27 / 132
第一章 帰還と波乱
第二十七話 富裕層の商業区画(ミーシャ視点)
しおりを挟む
富裕層向けの商業区画は、それなりに落ち着いた雰囲気であり、フィオナちゃん達が暴走する何かはないように見えた。
「お母様、富裕層、ということは、ここはお金持ちの人間が集う場所なのですよね?」
「うん、そうだよ」
「それにしては、ここの商品って見た目ばかりのような気がするのですが……」
「フィオナちゃん、神々の世界では、見た目よりも機能重視だったかもしれないけど、というか、そういうものを作れたのかもしれないけど、ここでは、そこまでの技術力はないから、比べちゃダメですよ」
「そうなんですか?」
ただ、もちろんフィオナちゃんの常識は神界の常識でしかない。驚いたような表情のフィオナちゃんに肯定を返せば、興味津々といった様子で周囲を見渡す。
「せっかくだから、フィオナちゃん達も人間界での買い物を経験してみたら良いのではないですか?」
平和に見学を終えられそうだと思えば、そんなルクレチアさんの提案で、不安が過ぎる。
(いや、まぁ、ここは富裕層向けの場所だし、多少の理不尽があっても飲み込んでくれ……る範囲に収めようっ)
今のフィオナちゃんをここの店員と話させるのは、とても、不安だ。もちろん、ラルフ君もそうだし、ルクレチアさんは……一応、知ってはいるらしいが、警戒が必要だ。
(お姉様やイリアス様は問題ないと思うから、きっと、どうにかなる……?)
私が不安を覚えていようとも、フィオナちゃん達は、ルクレチアさんの意見を歓迎してしまう。
「買い物っ! 役に立ちそうにはないですけど、綺麗なものは綺麗ですし、せっかくだから可愛いものを選びたいです!」
「僕も、賛成。どんなものが売られてるのか、知りたいし」
フィオナちゃんもラルフ君も、嬉しそうにしているものだから、ここでダメなどと言うことはできない。
そういうわけで、私達はどの店が良いだろうかと話し合って、宝飾店や食料品店を巡ることにする。
「……ギラギラだね」
「……はい」
ウキウキとした様子でまず訪れたのは、宝飾店。とはいえ、私はこの辺りの地理には疎いので、とりあえず目についた場所を選んだわけなのだが……入った直後、失敗したと気づく。
店内は、これでもかというくらいにゴテゴテと飾られており、上品さよりも下品さの方が際立つ。
中に入って、呆然とする二人の姿に、私はすぐにこの店を出ようと提案しかけて……先に、この店の店員に気づかれてしまう。
「おい、ここは、平民が来るような場所じゃねぇんだよっ! さっさと出ていけ!」
私達の衣装は、さすがに貴族に見えるものではない。とはいえ、王族と元公爵家のご令嬢……というか、今は神でもある存在に対するその物言いに、色々と終わった、と思ってしまった私は、とりあえず、視線を逸してみることにした。
「お母様、富裕層、ということは、ここはお金持ちの人間が集う場所なのですよね?」
「うん、そうだよ」
「それにしては、ここの商品って見た目ばかりのような気がするのですが……」
「フィオナちゃん、神々の世界では、見た目よりも機能重視だったかもしれないけど、というか、そういうものを作れたのかもしれないけど、ここでは、そこまでの技術力はないから、比べちゃダメですよ」
「そうなんですか?」
ただ、もちろんフィオナちゃんの常識は神界の常識でしかない。驚いたような表情のフィオナちゃんに肯定を返せば、興味津々といった様子で周囲を見渡す。
「せっかくだから、フィオナちゃん達も人間界での買い物を経験してみたら良いのではないですか?」
平和に見学を終えられそうだと思えば、そんなルクレチアさんの提案で、不安が過ぎる。
(いや、まぁ、ここは富裕層向けの場所だし、多少の理不尽があっても飲み込んでくれ……る範囲に収めようっ)
今のフィオナちゃんをここの店員と話させるのは、とても、不安だ。もちろん、ラルフ君もそうだし、ルクレチアさんは……一応、知ってはいるらしいが、警戒が必要だ。
(お姉様やイリアス様は問題ないと思うから、きっと、どうにかなる……?)
