70 / 75
70.性欲か生欲か(二)
しおりを挟む
晴れていれば夕日が沈むのが綺麗に見えるであろうオーシャンビュー。雨が降っているのが残念だ。景色は濃い灰色に塗り潰されている。
大きなソファに、大きなダブルベッド。そのベッドの上にはテディベアがちょこんと乗っている。持って帰ってもいいらしい。
部屋は――私の部屋が三つ分入るくらいの大きさだ。翔吾くんと健吾くんのマンションの部屋くらい広い。
さすが、高いだけのことはある。
洗面台が二つもある部屋なんて初めて見た。浴室はガラス張り。最近できたホテルではこういうのが流行っているのだろうか。
部屋全体を見た感じ、たぶん、スイートルームだと思う。
よく予約が取れたなぁ。三連休の中日なのに。台風が来るから、予約キャンセルがあったのだろうか。このホテルはクルージングを楽しむ人が多く利用するらしいから。
「ダブルベッド……」
「おっ、広いベッド! 望さん、三人で寝られそうだよ!」
「じゃあ、じゃんけんしなくて済むなぁ。さすがキングダブル」
ええと、新幹線の中でどんな取り決めがあったのか、大変興味があります。ベッドを誰が使うのか、以外に、どんなことを話したのか知りたいです。とても。
「夕飯までまだ時間があるなぁ」
「日本酒があるよ、望さん!」
「夕飯の前に酔い潰れるなよ、翔吾」
二人は、聞かない。なぜ私が尾道に来たのか、を。
湯川先生は私の祖母の故郷だと思っている。翔吾くんはどうだろう。湯川先生から聞いただろうか。二人はただの墓参りだと思っているだろうか。
「あの」
ソファに座り、デニムのクッションを抱きしめて、私は二人の顔を見比べる。日本酒を開けようとしていた翔吾くんは動きを止め、湯川先生はソファに座ってくれる。
あぁ、今しかない。
今しか、ない。
「大事な話があるの。聞いてくれる?」
叡心先生とのことを話すには、今しかないのだ。
◆◇◆◇◆
「私が大好きだった人が、尾道のあの海で死んだの」
彼が私のせいで死んだこと。大好きだったから、他の人を好きになるのが怖かったこと。彼以外に心を許したくなくて、セックスをするだけの関係を望んだこと。
それらを、二人に話す。翔吾くんには一度話したことがあるけれど、もう一度、きちんと私の言葉で伝えたかったから。
「でも、一日海にいて……湯川先生と翔吾くんと一緒に生きていたいって、彼にお願いしてきました」
でも、私は決めたのだ。私一人で考えて、結論を出したのだ。逃げて、逃げて、逃げ続けたことから、目を逸らさずに。
幸せになりたい、と。
「だから、私……私は、二人のことを、二人のことが……好きで仕方なくて……っ」
今日だけは、涙もろくても許して欲しい。
笑顔で言いたいのに、そんなの無理だ。涙が溢れて溢れて仕方ない。
好きだ。
好きで仕方ない。
二人のことが、好きで好きでどうしようもない。
「あかり」
左右から熱を感じて顔を上げた瞬間に、湯川先生の唇の感触。左からは「うわ、ずるい!」と翔吾くんの声。湯川先生の短いキスのあと、当然のように翔吾くんからも唇にキスをされる。
「つらかったね、あかり。でも、話してくれてありがとう」
「大丈夫。俺たちはいなくなったりしないから。だから、あかりもいきなりいなくならないで」
「……ごめんなさい」
たぶん、今日はいっぱい心配かけた。健吾くんも水森さんも巻き込んで、二人はずっと心配してくれたに違いない。
本当に、申し訳ない。
「……あと一つ、二人に言っておかないといけないことが、あっ、て……ちょっと! なに、して……んんっ」
湯川先生に唇を塞がれて、翔吾くんにカットソーをめくり上げられる。汗をかいたままの双丘に指がかかり、ブラが引き下ろされ、赤く色づいた頂きが外気に晒される。
「なに、って……今すぐあかりを抱きたいんだよね、俺たちは」
言って、翔吾くんは既に硬く尖った先端を口に含む。私の悲鳴は、湯川先生の舌に邪魔されてくぐもった音にしかならない。手で二人を押し退けようとすると、湯川先生に手首を捕らえられる。
「んんんーっ!」
溢れる唾液を飲み込んで、状況を整理する。
ええと……二人は、私を、抱きたい、と。今すぐ。ここで。
――ここで? 二人で?
嘘、でしょ?
「やっ、ふ、っ」
「抵抗しないで、あかり」
「んっ、んん」
「大丈夫、怖くないから」
怖くないのはわかっている。優しい二人が乱暴にするわけがないことは知っている。
でも、翔吾くんは三人ですることを望んでいたけれど、湯川先生は違ったはず。抵抗はないのだろうか、と湯川先生をチラリと見て、それが愚問だと理解する。
……勃って、いますねぇ。準備万端、ですねぇ。
そうか、これが「いつか」か。今が「いつか」のときなのか。
二人を受け入れるタイミング、なのか。
「あかり?」
私の体から力が抜けたことに、いち早く湯川先生が気づく。心配そうな表情で私を見下ろしながら、右手が乳首を捏ねている。
「せんせ、いいの?」
「いいよ。翔吾がいても、勃ってる」
「翔吾くん、は? つらく、ない?」
「大丈夫。挿れられないほうがつらい」
大好きな二人から求められている。
もうそれだけで、私の心が幸せで満たされ、体に熱が灯っていく。ほら、もう、受け入れようとしている。この状況を。二人を。
「あかり、いい?」とは翔吾くん。
「俺も限界」とは湯川先生。
二人と生きようと決めた。
ならば、覚悟を決めよう。
今が、そのときだ。
二人の切なそうな顔を交互に見て、頷く。
ごめんね。いっぱい、待たせたね。
「……望と翔吾、二人が好き」
愛なんていらないと思っていた。
生きる理由なんていらないと、思っていた。
苦しいだけの愛なんていらない、つらいだけの生なんていらない、と。
「二人を愛してる」
でも、たぶん、本当は、一番欲しかったんだ。
愛する人に、愛されたかった。
愛する人と、一緒に生きたかった。
「だから」
飢えを、満たして。
食欲と性欲と――生欲、を。
「――二人に、抱いて欲しい」
幸せで、満たして欲しいの。
◆◇◆◇◆
「んっ、んんっ、ふあ」
ショーツをずらして挿入された肉杭が、膣内の浅いところを刺激する。挿れては腰を引き、ジリジリと欲を煽る。
もどかしくて腰を揺すっても、決して奥までは穿たれない、そんな意地悪をするのは翔吾くん。空いている手で肉芽すら擦ってくれない。ほんと、意地悪。
「っ、あ」
腹に張り付くほどに怒張した湯川先生の肉棒が私の口内を犯す。硬くて太くて、先走りが美味しい。舌の裏で亀頭を舐めると、湯川先生が切なそうな声を零す。その声がたまらなく嬉しい。もっと気持ち良くしてあげたくなる。
でも、奥までは咥えないようにしないと。先生はすぐイッてしまうから。
「望さん、そろそろ限界なんじゃ?」
「まさか」
隣の部屋にキングサイズのダブルベッドがあるのに、ソファで、始めてしまった。三人とも、限界だったのだ。
服は着たまま、最小限脱いだ状態での情事は、裸のときよりもいやらしい気がする。
「まさか」とは言っても、湯川先生はたぶんイク直前。早漏の先生に余裕はないはずだ。初めての、三人でのセックスは、そのシチュエーションだけでかなり興奮するから。
「じゃ、動いていい?」
「いや! ちょっ、と!」
翔吾くんは、湯川先生がかなりの早漏であることを知っているらしく、背後から聞こえた声にはからかうような色が混じっている。
ホテルでの下ネタ大会のときには話していなかったから、今日湯川先生が話したのだろう。新幹線の中で他に何を話したのか、本当に気になる。
「せんせ、一回、イク?」
「――っ、ダメ、あかり。それ、エロい」
上目遣いで先生を見上げるのはまずかったみたいです。ビクンと熱杭が震える。腰を引こうとする先生だけど、その腰に抱きついて、私がそれを許さない。
限界なのに強がるのはなぜなのか。私は別に早漏でも構わないのに。口の中に出してもらっても構わないのに。
