悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第二章 異質な神界

第七十六話 滅びの傍観

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 世界の歪み、とりわけ、神界の歪みというのは恐ろしいもので、歪めば歪むほど、取り返しがつかなくなっていきます。商業の神は、商業を辞め、農業の神は鍬を放り出す。そんな状況で、この神界が保護する世界が無事かといえば、そんなわけがありません。


「ワタシの方はこの神界が管轄の世界を見てきたのだけど、どれも、酷い有様だったわ。ただ、そこで異常だったのが、それを知っている神が居るはずなのに、何も手を打とうとしていないってことね」

「世界が滅ぶのを傍観している……?」

「そうね。ただ、何というか……世界の現状を知る神達は、ヤケになっているようにも見えたわ」


 ラルフの問いにエイリーンさんは自分の感想を告げます。そして、その感想こそが、私達には大きく引っかかりました。


「ヤケに……」

「では、何か理由があって、傍観しているということでしょうか?」

「世界が滅べば、神界も滅ぶのですよ!? それなのに、それを傍観できるほどの何かなんて、あり得るのですか??」


 ヤケになるだけの理由。それを探る私達に、ロードさんはあり得ないとばかりに叫びます。


「ロード、今は、全ての可能性を考えなきゃダメよ」

「っ……そうですね。ですが、不思議です。この現状を、この神界の創世神様はどうお考えなのか……」

「それなんですけど、一つ、皆さんに聞いておきたいことがあります」


 タイミング良く、創世神様の話が出たため、私は、一度この確認をしておくことにします。


「この神界の創世神様がどこに居られるか、誰か、ご存知ですか……?」


 神界における創世神様の立場は、最上位に位置しています。神界の最大の守り手であり、超重要神物じんぶつ。通常は、創世神様は自らの居城をどこか目立つ場所に置いて、そこを他の神々に守らせるという仕組みを取ります。しかし……。


「「「…………」」」


 私達は、誰も、創世神様の居城を知りませんでした。いえ、そもそも……。


「この神界に、創世神様は存在するのかしら……?」


 エイリーンさんの言葉が、この場に重くのしかかります。もしも、何らかの理由で創世神様が失われたというのであれば、ヤケになるのも分かる、というのが、現在の私達の心境でした。しかし、それには、一つ、大きな問題があります。


「創世神様よりも上位の神々は、この世界が滅ぶことを望んでいるのかな?」


 創世神様より上の存在は居ないとされていますが、実は、創世神という役職は中間管理職なのです。他の神々が知らない上位の神々と連絡を取り、世界の衰退を観察し、制御し、報告する役割を担うのが創世神という立場です。ただ、その場合、創世神様に何かが起こった時、上位の神々は世界のコントロールを失ってしまうのではないか、と思えてしまうのです。


「……上位世界に行くことは、創世神様から禁じられていますが、場合によっては考えなければいけないかもしれませんね」


 そう告げれば、全員が、暗い顔でうなずいていました。
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