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75話、姉。
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会社の近くのビジネスホテルは、日曜日からのシングル連泊、という条件での部屋はなかなか空いていなかった。月曜日から出張で泊まる単身者が多いからだろう。
空いていたとしても、セキュリティ的に難のあるところや、洗濯機がないところであったりして、ショウの許可がおりなかった。
仕方なくダブルかツインで探すと、ダブルで少し安めの部屋が見つかったので、すぐ予約した。
ビジネスホテルには珍しく、ダブル。「部屋とベッドを広く使いたい方に」と書いてあったので、ホテル側も二人が使うとは想定していないかもしれない。ビジネスホテルで二人で滞在するなら、たいていツインで相部屋にするだろうから。
だから、安いのに誰も予約していなかったんだな、きっと。
「シングルだと姉ちゃんしかホテルに入れないけど、ダブルだと一応俺も入れるね」
……ビジネスホテルをラブホ代わりには使わないよ。もう。
スーツケースに、仕事用の服と部屋着、下着や化粧品、洗剤やシャンプー、ドライヤーなどの生活用品を突っ込んで。
「マンションの下にタクシー呼んだから、それに乗って行こう」
「ショウも一緒?」
「ダブルだから、二人いないと不自然じゃないかな。一応二人で予約しちゃったし」
冷蔵庫の中身を見て、ショウに賞味期限などを伝える。せっかく昨日たくさん買ってきたのに、腐らせてしまうかもしれないなぁ。悲しい。
「必要なものがあったら、コンビニで買うんだよ」
「え、うん」
「スーパーやドラッグストアよりは狭いから、どんな人が近くにいるかわかりやすいでしょ」
「なるほど。防犯カメラもあるし?」
「うん、そう。周りの目を意識してね」
ショウの言うことにうなずきながら、タクシーに乗り込む。しばらく背後を確認しながら進んでも、尾行はされていないようだった。
「会社はバレていないと思うけど、用心してね。何なら、カナさんや……本当はイヤだけど、川口さんに送ってもらってもいいから」
「今、川口はすごい譲歩したね?」
「すごくイヤだよ。すっっごいイヤだけど、仕方ないからね。姉ちゃんのためだから」
二人でチェックインすると、確かにホテルの人は怪しむことなく部屋の鍵を渡してくれた。
五〇三号室が、とりあえず三日間の私の城だ。変なテンションゆえか、ブラピの真似をしたくなる。
部屋は十畳ほどでそこまで広くはないけれど、シングルの部屋よりは広いのかもしれない。ふかふかでシンプルなダブルベッド、テレビに冷蔵庫に電子レンジ。エアコンもよく効いている。ユニットバスは少し小さいけれど、キレイで大きな鏡がついている。洗濯機は共有みたいだ。
服にシワがつかないうちにとスーツケースの中身を出していると、ショウは冷蔵庫の大きさを確認したあとで、買い出しに行くと言って部屋を出ていった。何か欲しいものがあったら連絡して、と言っていたので、部屋をぐるりと見回して、首をひねる。
ない、かなぁ?
通勤用の鞄も靴もあるし、ボディソープもシャンプーもある。洗濯物を干す用のハンガーも洗濯バサミも持ってきた。一華堂のプリンはもう冷蔵庫の中だ。大丈夫だと思う。
『飲み物は午後の紅茶ミルクティーと伊右衛門がいいな。じゃがりこのサラダが欲しいかも』
それだけ送って、ベッドに横になる。
あぁ、疲れた。
この何日かでいろいろありすぎた。
佐藤さんから告白されたことが、はるか昔のことのようだ。
隣でショウが眠っていなくても、睡魔はやってくる。
少しだけ、ショウが帰ってくるまで、目を閉じていよう。
おやすみ、ショウ……。
空いていたとしても、セキュリティ的に難のあるところや、洗濯機がないところであったりして、ショウの許可がおりなかった。
仕方なくダブルかツインで探すと、ダブルで少し安めの部屋が見つかったので、すぐ予約した。
ビジネスホテルには珍しく、ダブル。「部屋とベッドを広く使いたい方に」と書いてあったので、ホテル側も二人が使うとは想定していないかもしれない。ビジネスホテルで二人で滞在するなら、たいていツインで相部屋にするだろうから。
だから、安いのに誰も予約していなかったんだな、きっと。
「シングルだと姉ちゃんしかホテルに入れないけど、ダブルだと一応俺も入れるね」
……ビジネスホテルをラブホ代わりには使わないよ。もう。
スーツケースに、仕事用の服と部屋着、下着や化粧品、洗剤やシャンプー、ドライヤーなどの生活用品を突っ込んで。
「マンションの下にタクシー呼んだから、それに乗って行こう」
「ショウも一緒?」
「ダブルだから、二人いないと不自然じゃないかな。一応二人で予約しちゃったし」
冷蔵庫の中身を見て、ショウに賞味期限などを伝える。せっかく昨日たくさん買ってきたのに、腐らせてしまうかもしれないなぁ。悲しい。
「必要なものがあったら、コンビニで買うんだよ」
「え、うん」
「スーパーやドラッグストアよりは狭いから、どんな人が近くにいるかわかりやすいでしょ」
「なるほど。防犯カメラもあるし?」
「うん、そう。周りの目を意識してね」
ショウの言うことにうなずきながら、タクシーに乗り込む。しばらく背後を確認しながら進んでも、尾行はされていないようだった。
「会社はバレていないと思うけど、用心してね。何なら、カナさんや……本当はイヤだけど、川口さんに送ってもらってもいいから」
「今、川口はすごい譲歩したね?」
「すごくイヤだよ。すっっごいイヤだけど、仕方ないからね。姉ちゃんのためだから」
二人でチェックインすると、確かにホテルの人は怪しむことなく部屋の鍵を渡してくれた。
五〇三号室が、とりあえず三日間の私の城だ。変なテンションゆえか、ブラピの真似をしたくなる。
部屋は十畳ほどでそこまで広くはないけれど、シングルの部屋よりは広いのかもしれない。ふかふかでシンプルなダブルベッド、テレビに冷蔵庫に電子レンジ。エアコンもよく効いている。ユニットバスは少し小さいけれど、キレイで大きな鏡がついている。洗濯機は共有みたいだ。
服にシワがつかないうちにとスーツケースの中身を出していると、ショウは冷蔵庫の大きさを確認したあとで、買い出しに行くと言って部屋を出ていった。何か欲しいものがあったら連絡して、と言っていたので、部屋をぐるりと見回して、首をひねる。
ない、かなぁ?
通勤用の鞄も靴もあるし、ボディソープもシャンプーもある。洗濯物を干す用のハンガーも洗濯バサミも持ってきた。一華堂のプリンはもう冷蔵庫の中だ。大丈夫だと思う。
『飲み物は午後の紅茶ミルクティーと伊右衛門がいいな。じゃがりこのサラダが欲しいかも』
それだけ送って、ベッドに横になる。
あぁ、疲れた。
この何日かでいろいろありすぎた。
佐藤さんから告白されたことが、はるか昔のことのようだ。
隣でショウが眠っていなくても、睡魔はやってくる。
少しだけ、ショウが帰ってくるまで、目を閉じていよう。
おやすみ、ショウ……。
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