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第一章 復讐の聖女候補

第二十八話 レアナとお茶*

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 アルリエ・リナスへの復讐は、暴力。それも、狂った侍女による終わりなき拷問。
 アルリエが入れられた部屋は、ただの拷問部屋ではなく、その昔、魔王が何度も何度も、壊れても修復するようにと呪いをかけた部屋だった。修復の権限を分け与えれば、幼子でもその力を使うことができる。拷問の練習にもうってつけで、レアナは、この場所で拷問の練習をする予定だった。


「それにしても、侍女の選別は苛烈だったね」

「そう、かもね。でも、そうしなきゃ不公平でしょう? 私が直接手を下したいのに、それを代わりたいだなんて……」


 魔王とお茶をするレアナは、付け焼き刃ではあれど、どこか上品で、ただの孤児でしなかった頃とは雰囲気が違った。黒い丸テーブルの上にドンと載った水晶を囲んで、レアナは優雅にティーカップを持ち上げる。真っ黒なドレスを身に纏い、微笑みを浮かべるレアナは、ともすれば、貴族の娘のようにすら見えた。


「最初は、侍女達もあんな風に拷問するつもりだったんだけど、攫った後にあの女を憎んでることを知ったから、ちょっと遊ぼうと思ったの」

「それで、共食い・・・?」


 クッキーを片手にニコニコと笑う魔王の言葉に、レアナはこともなげにうなずく。


「まぁ、正確には食べさせようとしたわけじゃないけど、武器は口だけ、お互いを殺し合って、勝った一人にだけ、拷問の権利をあげるって話したら、張り切る子が居てね」


 腕を折られ、顔をガラス片でズタズタにされた侍女を、勝負の公平性のために癒やしてやれば、鬼の形相で他の侍女達を食い散らかした。
 もちろん、他の侍女達も恨みを抱えていたのは確かだろうが、それ以上に、心が疲弊していた。だから、だろうか……あの侍女以外は、説得を試みたり、逃げ惑ったり、泣き叫んだり……そんな、つまらない反応しかしなかったがために、死んだ。


「あの女の好きなピンクではないけど、綺麗な赤はたくさん散りばめることができたかな?」


 テーブルの真ん中で、一際存在感を放つ水晶玉。それには、現在のアルリエの拷問風景が映し出されていた。今は、焼けただれた顔を鏡で見せつけているところらしい。


「拷問器具がなくても、人間って、どこまでも残酷になれるよね」

「でも、拷問器具はあった方がいいよ。だって、長く苦しめるために、より凄惨な目に遭わせるために、人間が作り出した叡智なんだから」

「叡智……まぁ、確かにそうかも?」


 少し微妙な顔をしながらも同意する魔王は、爪を一枚一枚剥がされるアルリエの映像を見ながら、スコーンにいちごジャムをつけて食べる。


「それで……そろそろ、目的を教えてくれても良いとは思わない?」

「何のことかな?」

「とぼけても無駄だよ? 魔王と暮らして、そんなに長く経ってないかもしれないけど、魔王の性格はだいたい分かった。魔王がただの親切心で私を助けたとは思えないし、私の復讐だって、魔王に利があるとは思えない。ねぇ、何が目的?」


 そう問いかけたレアナに、魔王はただ、昏い目で微笑みを浮かべて……。


「そうだね、そろそろ、話してあげよう」


 その口角を上げて、歪に嗤った。
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