……ん、出してもらおう。
「っ!? あかり!?」
根元まで――はさすがに咥えられないくらいの大きさだけど、歯に当てないように注意して奥まで肉棒を滑らせる。
それに合わせるようにして、翔吾くんが勢い良く膣壁を擦る。子宮口まで届くように。その動きは予想外だったけど、私の膣内は難なく奥まで迎え入れたようだ。
好きな人のものを二つ、奥まで咥え込むことがどれだけ幸せなことか。どれだけ気持ちのいいことか。
「んっ、ふ……んっ」
「ちょっ、と、ダメ、こら、やめ」
「イイじゃん。望さん、限界でしょ?」
翔吾くんの言う通り、湯川先生は結構ギリギリだ。たぶん、すぐイク。数秒でイク。
我慢、しなくていいのに。して欲しくないのに。
でも、翔吾くんも、結構限界だと思う。めちゃくちゃ硬くて太い。
二人して、我慢なんかしなくていいのに。ぜんぶ、受け止めてあげるのに。
「まぁ、俺もそろそろ出るし……って、あかり!?」
「……っ、あ」
スルリと二人の根元に繋がっている柔らかな袋に手を伸ばす。ふにふにと少し汗ばんだ冷たい感触が気持ちいい。両手が使える体位で良かった。
「あかり、ダメ、っ」
湯川先生はその刺激が引鉄となったらしく、ふるりと体を震わせて、私の口内の奥のほうに精液を吐き出す。
一般的には苦いと言われる精液の味は、私にとっては甘い蜜だ。とても美味しいもの。喉を鳴らして飲み込むと、精液が私の喉を潤していく。
翔吾くんに穿たれながら、湯川先生の蜜を一滴残らず吸い上げる。見上げると、湯川先生は眉間にシワを寄せて、切なそうに震えていた。
「はっ、あ、あかり、出るっ」
背後から声が聞こえると同時に、抽挿と水音が激しくなる。ぐちゅぐちゅと音を立てて、翔吾くんが私の体を揺する。ゆらゆら揺れる袋がかわいくて、手が離せない。
「っ、あ、イっ――」
肉棒の先で熱が爆ぜる。膣奥でじわりと精液が広がっていく。その精液は、今度は私の腹を満たしていく。
ビクビクと何度も震える翔吾くんの肉杭から精液を搾り取り、萎えていく湯川先生の肉棒を舌で舐りながら、私は思わず笑ってしまう。
――ダメだ、これは、気持ちいい。
笑ってしまうくらい、幸せだ。幸せすぎる。これは病みつきになってしまう。
私にとっては普通の――いわゆる、愛のないセックスが霞んでしまうくらいの、充足感だ。
イカなくても、満たされてしまう。
心も、体も。ぜんぶ。
「あかり?」
「大丈夫?」
二人が心配してくれている。心と体を。労ってくれている。
ちゅうと湯川先生の柔らかな肉棒を吸ったあと、口から取り出す。名残惜しいけど。
膣内から翔吾くんの萎えた肉杭も抜き取られてしまう。こちらも名残惜しい。
背後から翔吾くんに抱きつかれ、湯川先生には前からぎゅっとされて、やっぱり幸せだなぁと思う。
「……ありがと、望、翔吾」
声が震える。目の前が滲む。頬を熱が伝う。
外は灰色の世界。風も強い。今夜中にこのあたりを台風が通過していくだろう。
けれど、私の心は、嵐が去ったかのように穏やかだ。晴れやかだ。
「私……幸せだよ」
本当に良かった。
二人に出会えて、本当に。
「生きてて良かった……」
二人が無言で抱きしめてくれる。幸せな幸せな、暖かいサンドイッチ。
私はそのとき初めて――叡心先生が死んでしまってから初めて、生きていて良かったと、心の底から思ったのだ。
大きなソファに、大きなダブルベッド。そのベッドの上にはテディベアがちょこんと乗っている。持って帰ってもいいらしい。
部屋は――私の部屋が三つ分入るくらいの大きさだ。翔吾くんと健吾くんのマンションの部屋くらい広い。
さすが、高いだけのことはある。
