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第一章 どうして魔族なんかに……

第二十六話 運命(ゲイン視点)

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 理那を見つけた瞬間、俺は思った。やっぱり、理那は俺の運命の相手なのだと。


 前世の記憶で、俺が覚えているのは、理那に不倫相手だったということを告げたところまでだ。その時の理那の反応も、その後、俺がどんな人生を歩んだのかも覚えてはいない。ただ、理那はいい女だったという記憶だけが、ずっと残り続けていた。
 俺が所有する女の奴隷だって、誰でも良いわけではない。少なくとも、何か理那を思わせるものを持たない奴に用はない。理那に似た部分を、ただひたすらに愛でて、それ以外の部分は粗雑に扱った。目の前の女が理那ではないということが許せなくて、うっかり殺してしまったことも一度や二度ではない。

 ただ……世界が違うことは、良く理解できていたし、またもう一度理那に会えるとは全く考えていなかった。もし、万が一にでも会えたなら、絶対に逃げられないように枷をつけて、閉じ込めて、ずっと、ずっと愛でてやるつもりだったが、それは叶わないものだと思っていた。

 それなのに……。


「あれは、あれは、理那だ。間違いないっ」


 姿形は、確かに前世の理那とは違っていた。しかし、俺が理那を間違えるはずはない。理那は、俺を愛してくれていた女だ。俺のものだ。

 ドロリとした執着心は、いったいいつから持っていたのか、今となってはもう分からない。しかし、この執着心のために起こす行動は決まっていた。


「どうにかして、あの魔族を引き剥がして、理那を手に入れないと……」


 見た目だけは、人間とあまり変わりのない魔族。稀に強すぎる魔力が角として現れる魔族も居るが、そうでなければ、本当に人間と見分けがつかない。しかし、魔族でなければ、誰かを自分の片翼だなどとは言わない。

 国に帰った俺は、ただひたすらに理那を取り戻す方法を考えて、作戦を練った。兄達が俺の行動に疑問を抱いている様子ではあったものの、それすらどうでも良かった。


「魔族を殺すには、相当に腕の立つ暗殺者じゃないと不味いな。それに、魔族は諜報能力に優れてるらしいから、その対策も必須か……」


 暗殺者のピックアップも、諜報対策も、すべてが順調に進んでいく。それもこれも、ログデン侯爵家という、裏の世界に精通した金持ちという立ち位置があるからこそだ。きっと、俺は理那を取り戻すために、生まれ変わったに違いない。

 時間をかけ、入念な準備を終えた俺は、ようやく、理那を取り戻せると、永遠に閉じ込めておけると、嗤った。
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