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第二章 異質な神界
第百二十四話 想いと覚悟
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私が、男神から女神へと転身したのには、当然、深い深い理由があります。純真を司るラルフを好きだった私は、あの日、偶然にもそれを知ってしまったのです。
「ラルフが、死んで、しまう……?」
神という存在は、とても自由であり、不自由な存在です。何せ、その根源を満たせない状況が続けば、神としての力が消滅し、死を迎えるのですから。つまりは、純真を司るラルフは、その環境により心を歪められ、純真さを失い、消滅の危機にあったわけです。
「どうにか、しなきゃ……。俺は、ラルフに死んでほしくないっ」
どんな手を尽くしてでも、私は、ラルフを失いたくはなかった。お母様にもお父様にも、それを相談した結果、出てきた結論は……。
「……多分、女というものへの忌避感をどうにかできれば持ち直すはずよ」
お母様のそんな言葉。
「ラルフが信頼できる女性が居れば、それが一番じゃないかな?」
お父様のその助言。
それらを聞いて、私は決意しました。それならば、『俺』が『私』になれば良いのだと。幸い、お母様もお父様も、そんな『俺』の意見を否定しませんでした。お母様にご令嬢としての振る舞いを叩き込まれ、女神へ転身し、ラルフと会ったことによって、ラルフの力は安定することになったのです。つまりは、ラルフと同様に、私にとって、お母様もお父様も、かけがえのない存在というわけです。
「フィー、フィーっ、しっかりして!」
「っ、ラルフ……お母様が、お父様が……」
お母様とお父様を引き離してしまえば何が起こるか。そんなの、二人を良く知る存在であれば、簡単に答えが出ます。二人は、お互いのことが何よりも大切で、引き離されたのであれば、その元凶を何としてでも潰しますし、必死に戻ろうとします。ただ、それが叶わない場合、それは二人の破滅を意味することとなります。
「いや、だ……。どうして、こんな……っ」
「フィー……大丈夫。まだ、時間はある。僕達で、この黒い大地を退ければ、きっと、ユレイラ様も、イリアス様も戻ってくるよ」
ギュッと抱き締められて、私は一瞬、不安が和らぐのを感じます。
(あ、ぁ……やっぱり、ラルフは、私の唯一……)
「それに……例え、何があったとしても、僕は、フィーの手を離したりしないよ」
不安は吹き飛び、私の胸には、強い力が宿ったように感じられます。
「ラルフ……。はい、私も、絶対に、ラルフの手を離したりしません」
ラルフさえ居てくれるのであれば、きっと、私は無敵でいられる。そうして、私はようやく、巨大な障害となっている『黒』へと、目を向けました。
「ラルフが、死んで、しまう……?」
神という存在は、とても自由であり、不自由な存在です。何せ、その根源を満たせない状況が続けば、神としての力が消滅し、死を迎えるのですから。つまりは、純真を司るラルフは、その環境により心を歪められ、純真さを失い、消滅の危機にあったわけです。
「どうにか、しなきゃ……。俺は、ラルフに死んでほしくないっ」
どんな手を尽くしてでも、私は、ラルフを失いたくはなかった。お母様にもお父様にも、それを相談した結果、出てきた結論は……。
「……多分、女というものへの忌避感をどうにかできれば持ち直すはずよ」
お母様のそんな言葉。
「ラルフが信頼できる女性が居れば、それが一番じゃないかな?」
お父様のその助言。
それらを聞いて、私は決意しました。それならば、『俺』が『私』になれば良いのだと。幸い、お母様もお父様も、そんな『俺』の意見を否定しませんでした。お母様にご令嬢としての振る舞いを叩き込まれ、女神へ転身し、ラルフと会ったことによって、ラルフの力は安定することになったのです。つまりは、ラルフと同様に、私にとって、お母様もお父様も、かけがえのない存在というわけです。
「フィー、フィーっ、しっかりして!」
「っ、ラルフ……お母様が、お父様が……」
お母様とお父様を引き離してしまえば何が起こるか。そんなの、二人を良く知る存在であれば、簡単に答えが出ます。二人は、お互いのことが何よりも大切で、引き離されたのであれば、その元凶を何としてでも潰しますし、必死に戻ろうとします。ただ、それが叶わない場合、それは二人の破滅を意味することとなります。
「いや、だ……。どうして、こんな……っ」
「フィー……大丈夫。まだ、時間はある。僕達で、この黒い大地を退ければ、きっと、ユレイラ様も、イリアス様も戻ってくるよ」
ギュッと抱き締められて、私は一瞬、不安が和らぐのを感じます。
(あ、ぁ……やっぱり、ラルフは、私の唯一……)
「それに……例え、何があったとしても、僕は、フィーの手を離したりしないよ」
不安は吹き飛び、私の胸には、強い力が宿ったように感じられます。
「ラルフ……。はい、私も、絶対に、ラルフの手を離したりしません」
ラルフさえ居てくれるのであれば、きっと、私は無敵でいられる。そうして、私はようやく、巨大な障害となっている『黒』へと、目を向けました。
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