洗面台が二つもある部屋なんて初めて見た。浴室はガラス張り。最近できたホテルではこういうのが流行っているのだろうか。
部屋全体を見た感じ、たぶん、スイートルームだと思う。
よく予約が取れたなぁ。三連休の中日なのに。台風が来るから、予約キャンセルがあったのだろうか。このホテルはクルージングを楽しむ人が多く利用するらしいから。
「ダブルベッド……」
「おっ、広いベッド! 望さん、三人で寝られそうだよ!」
「じゃあ、じゃんけんしなくて済むなぁ。さすがキングダブル」
ええと、新幹線の中でどんな取り決めがあったのか、大変興味があります。ベッドを誰が使うのか、以外に、どんなことを話したのか知りたいです。とても。
「夕飯までまだ時間があるなぁ」
「日本酒があるよ、望さん!」
「夕飯の前に酔い潰れるなよ、翔吾」
二人は、聞かない。なぜ私が尾道に来たのか、を。
湯川先生は私の祖母の故郷だと思っている。翔吾くんはどうだろう。湯川先生から聞いただろうか。二人はただの墓参りだと思っているだろうか。
「あの」
ソファに座り、デニムのクッションを抱きしめて、私は二人の顔を見比べる。日本酒を開けようとしていた翔吾くんは動きを止め、湯川先生はソファに座ってくれる。
あぁ、今しかない。
今しか、ない。
「大事な話があるの。聞いてくれる?」
叡心先生とのことを話すには、今しかないのだ。
◆◇◆◇◆
「私が大好きだった人が、尾道のあの海で死んだの」
彼が私のせいで死んだこと。大好きだったから、他の人を好きになるのが怖かったこと。彼以外に心を許したくなくて、セックスをするだけの関係を望んだこと。
それらを、二人に話す。翔吾くんには一度話したことがあるけれど、もう一度、きちんと私の言葉で伝えたかったから。
「でも、一日海にいて……湯川先生と翔吾くんと一緒に生きていたいって、彼にお願いしてきました」
でも、私は決めたのだ。私一人で考えて、結論を出したのだ。逃げて、逃げて、逃げ続けたことから、目を逸らさずに。
幸せになりたい、と。
「だから、私……私は、二人のことを、二人のことが……好きで仕方なくて……っ」
今日だけは、涙もろくても許して欲しい。
笑顔で言いたいのに、そんなの無理だ。涙が溢れて溢れて仕方ない。
好きだ。
好きで仕方ない。
二人のことが、好きで好きでどうしようもない。
「あかり」
左右から熱を感じて顔を上げた瞬間に、湯川先生の唇の感触。左からは「うわ、ずるい!」と翔吾くんの声。湯川先生の短いキスのあと、当然のように翔吾くんからも唇にキスをされる。
「つらかったね、あかり。でも、話してくれてありがとう」
「大丈夫。俺たちはいなくなったりしないから。だから、あかりもいきなりいなくならないで」
「……ごめんなさい」
たぶん、今日はいっぱい心配かけた。健吾くんも水森さんも巻き込んで、二人はずっと心配してくれたに違いない。
本当に、申し訳ない。
「……あと一つ、二人に言っておかないといけないことが、あっ、て……ちょっと! なに、して……んんっ」
湯川先生に唇を塞がれて、翔吾くんにカットソーをめくり上げられる。汗をかいたままの双丘に指がかかり、ブラが引き下ろされ、赤く色づいた頂きが外気に晒される。
「なに、って……今すぐあかりを抱きたいんだよね、俺たちは」
言って、翔吾くんは既に硬く尖った先端を口に含む。私の悲鳴は、湯川先生の舌に邪魔されてくぐもった音にしかならない。手で二人を押し退けようとすると、湯川先生に手首を捕らえられる。
「んんんーっ!」
溢れる唾液を飲み込んで、状況を整理する。
ええと……二人は、私を、抱きたい、と。今すぐ。ここで。
――ここで? 二人で?
