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第一章 ドラグニル竜国へ
第六話 見合い(アルム視点)
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最初は、『絶対者』に頼まれたからという理由だけだった。『絶対者』はボクが信奉し、敬愛する人。ボクの初恋の人。そんな人からの頼みを、引き受けないという考えは微塵もなかった。
『絶対者』の妹だという彼女は、つり目な部分以外はあまり似ていないように思えて、少しばかり残念だった記憶はあるものの、『絶対者』と比べるべくもなく弱々しいその姿に、まずは守らなければという意識が生まれた。
「それで、お姉様は、私に花をくれたんです。リトルナイトという名前の花なんですけど……」
その、守らなければという思いは今も消えてはいない。寵妃という何者にも害されない立場を与えて、度々お茶の席に招けば、ボクが敬愛してやまない『絶対者』の話を一緒にしてくれる。それはとても居心地が良くて、彼女を引き取って良かったと心から思う。
「ところで、ここの生活は慣れたか?」
しばらく、『絶対者』談義を続けた後、落ち着きを取り戻したボク達はひとまず必要事項の確認をすることにする。他の者が見ていたら、先に必要事項を確認しろと言われそうだが、彼女との話が楽しいのがいけない。
「はい、おかげさまで、居心地良く過ごさせてもらってます」
ニコニコ笑う彼女の言葉に、嘘偽りはなさそうで、ボクは安心する。
「そうか。何かあれば、遠慮なく言ってくれ」
「はい」
そして、そこまで言ったところで、ボクはそろそろ、彼女の将来のために行動しなければならないと口を開く。
「慣れてきたのであれば、そろそろ見合いを始めてみないか?」
「見合い、ですか?」
見合いと言っても、本格的な見合いではない。むしろ、寵妃という立場の彼女を堂々と見合いさせるわけにはいかない。あくまでも、何らかの用事のついでに顔を合わせてみるというだけのことだ。
「『絶対者』から頼まれている内容の中には、シェイラの恒久的な生活の保証も含まれている。となれば、やはりこの国で伴侶を見つけてもらうよりほかあるまい」
そう言うと、シェイラはしばらく考えた後、ゆっくりとうなずく。
「そうですね。いつまでもここでお世話になっているわけにもいきませんし、お願いしてもよろしいですか?」
「任せておけ。もし、目ぼしい相手が見つかれば、何らかの理由をつけてその者に下賜するという形を取ろう」
「そうですね。それが自然な形になりそうですね」
あくまでも淡々と、ボク達は話し合いを進める。ボク達の間にあるのは、『絶対者』という繋がりと、そこから生まれた戦友のような関係性。ボクとしては、人間の一生分くらい、ここに居てもらっても構わないという気持ちはあるものの、それではシェイラが寂しいままだろう。友として、そんなことだけは避けたかった。
「一週間以内に、会わせられそうな奴らの釣書を渡そう」
「はい、お待ちしています」
そうして、ボク達はお茶会を終えて、それぞれのやるべきことのために、部屋へ戻るのだった。
『絶対者』の妹だという彼女は、つり目な部分以外はあまり似ていないように思えて、少しばかり残念だった記憶はあるものの、『絶対者』と比べるべくもなく弱々しいその姿に、まずは守らなければという意識が生まれた。
「それで、お姉様は、私に花をくれたんです。リトルナイトという名前の花なんですけど……」
その、守らなければという思いは今も消えてはいない。寵妃という何者にも害されない立場を与えて、度々お茶の席に招けば、ボクが敬愛してやまない『絶対者』の話を一緒にしてくれる。それはとても居心地が良くて、彼女を引き取って良かったと心から思う。
「ところで、ここの生活は慣れたか?」
しばらく、『絶対者』談義を続けた後、落ち着きを取り戻したボク達はひとまず必要事項の確認をすることにする。他の者が見ていたら、先に必要事項を確認しろと言われそうだが、彼女との話が楽しいのがいけない。
「はい、おかげさまで、居心地良く過ごさせてもらってます」
ニコニコ笑う彼女の言葉に、嘘偽りはなさそうで、ボクは安心する。
「そうか。何かあれば、遠慮なく言ってくれ」
「はい」
そして、そこまで言ったところで、ボクはそろそろ、彼女の将来のために行動しなければならないと口を開く。
「慣れてきたのであれば、そろそろ見合いを始めてみないか?」
「見合い、ですか?」
見合いと言っても、本格的な見合いではない。むしろ、寵妃という立場の彼女を堂々と見合いさせるわけにはいかない。あくまでも、何らかの用事のついでに顔を合わせてみるというだけのことだ。
「『絶対者』から頼まれている内容の中には、シェイラの恒久的な生活の保証も含まれている。となれば、やはりこの国で伴侶を見つけてもらうよりほかあるまい」
そう言うと、シェイラはしばらく考えた後、ゆっくりとうなずく。
「そうですね。いつまでもここでお世話になっているわけにもいきませんし、お願いしてもよろしいですか?」
「任せておけ。もし、目ぼしい相手が見つかれば、何らかの理由をつけてその者に下賜するという形を取ろう」
「そうですね。それが自然な形になりそうですね」
あくまでも淡々と、ボク達は話し合いを進める。ボク達の間にあるのは、『絶対者』という繋がりと、そこから生まれた戦友のような関係性。ボクとしては、人間の一生分くらい、ここに居てもらっても構わないという気持ちはあるものの、それではシェイラが寂しいままだろう。友として、そんなことだけは避けたかった。
「一週間以内に、会わせられそうな奴らの釣書を渡そう」
「はい、お待ちしています」
そうして、ボク達はお茶会を終えて、それぞれのやるべきことのために、部屋へ戻るのだった。
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