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第一章 復讐の聖女候補
第三十六話 聖女候補達は疑う4
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エリアナは、愚かではあるが、バカではない。もちろん、この会話の中で、メルフィーが毒を扱うこと、用済みになれば消されることを把握してはいる。しかし、それでも、エリアナは簡単にうなずくことはなかった。たとえ、家族に、大切な者に危険が迫るだろうということを仄めかされたとしても、だ。
「リッテル様がそのようなお方だったなんて……ショックです」
ショックを受けたフリはすれども、エリアナが焦る様子はない。それを冷静に見てとったアマンダは、次の手を打つ。
「時に、ナシス様は、なぜこの聖華塔へ?」
「なぜ、ですか? それはきっと、皆様と同じですよ」
聖女の素質を持つ者は、例外なく国に報告しなければならない。そうでなければ、厳罰に処される。それが、表向きに語られる内容だ。しかし、実際は、貴族で聖女の素質を持つ者が現れれば、王族に嫁ぎたいのでもなければ、報告をしても、聖華塔に赴く必要はない。何せ、聖女の素質を持つというだけで、将来は安泰なのだ。誰もが、自らの子に、孫に、その素質が現れることを求める社会において、『聖魔力が少ない』とでも言い訳すれば、簡単に、聖華塔での激戦を回避することができる。そして、良縁に恵まれることを約束されるのだ。
エリアナは、確かに強い聖魔力を持っている。しかし、男爵令嬢である彼女が、自分よりも格上の貴族達としのぎを削ってまで、王族との婚姻を望んでいるのかと問われれば、違和感を拭えないのも確かだ。
「違いますね。ナシス様は、王太子様に自分を売り込むつもりはないでしょう? わたくし達が王太子様とどうやって会おうかと画策している間、ナシス様は何をしていらっしゃったのかしら?」
王太子が来ていた時、エリアナは特に行動を起こしてはいない。もちろん、王太子を前にすれば、いつものように媚を売るだろうし、弱いフリもするだろう。しかし、王太子に会うことへ一番消極的だったのは、彼女だった。
「それは、もちろん皆様と同じように、王太子様にお会いしようと「嘘ですわ」」
そう、断言するアマンダは、当然知っていた。王太子に会おうとせずに、エリアナが何をしているのかを。
だから、アマンダはニタリと、その口許を歪めて、真実を告げてやる。
「だって、エリアナ様は、国王陛下に想いを馳せているのでしょう? エリアナ様のお部屋には、国王陛下の姿絵がたくさんありますものね?」
「っ!!?」
そんなアマンダの言葉に、エリアナは、始めて、本気の動揺を示した。
「リッテル様がそのようなお方だったなんて……ショックです」
ショックを受けたフリはすれども、エリアナが焦る様子はない。それを冷静に見てとったアマンダは、次の手を打つ。
「時に、ナシス様は、なぜこの聖華塔へ?」
「なぜ、ですか? それはきっと、皆様と同じですよ」
聖女の素質を持つ者は、例外なく国に報告しなければならない。そうでなければ、厳罰に処される。それが、表向きに語られる内容だ。しかし、実際は、貴族で聖女の素質を持つ者が現れれば、王族に嫁ぎたいのでもなければ、報告をしても、聖華塔に赴く必要はない。何せ、聖女の素質を持つというだけで、将来は安泰なのだ。誰もが、自らの子に、孫に、その素質が現れることを求める社会において、『聖魔力が少ない』とでも言い訳すれば、簡単に、聖華塔での激戦を回避することができる。そして、良縁に恵まれることを約束されるのだ。
エリアナは、確かに強い聖魔力を持っている。しかし、男爵令嬢である彼女が、自分よりも格上の貴族達としのぎを削ってまで、王族との婚姻を望んでいるのかと問われれば、違和感を拭えないのも確かだ。
「違いますね。ナシス様は、王太子様に自分を売り込むつもりはないでしょう? わたくし達が王太子様とどうやって会おうかと画策している間、ナシス様は何をしていらっしゃったのかしら?」
王太子が来ていた時、エリアナは特に行動を起こしてはいない。もちろん、王太子を前にすれば、いつものように媚を売るだろうし、弱いフリもするだろう。しかし、王太子に会うことへ一番消極的だったのは、彼女だった。
「それは、もちろん皆様と同じように、王太子様にお会いしようと「嘘ですわ」」
そう、断言するアマンダは、当然知っていた。王太子に会おうとせずに、エリアナが何をしているのかを。
だから、アマンダはニタリと、その口許を歪めて、真実を告げてやる。
「だって、エリアナ様は、国王陛下に想いを馳せているのでしょう? エリアナ様のお部屋には、国王陛下の姿絵がたくさんありますものね?」
「っ!!?」
そんなアマンダの言葉に、エリアナは、始めて、本気の動揺を示した。
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