嘘、でしょ?
「やっ、ふ、っ」
「抵抗しないで、あかり」
「んっ、んん」
「大丈夫、怖くないから」
怖くないのはわかっている。優しい二人が乱暴にするわけがないことは知っている。
でも、翔吾くんは三人ですることを望んでいたけれど、湯川先生は違ったはず。抵抗はないのだろうか、と湯川先生をチラリと見て、それが愚問だと理解する。
……勃って、いますねぇ。準備万端、ですねぇ。
そうか、これが「いつか」か。今が「いつか」のときなのか。
二人を受け入れるタイミング、なのか。
「あかり?」
私の体から力が抜けたことに、いち早く湯川先生が気づく。心配そうな表情で私を見下ろしながら、右手が乳首を捏ねている。
「せんせ、いいの?」
「いいよ。翔吾がいても、勃ってる」
「翔吾くん、は? つらく、ない?」
「大丈夫。挿れられないほうがつらい」
大好きな二人から求められている。
もうそれだけで、私の心が幸せで満たされ、体に熱が灯っていく。ほら、もう、受け入れようとしている。この状況を。二人を。
「あかり、いい?」とは翔吾くん。
「俺も限界」とは湯川先生。
二人と生きようと決めた。
ならば、覚悟を決めよう。
今が、そのときだ。
二人の切なそうな顔を交互に見て、頷く。
ごめんね。いっぱい、待たせたね。
「……望と翔吾、二人が好き」
愛なんていらないと思っていた。
生きる理由なんていらないと、思っていた。
苦しいだけの愛なんていらない、つらいだけの生なんていらない、と。
「二人を愛してる」
でも、たぶん、本当は、一番欲しかったんだ。
愛する人に、愛されたかった。
愛する人と、一緒に生きたかった。
「だから」
飢えを、満たして。
食欲と性欲と――生欲、を。
「――二人に、抱いて欲しい」
幸せで、満たして欲しいの。
◆◇◆◇◆
「んっ、んんっ、ふあ」
ショーツをずらして挿入された肉杭が、膣内の浅いところを刺激する。挿れては腰を引き、ジリジリと欲を煽る。
もどかしくて腰を揺すっても、決して奥までは穿たれない、そんな意地悪をするのは翔吾くん。空いている手で肉芽すら擦ってくれない。ほんと、意地悪。
「っ、あ」
腹に張り付くほどに怒張した湯川先生の肉棒が私の口内を犯す。硬くて太くて、先走りが美味しい。舌の裏で亀頭を舐めると、湯川先生が切なそうな声を零す。その声がたまらなく嬉しい。もっと気持ち良くしてあげたくなる。
でも、奥までは咥えないようにしないと。先生はすぐイッてしまうから。
「望さん、そろそろ限界なんじゃ?」
「まさか」
隣の部屋にキングサイズのダブルベッドがあるのに、ソファで、始めてしまった。三人とも、限界だったのだ。
服は着たまま、最小限脱いだ状態での情事は、裸のときよりもいやらしい気がする。
「まさか」とは言っても、湯川先生はたぶんイク直前。早漏の先生に余裕はないはずだ。初めての、三人でのセックスは、そのシチュエーションだけでかなり興奮するから。
「じゃ、動いていい?」
「いや! ちょっ、と!」
翔吾くんは、湯川先生がかなりの早漏であることを知っているらしく、背後から聞こえた声にはからかうような色が混じっている。
ホテルでの下ネタ大会のときには話していなかったから、今日湯川先生が話したのだろう。新幹線の中で他に何を話したのか、本当に気になる。
「せんせ、一回、イク?」
「――っ、ダメ、あかり。それ、エロい」
上目遣いで先生を見上げるのはまずかったみたいです。ビクンと熱杭が震える。腰を引こうとする先生だけど、その腰に抱きついて、私がそれを許さない。
限界なのに強がるのはなぜなのか。私は別に早漏でも構わないのに。口の中に出してもらっても構わないのに。
……ん、出してもらおう。
「っ!? あかり!?」
根元まで――はさすがに咥えられないくらいの大きさだけど、歯に当てないように注意して奥まで肉棒を滑らせる。
それに合わせるようにして、翔吾くんが勢い良く膣壁を擦る。子宮口まで届くように。その動きは予想外だったけど、私の膣内は難なく奥まで迎え入れたようだ。
好きな人のものを二つ、奥まで咥え込むことがどれだけ幸せなことか。どれだけ気持ちのいいことか。
「んっ、ふ……んっ」
「ちょっ、と、ダメ、こら、やめ」
「イイじゃん。望さん、限界でしょ?」
翔吾くんの言う通り、湯川先生は結構ギリギリだ。たぶん、すぐイク。数秒でイク。
我慢、しなくていいのに。して欲しくないのに。
でも、翔吾くんも、結構限界だと思う。めちゃくちゃ硬くて太い。
二人して、我慢なんかしなくていいのに。ぜんぶ、受け止めてあげるのに。
「まぁ、俺もそろそろ出るし……って、あかり!?」
「……っ、あ」
スルリと二人の根元に繋がっている柔らかな袋に手を伸ばす。ふにふにと少し汗ばんだ冷たい感触が気持ちいい。両手が使える体位で良かった。
「あかり、ダメ、っ」
湯川先生はその刺激が引鉄となったらしく、ふるりと体を震わせて、私の口内の奥のほうに精液を吐き出す。
一般的には苦いと言われる精液の味は、私にとっては甘い蜜だ。とても美味しいもの。喉を鳴らして飲み込むと、精液が私の喉を潤していく。
翔吾くんに穿たれながら、湯川先生の蜜を一滴残らず吸い上げる。見上げると、湯川先生は眉間にシワを寄せて、切なそうに震えていた。
「はっ、あ、あかり、出るっ」
背後から声が聞こえると同時に、抽挿と水音が激しくなる。ぐちゅぐちゅと音を立てて、翔吾くんが私の体を揺する。ゆらゆら揺れる袋がかわいくて、手が離せない。
「っ、あ、イっ――」
肉棒の先で熱が爆ぜる。膣奥でじわりと精液が広がっていく。その精液は、今度は私の腹を満たしていく。
ビクビクと何度も震える翔吾くんの肉杭から精液を搾り取り、萎えていく湯川先生の肉棒を舌で舐りながら、私は思わず笑ってしまう。
――ダメだ、これは、気持ちいい。
笑ってしまうくらい、幸せだ。幸せすぎる。これは病みつきになってしまう。
私にとっては普通の――いわゆる、愛のないセックスが霞んでしまうくらいの、充足感だ。
イカなくても、満たされてしまう。
心も、体も。ぜんぶ。
「あかり?」
「大丈夫?」
二人が心配してくれている。心と体を。労ってくれている。
ちゅうと湯川先生の柔らかな肉棒を吸ったあと、口から取り出す。名残惜しいけど。
膣内から翔吾くんの萎えた肉杭も抜き取られてしまう。こちらも名残惜しい。
背後から翔吾くんに抱きつかれ、湯川先生には前からぎゅっとされて、やっぱり幸せだなぁと思う。
「……ありがと、望、翔吾」
声が震える。目の前が滲む。頬を熱が伝う。
外は灰色の世界。風も強い。今夜中にこのあたりを台風が通過していくだろう。
けれど、私の心は、嵐が去ったかのように穏やかだ。晴れやかだ。
「私……幸せだよ」
本当に良かった。
二人に出会えて、本当に。
「生きてて良かった……」
二人が無言で抱きしめてくれる。幸せな幸せな、暖かいサンドイッチ。
私はそのとき初めて――叡心先生が死んでしまってから初めて、生きていて良かったと、心の底から思ったのだ。
0
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる