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第一章 どうして魔族なんかに……
第十八話 看病(ライト視点)
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「オリアナ様っ、大丈夫ですか?」
本当はあの日、オリアナ様を家で一人にはさせたくなかった。それでも、オリアナ様は、今は触れて欲しくなさそうで、引き止めることはできなかった。ただ……こんなことになるならば、意地でもその場に残れば良かったと、今、僕は盛大に後悔している。
「うっ……なん、で……?」
オリアナ様は、職務中に倒れたらしい。すぐに側に居たデリク様が駆けつけて、医務室へ連れていき……風邪だと診断されていた。
真っ赤に火照った顔。おでこには氷水の袋を置かれ、汗ばむオリアナ様の姿は、とてもツラそうだった。
ただ、それでいて、その姿がどこか妖艶にも見えてしまい、僕は即座に不謹慎だと頭を振る。
「ワタシが呼んだのよ。彼が居た方が落ち着くでしょう?」
実際、片翼が側に居ることは、魔族の精神を安定させることに繋がる。
オリアナ様は、恐らく反論をしようとしたのだろうが、そのままため息を吐く。
「今は、ゆっくり休みなさい。あなたは、オリアナちゃんの側に付いておくことっ」
「もちろんですっ」
今のオリアナ様の側から離れるなど、考えられない。それに、もしかしたら、昨日のことが原因で、オリアナ様は体調を崩したのかもしれないのだから。
あの男に関する調査は延期、かな?
本当は、今日にでも調査に乗り出そうというつもりだったが、こんな状態のオリアナ様を置いてまで行うことではない。
一応、調査依頼だけはしておいたし、足取りが追えなくなることはない、と思うけど……。
本当なら、こういった調査は、僕が直接行うべきことだ。しかし、何よりも優先されるのは、やはり片翼。
「オリアナ様。早く良くなってくださいね」
図々しいかとも思ったが、ベッドの側に腰掛けて、オリアナ様の手をそっと握る。
オリアナ様はそれを一瞥して、口を開きかけたが、そのまま何も言うことなく、口も目も閉じる。
「何も心配することはありません。大丈夫。大丈夫ですから……」
根拠がなくても、今は構わない。オリアナ様の心に平穏が訪れるように、僕はただひたすらに、オリアナ様へそんな言葉をかけ続けた。
本当はあの日、オリアナ様を家で一人にはさせたくなかった。それでも、オリアナ様は、今は触れて欲しくなさそうで、引き止めることはできなかった。ただ……こんなことになるならば、意地でもその場に残れば良かったと、今、僕は盛大に後悔している。
「うっ……なん、で……?」
オリアナ様は、職務中に倒れたらしい。すぐに側に居たデリク様が駆けつけて、医務室へ連れていき……風邪だと診断されていた。
真っ赤に火照った顔。おでこには氷水の袋を置かれ、汗ばむオリアナ様の姿は、とてもツラそうだった。
ただ、それでいて、その姿がどこか妖艶にも見えてしまい、僕は即座に不謹慎だと頭を振る。
「ワタシが呼んだのよ。彼が居た方が落ち着くでしょう?」
実際、片翼が側に居ることは、魔族の精神を安定させることに繋がる。
オリアナ様は、恐らく反論をしようとしたのだろうが、そのままため息を吐く。
「今は、ゆっくり休みなさい。あなたは、オリアナちゃんの側に付いておくことっ」
「もちろんですっ」
今のオリアナ様の側から離れるなど、考えられない。それに、もしかしたら、昨日のことが原因で、オリアナ様は体調を崩したのかもしれないのだから。
あの男に関する調査は延期、かな?
本当は、今日にでも調査に乗り出そうというつもりだったが、こんな状態のオリアナ様を置いてまで行うことではない。
一応、調査依頼だけはしておいたし、足取りが追えなくなることはない、と思うけど……。
本当なら、こういった調査は、僕が直接行うべきことだ。しかし、何よりも優先されるのは、やはり片翼。
「オリアナ様。早く良くなってくださいね」
図々しいかとも思ったが、ベッドの側に腰掛けて、オリアナ様の手をそっと握る。
オリアナ様はそれを一瞥して、口を開きかけたが、そのまま何も言うことなく、口も目も閉じる。
「何も心配することはありません。大丈夫。大丈夫ですから……」
根拠がなくても、今は構わない。オリアナ様の心に平穏が訪れるように、僕はただひたすらに、オリアナ様へそんな言葉をかけ続けた。
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