私が不安を覚えていようとも、フィオナちゃん達は、ルクレチアさんの意見を歓迎してしまう。
「買い物っ! 役に立ちそうにはないですけど、綺麗なものは綺麗ですし、せっかくだから可愛いものを選びたいです!」
「僕も、賛成。どんなものが売られてるのか、知りたいし」
フィオナちゃんもラルフ君も、嬉しそうにしているものだから、ここでダメなどと言うことはできない。
そういうわけで、私達はどの店が良いだろうかと話し合って、宝飾店や食料品店を巡ることにする。
「……ギラギラだね」
「……はい」
ウキウキとした様子でまず訪れたのは、宝飾店。とはいえ、私はこの辺りの地理には疎いので、とりあえず目についた場所を選んだわけなのだが……入った直後、失敗したと気づく。
店内は、これでもかというくらいにゴテゴテと飾られており、上品さよりも下品さの方が際立つ。
中に入って、呆然とする二人の姿に、私はすぐにこの店を出ようと提案しかけて……先に、この店の店員に気づかれてしまう。
「おい、ここは、平民が来るような場所じゃねぇんだよっ! さっさと出ていけ!」
私達の衣装は、さすがに貴族に見えるものではない。とはいえ、王族と元公爵家のご令嬢……というか、今は神でもある存在に対するその物言いに、色々と終わった、と思ってしまった私は、とりあえず、視線を逸してみることにした。
0
お気に入りに追加
371
あなたにおすすめの小説
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
完 モブ専転生悪役令嬢は婚約を破棄したい!!
水鳥楓椛
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢、ベアトリス・ブラックウェルに転生したのは、なんと前世モブ専の女子高生だった!?
「イケメン断絶!!優男断絶!!キザなクソボケも断絶!!来い!平々凡々なモブ顔男!!」
天才で天災な破天荒主人公は、転生ヒロインと協力して、イケメン婚約者と婚約破棄を目指す!!
「さあこい!攻略対象!!婚約破棄してやるわー!!」
~~~これは、王子を誤って攻略してしまったことに気がついていない、モブ専転生悪役令嬢が、諦めて王子のものになるまでのお話であり、王子が最オシ転生ヒロインとモブ専悪役令嬢が一生懸命共同前線を張って見事に敗北する、そんなお話でもある。~~~
イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!
悪役令嬢は冷徹な師団長に何故か溺愛される
未知香
恋愛
「運命の出会いがあるのは今後じゃなくて、今じゃないか? お前が俺の顔を気に入っていることはわかったし、この顔を最大限に使ってお前を落とそうと思う」
目の前に居る、黒髪黒目の驚くほど整った顔の男。
冷徹な師団長と噂される彼は、乙女ゲームの攻略対象者だ。
だけど、何故か私には甘いし冷徹じゃないし言葉遣いだって崩れてるし!
大好きだった乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた事に気がついたテレサ。
断罪されるような悪事はする予定はないが、万が一が怖すぎて、攻略対象者には近づかない決意をした。
しかし、決意もむなしく攻略対象者の何故か師団長に溺愛されている。
乙女ゲームの舞台がはじまるのはもうすぐ。無事に学園生活を乗り切れるのか……!
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
乙女ゲームの悪役令嬢は生れかわる
レラン
恋愛
前世でプレーした。乙女ゲーム内に召喚転生させられた主人公。
すでに危機的状況の悪役令嬢に転生してしまい、ゲームに関わらないようにしていると、まさかのチート発覚!?
私は平穏な暮らしを求めただけだっだのに‥‥ふふふ‥‥‥チートがあるなら最大限活用してやる!!
そう意気込みのやりたい放題の、元悪役令嬢の日常。
⚠︎語彙力崩壊してます⚠︎
⚠︎誤字多発です⚠︎
⚠︎話の内容が薄っぺらです⚠︎
⚠︎ざまぁは、結構後になってしまいます⚠︎
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる