悪役令嬢の神様ライフ

星宮歌

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第一章 帰還と波乱

第四十七話 作戦決行(???視点)

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 時計台は完全に崩壊し、その瓦礫の上は、セルティス様とコルト様が戦う激戦区となっていた。邪神による配役は、悪の魔法使いと忠実な聖なる番犬らしく、邪神はうっとりとその戦いを眺めて妄想を続ける。


「そう、そう、もっともっと、必死に、敵を食い殺さんと踏ん張ってっ。もっともっと、憎悪に身を焦がして、鋭い殺意をぶつけてっ」


 このままでは、遠からず、邪神は消滅するだろう。現に、邪神は片腕を失ったところだ。セルティス様の魔法に巻き込まれて負った傷。しかし、それでも邪神がその傷を気にすることはない。熱に浮かされたように、頬を赤く染めて、戦闘場面に釘付けになっている。だから……。


(ウゴク。ワレワレ、ニンム、スイコウ)


 マリフィー様の……いや、現在はミーシャと名乗っている我々の主は、本人には自覚がないものの、とても強力な権能を持っている。それは、『罠による結果の誘導』。ミーシャ様が張った罠にかかった人物は、その権能への抵抗力でもない限り、ミーシャ様が思い描く通りの罠の影響を受ける。たとえ、バケツに入れたものが水であろうと、罠の発動によって熱湯が降り注ぐと思っているのであれば、その通りになる。だから、本来は、我々の存在は不要なのだ。


(ニンム、スイコウ。ワナ、セッチ、カンリョウ)


 ミーシャ様なら、罠を仕掛けたいと思うだけで、どこにだって罠を仕掛けられる。ただ、その能力に気づいていないだけで、我々もそれを話せないだけなのだ。だって、ミーシャ様と離れるのは、あまりにも寂しい。


(ッ、ワナ、ハツドウ、カクニン)


 そうこうしているうちに、天井に仕掛けた無数の爆弾が、セルティス様が飛び上がったことをきっかけに投下される。


「何っ!?」

「っ!?」

「……え?」


 誰もが予想しなかったそれは、彼らがその存在に気づいた瞬間、中身をぶちまけるだけの爆発を起こし……。


「「「ギャアァァァァァァアッ!!!」」」


 凄まじい悲鳴とともに、全員、白目を剝いて倒れ、痙攣を起こす。


(……キツケ、グスリ……?)


 それは、ミーシャ様が、ユレイラ様よりお預かりした気付け薬。ミーシャ様は、センサーで投下を開始する爆弾の罠を、その中身を気付け薬に変えて、投下したのだ。ただし……。


『ちょっと心配なのが、これ、刺激が強いらしいんですよね。それで、神以外に使うのは禁止ってことで、私に預けてくださったんです』


 神であるゆえか、どうにか意識はあるらしいセルティス様とコルト様。邪神の方も、酷い顔になりながら、一応、意識はあるようで……作戦成功の合図を送れば、すぐに、フィオナ様が彼らを鎖でグルグル巻にしてしまう。空気中に漂う気付け薬は、これまたミーシャ様からお借りした便利道具、『集めますン』という名の小瓶を振って回収する。これで、恐れる対象は邪神のみとなった。
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