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第一章 出会い

第十二話 リリ(リリ視点)

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 最近、また新しい片翼のお嬢様がやってきた。きっと、獣人である私達を見たら、嫌悪するんだろうなとか、むしろ目も合わせてくれないかもしれないなとか思っていたのだけれど、どうにも今回は様子がおかしかった。

 今までの片翼のお嬢様達は、皆、私やララお姉ちゃんのことを『低俗な獣』だとか、『穢らわしい』とか言って、嫌っていた。それこそ、もしかしたら片翼の条件の一つなんじゃないかってくらいに、獣人である私達を露骨に蔑んできた。
 鞭で叩かれることは一度や二度じゃすまない。獣人特有の回復能力のおかげで、翌日にはすっかり元気にはなるものの、痛いものは痛い。

 ただ、見知らぬ土地に連れてこられて、憎い魔族の片翼としてほとんど閉じ込められた状態にされた上、蔑める対象が近くに居るという環境なのだ。私達が痛めつけられるのは当然のことだった。

 もちろん、ご主人様であるジークフリート様は、そんな私達の状況にすぐお気づきになって、配置換えを提案してくれたけれど、片翼のお嬢様達の気持ちを考えると、そういうわけにはいかないというのが現状だった。片翼のお嬢様達は、私達を蔑み、痛めつけることでのみ、心を保っているようにしか見えなかったから……。

 だから、私達の役目は、専属侍女として、片翼のお嬢様達のストレス発散道具になることだ。大抵のお嬢様は、訪れがあった日や、次の訪れを知らされた日に荒れていた。そして、時間が経てば経つほど、ストレス発散の頻度は多くなっていった。

 本当なら、ララお姉ちゃんまでは巻き込みたくない。これは、ただジークフリート様への忠誠心のために、私が勝手にしていることなのだから。けれど、ララお姉ちゃんは頑として譲らず、むしろ私に配置換えを望むくらいで、お嬢様達に虐げられる状況を受け入れてしまう。私が最終的に折れるのは必然だった。


(それなのに、今回はどういうわけだろう?)


 今回の片翼であるお嬢様は、すでに一度、訪れを経験している。それなのに、私達に敵意を浮かべる様子が全く見られない。もしかしたら我慢してしまっているのかもしれないと考えて、鞭だとか棒だとかを用意してみたものの、お嬢様は首を横に振るばかりだ。


(刃物は、自害の可能性があるから持ち込めないし……)


 さすがに、刃物となると、こちらが死んでしまう可能性もあって使えない。いや、鞭でも首を絞めようとしてかかられたら死んでしまいそうだけど、そこは獣人としての身体能力で回避できる。


(我慢されて、どこかで爆発することになるんだったら、そっちの方が怖いな)


 やはり、積極的にストレス発散を促すべきだ。ついでに、このことに関しては、メアリーやララお姉ちゃんにも相談するべきだろう。

 そこまで考えて、私はふと、思う。


(もしも、私達を虐げない人が、ジークフリート様の片翼であってくれるなら、希望も持てるのかな?)


 そんなことは、あり得ない。それでも、ちょっとだけ、そんな夢のようなことを望んでしまう。初対面の段階で、嫌悪の表情を浮かべなかった珍しい片翼のお嬢様。もしかしたら、そうだったら良いなと小さな希望だけを抱いて、私は今日も仕事に励むのだった。
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