悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第二章 異質な神界

第百二十六話 黒の本質

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 そう問いかければ、アメリアさんはしばらく黙り込んだまま、動きませんでした。ですが、意味を正確に理解したのか、次第に青ざめ、ガタガタと震え始めます。


「あ……こ、れは……」

「安定しないのは当然です。これは、かつての神々の感情を素にした破壊です。そして、それに引き込むための感情操作が自然となされるものが、この黒の本当に恐ろしいところなのですから」


 手も足も出ない破滅を前に、震えることがないのはおかしい。怖いと言いながらも平然としているのも、お母様が、破滅を前にしながら実験を繰り返せていたことも……。だって、そんなの恐怖心がない・・・・・・のと同じ反応なのですから。


「怖いはずだから、怖いと思い込んでいますよね? でも、それは本当のアメリアさんの感情じゃないはずです。ここは、何としてでも逃げ出したいくらいの気持ちになっていないと、こんなに近づいても平気なわけがないんです」

「あ、あぁ……」


 頭を抱えるアメリアさんですが、どうやら、簡単にはこの呪縛から逃れることはできないようです。理解はしていても、感情の操作が強過ぎる。それが、現状なのでしょう。


「……ラルフ、いけますか?」

「うん、やってみるよ。フィーも、大丈夫?」

「もちろんです!」


 きっと、私とラルフがこの場に揃ったのは偶然ではないのでしょう。長い年月を黒く染め上げていたコレは、どこかで救いを求めてもいたのだと、私達なら理解できます。罪悪感も、純真も、そこに感情があるからこそ生まれるものです。そして……コレには、明らかに感情が存在すると、感情を司る私達だからこそ理解できるのです。
 憎しみ、恨み、悲しみ、苦しみ……そんな、膨大に膨れ上がった負の感情の中で、救いを求める感情が確かに存在する。コレは言うなれば、感情魔法とでも呼ぶべき破壊者なのだと、私もラルフも、今、この場でゆっくりと……まるで、あらかじめ教えようとしてくれていたかのように、この黒によって理解していきます。だからこそ……私達は、コレに対処できるのです。
 私とラルフは、そっと互いの手を繋ぎます。そして……。


「純真付与」

「罪悪感付与」


 負の感情そのもの、とでも言えるソレに、純真なる心を、そして、罪悪感を付与すればどうなるか。それは、目の前の光景が全てを物語っていました。


『ギャァァァァァァアッ!!!!』


 甲高い、野太い、か細い、幼い、そんないくつもの形容詞が思い浮かぶ、いくつもの絶叫が、同時に上がります。そして、次の瞬間に起こったのは……。


「っ、始まり、ましたねっ」

「っ、うんっ」


 黒の自壊。そう、あまりの罪悪感に耐えかねた純真さを持つソレは、ソレ自身を消滅させ始めたのです。ただし、いくつもの世界を呑み込んできたソレに対して、私達の力は、圧倒的に足りていませんでした。
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