横たえ、そのまぶたを閉じてやる。
「私は……あなた達とともに、幸せな未来を築きたかった」
レアナの頬にそっと手を滑らせたサミュエルは、そのまま、短剣を取り出す。予め毒を塗った短剣。少しでも傷つけば死に至る猛毒。それを、サミュエルは躊躇うことなく自身の胸に突き刺す。
所有者が不明の魔の森に建てられた建築物。そこには、二つの遺体がいつまでも、残されていた……。
『エラー発生、エラー発生、エラー発生、修正開始、修正、エラー、エラー、修正、エラー、エラー、エラー、エラー、修正――――――。修復不能。上位権限者の応答を求めます。――――承認。十以上のエラー、及び、特異点の出現により、次の段階へ移行します。処理、開始――――完了。魔王、勇者、真の聖女は、これより$%^☆&?*="――――。……を開始します』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この作品に関しては、年内の更新はこれにて終了です。(キリも良いですし)
第一章が終わりですので、次は第二章。
いや、だって、聖女候補達は残っていましたし、レアナちゃんやらサミュエルやらに救いがなさすぎですからねぇ?
ただ、ちょーっとプロットを練る時間も必要なので、しばらくは休止しているかと思います。
第二章で、ようやく、恋愛要素を書けるっ、と思って張り切っていますので、しばしお待ちください。
それでは、よいお年を~♪
1
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
【完結】気づいたら異世界に転生。読んでいた小説の脇役令嬢に。原作通りの人生は歩まないと決めたら隣国の王子様に愛されました
hikari
恋愛
気がついたら自分は異世界に転生していた事に気づく。
そこは以前読んだことのある異世界小説の中だった……。転生をしたのは『山紫水明の中庭』の脇役令嬢のアレクサンドラ。アレクサンドラはしつこくつきまとってくる迷惑平民男、チャールズに根負けして結婚してしまう。
「そんな人生は嫌だ!」という事で、宿命を変えてしまう。アレクサンドラには物語上でも片思いしていた相手がいた。
王太子の浮気で婚約破棄。ここまでは原作通り。
ところが、アレクサンドラは本来の物語に無い登場人物から言い寄られる。しかも、その人物の正体は実は隣国の王子だった……。
チャールズと仕向けようとした、王太子を奪ったディアドラとヒロインとヒロインの恋人の3人が最後に仲違い。
きわめつけは王太子がギャンブルをやっている事が発覚し王太子は国外追放にあう。
※ざまぁの回には★印があります。
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
俺、異世界で置き去りにされました!?
星宮歌
恋愛
学校からの帰宅途中、俺は、突如として現れた魔法陣によって、異世界へと召喚される。
……なぜか、女の姿で。
魔王を討伐すると言い張る、男ども、プラス、一人の女。
何が何だか分からないままに脅されて、俺は、女の演技をしながら魔王討伐の旅に付き添い……魔王を討伐した直後、その場に置き去りにされるのだった。
片翼シリーズ第三弾。
今回の舞台は、ヴァイラン魔国です。
転性ものですよ~。
そして、この作品だけでも読めるようになっております。
それでは、どうぞ!
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
【完結】断罪されるのは寧ろあなた達の方ですよね?
美兎
恋愛
「エアリス・ヴァイオラ!貴様がライラ・オーキッド男爵令嬢に数々の悪事を行ったその醜い心根に私は失望した!よってこの場を持ってお前と婚約を破棄する!!」
ざわざわと喧騒の中、人一倍大きな声でそう言いきったのはダスティ・クーズスト侯爵令息という一人の男だった。
わたくしを断罪するおつもりなんでしょうけれども、そう簡単にはいきませんよ。
相応の報いを頂いて貰います。
ショートショート。本編三話、ざまぁ三話で完結予定です。
※ざまぁでは暴力表現やグロ表現がありますので、ご注意ください。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
皇太子と結婚したくないので、他を探して下さい【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
侯爵家で何不自由無く育てられた令嬢、ルティア。そんな彼女に縁談が持ち上がったのは、15歳の時だった。
ルティアは、相手が皇太子という事を知ると、対面する事を拒み続けては、逃げ回っていた。
逃げ回っていても、決まってしまった婚姻で、こく一刻と近付く婚約発表と結婚式。
阻止をしたくて、ルティアは結婚出来ない様にするべく、国の皇族との婚姻条件の1つに挙げられていた、皇太子妃になる令嬢の純潔を早く捨てようと考えていた−−−。
だが、ルティアの周囲で巻き起こる陰謀と邪魔者の出現。そして、皇太子との接点が明らかになると、ルティアの意思は変わっていく−−−。
*Hシーンは♡付
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる