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第七章 舞踏会
第百三十六話 微睡みと現実
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「ユーカ、すまない」
「ユーカ、ごめんね」
ふわふわとした微睡みの中、大好きな人達の、何だか情けない声が聞こえる。
頬に、瞼に、おでこに、鼻に、柔らかいものが、何度も何度も降ってくる。それが、とても心地よくて、幸せな夢だなぁと感心する。
そぅっと唇をなぞられて、また、頬に暖かくて柔らかなものが落ちてくる。
「ユーカ、愛してる」
「僕も、愛してるよ。ユーカ」
(夢じゃなければ良かったのに……)
本当に愛しいというような声で囁く二人に、私の心の中には自虐が芽生える。
(私みたいなちんちくりん、二人に相応しくなんかないよ……)
それは、あのご令嬢が言っていた言葉で、私もその通りだと思ってしまう。
(ジークさんも、ハミルさんも、魔王で、格好良くて、仕事ができて、優しくて、気遣いもできて、とっても強くて……もう、どこにも非の打ち所がない。私なんかとは、大違いだよ)
分かってる。私は、二人に相応しくない。けれど、それを自覚すれば自覚するほど、胸が苦しくなってしまう。
「ユーカ!?」
「ど、どうしようっ、怖い夢でも見てるのかなっ」
しくしくと泣いてしまう私に、ジークさん達が取り乱している気がする。なんて、リアルな夢なんだろうと思いつつも、その慌てようがおかしかった。
「大丈夫だ。怖いことは何もない」
「遅れてごめんね。ユーカを追い詰めたやつは、僕達が責任を持って処分するからね」
頭をそっと撫でられて、その優しさに、心が随分と暖かくなる。
(そういえば、この夢、ジークさん達は隣に寝そべってるのかな?)
何となく、熱い体温が体の両端から感じることに気づいて、どうやら二人に挟まれているようだと気づく。それは、普段なら顔から火を吹くほどに恥ずかしいことなのだけれど、今は不思議と、嬉しいとしか感じなかった。
「っ、かわっ……い、いや、ダメだ。ここは、我慢せねばっ。無心に、無心に……ぬおぉぉおっ」
「うっ、寝ながら微笑むとか……ユーカは僕達をどうしたいわけっ!? あぁぁあっ、キスしたいっ、いや、むしろ、今すぐ食べちゃいたいっ」
二人して小声で悶えている様子を、私はおかしく思いながらも、次第に意識が沈み込むのを自覚する。
(もうちょっと……もう、ちょっ、と……)
まだ、この幸せな夢を見ていたい。けれど、夢の中の私は、どんどん暗闇に引き込まれていく。
(せめて、起きたら、側にジークさん達が居てほしいな……)
居るとしても、猫の姿だとは分かっていても、そう求めずにはいられない。そうして、私は再び深い眠りに落ちるのだった。
「んぅ……あ、れ?」
朝、目が覚めた私は、ぼんやりとした頭で、昨日、いつ眠りに落ちてしまったのかを考えながら体を起こそうとする。
「っ、えっ?」
ただ、なぜか、体は動かない。何かが私を絡め取っていて、身動きが取れなかった。
「? ……っ!?!!?」
何が起きているのかを確認しようと、顔を横に向けた瞬間、私は内心で悲鳴を上げる。
(なななななっ、何でっ! ジークさんがここにっ!?)
いや、猫姿であれば、私もここまで取り乱すことはなかった。けれど、そこに居たのは、とんでもない美形のジークさんで、今はラフな寝間着姿で私の隣に寄り添っている。
(あ、れ? ちょっと待って? ジークさん一人にしては、反対側からも体温を感じる、ような……?)
恐ろしく嫌な予感がしながらも、確かめないわけにもいかない私は、思い切って反対側へと首を動かす。
「っ!?」
覚悟していたとはいえ、美形のダブルパンチは堪える。そこには、美しい顔のハミルさんがスヤスヤと眠っていた。こちらもまた、ラフな寝間着姿で、ちょっとはだけた胸元を見てしまった私は、視線を大きくさまよわせる。
(何で!? 何が、どうしてこうなってるの!?)
一気に茹だった頭で、私は必死に答えを求めて……最悪なことに、すぐにそこへと辿り着いてしまう。
(ま、さか……夢じゃ……なかっ、た……?)
考えたくない。いや、考えてはいけない結論がそこにあって、私は今すぐ気絶できないものかと遠い目をする。けれど、こんな時に限って、気絶できる様子がない。
「ん、ユーカ……」
(起きたぁぁぁあっ!?)
ぎゅっと右側に居たジークさんに引き寄せられて、私は心臓をバクバクさせて、口もパクパクさせる。
「ユーカ……? 良かった。目が覚めたんだな。だが、熱でもあるのか?」
そう言って、おでこを合わせてきたジークさんに、もう、私はフラフラだ。
「熱は、ないな」
「ユーカ? はっ、目が覚めたんだねっ!」
しかも、左隣に居たハミルさんまでも起き出してきて、声も出せずに大パニックを起こす。
「おはよう。ユーカ」
「おはよう。もう大丈夫? ユーカ?」
ハミルさんの問いかけに、『大丈夫じゃないっ』と返したい気持ちはあったけれど、結局のところ、何も言うことができずに、うなずいてしまうのだった。
「ユーカ、ごめんね」
ふわふわとした微睡みの中、大好きな人達の、何だか情けない声が聞こえる。
頬に、瞼に、おでこに、鼻に、柔らかいものが、何度も何度も降ってくる。それが、とても心地よくて、幸せな夢だなぁと感心する。
そぅっと唇をなぞられて、また、頬に暖かくて柔らかなものが落ちてくる。
「ユーカ、愛してる」
「僕も、愛してるよ。ユーカ」
(夢じゃなければ良かったのに……)
本当に愛しいというような声で囁く二人に、私の心の中には自虐が芽生える。
(私みたいなちんちくりん、二人に相応しくなんかないよ……)
それは、あのご令嬢が言っていた言葉で、私もその通りだと思ってしまう。
(ジークさんも、ハミルさんも、魔王で、格好良くて、仕事ができて、優しくて、気遣いもできて、とっても強くて……もう、どこにも非の打ち所がない。私なんかとは、大違いだよ)
分かってる。私は、二人に相応しくない。けれど、それを自覚すれば自覚するほど、胸が苦しくなってしまう。
「ユーカ!?」
「ど、どうしようっ、怖い夢でも見てるのかなっ」
しくしくと泣いてしまう私に、ジークさん達が取り乱している気がする。なんて、リアルな夢なんだろうと思いつつも、その慌てようがおかしかった。
「大丈夫だ。怖いことは何もない」
「遅れてごめんね。ユーカを追い詰めたやつは、僕達が責任を持って処分するからね」
頭をそっと撫でられて、その優しさに、心が随分と暖かくなる。
(そういえば、この夢、ジークさん達は隣に寝そべってるのかな?)
何となく、熱い体温が体の両端から感じることに気づいて、どうやら二人に挟まれているようだと気づく。それは、普段なら顔から火を吹くほどに恥ずかしいことなのだけれど、今は不思議と、嬉しいとしか感じなかった。
「っ、かわっ……い、いや、ダメだ。ここは、我慢せねばっ。無心に、無心に……ぬおぉぉおっ」
「うっ、寝ながら微笑むとか……ユーカは僕達をどうしたいわけっ!? あぁぁあっ、キスしたいっ、いや、むしろ、今すぐ食べちゃいたいっ」
二人して小声で悶えている様子を、私はおかしく思いながらも、次第に意識が沈み込むのを自覚する。
(もうちょっと……もう、ちょっ、と……)
まだ、この幸せな夢を見ていたい。けれど、夢の中の私は、どんどん暗闇に引き込まれていく。
(せめて、起きたら、側にジークさん達が居てほしいな……)
居るとしても、猫の姿だとは分かっていても、そう求めずにはいられない。そうして、私は再び深い眠りに落ちるのだった。
「んぅ……あ、れ?」
朝、目が覚めた私は、ぼんやりとした頭で、昨日、いつ眠りに落ちてしまったのかを考えながら体を起こそうとする。
「っ、えっ?」
ただ、なぜか、体は動かない。何かが私を絡め取っていて、身動きが取れなかった。
「? ……っ!?!!?」
何が起きているのかを確認しようと、顔を横に向けた瞬間、私は内心で悲鳴を上げる。
(なななななっ、何でっ! ジークさんがここにっ!?)
いや、猫姿であれば、私もここまで取り乱すことはなかった。けれど、そこに居たのは、とんでもない美形のジークさんで、今はラフな寝間着姿で私の隣に寄り添っている。
(あ、れ? ちょっと待って? ジークさん一人にしては、反対側からも体温を感じる、ような……?)
恐ろしく嫌な予感がしながらも、確かめないわけにもいかない私は、思い切って反対側へと首を動かす。
「っ!?」
覚悟していたとはいえ、美形のダブルパンチは堪える。そこには、美しい顔のハミルさんがスヤスヤと眠っていた。こちらもまた、ラフな寝間着姿で、ちょっとはだけた胸元を見てしまった私は、視線を大きくさまよわせる。
(何で!? 何が、どうしてこうなってるの!?)
一気に茹だった頭で、私は必死に答えを求めて……最悪なことに、すぐにそこへと辿り着いてしまう。
(ま、さか……夢じゃ……なかっ、た……?)
考えたくない。いや、考えてはいけない結論がそこにあって、私は今すぐ気絶できないものかと遠い目をする。けれど、こんな時に限って、気絶できる様子がない。
「ん、ユーカ……」
(起きたぁぁぁあっ!?)
ぎゅっと右側に居たジークさんに引き寄せられて、私は心臓をバクバクさせて、口もパクパクさせる。
「ユーカ……? 良かった。目が覚めたんだな。だが、熱でもあるのか?」
そう言って、おでこを合わせてきたジークさんに、もう、私はフラフラだ。
「熱は、ないな」
「ユーカ? はっ、目が覚めたんだねっ!」
しかも、左隣に居たハミルさんまでも起き出してきて、声も出せずに大パニックを起こす。
「おはよう。ユーカ」
「おはよう。もう大丈夫? ユーカ?」
ハミルさんの問いかけに、『大丈夫じゃないっ』と返したい気持ちはあったけれど、結局のところ、何も言うことができずに、うなずいてしまうのだった。
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