3 / 4
3話
しおりを挟む
りんりん、とフルーツを食べ終えた丁度その時、玄関のチャイムが鳴った。
きっと、さっきの人だろう。
ルークはまた「ちょっと待っててね」と言うと玄関のほうへ行った。
二回も来るなんて、やっぱり、ルークの恋人だよね…。
俺がルークの家にいると、ルークの恋人が、ルークの家に来られなくなっちゃう。
でも、住み込みで働くとなると怖いっていうのが分かったし…。
出来るだけ早く出て行けるように、早く仕事を見つけないと…。
そんなことを考えていると、ルークと、もう一人男の人が入ってきた。
「え!可愛い!!ちょっとルーク、ずるいんですけど!?」
「うるさい。ごめんね、リン…。どうしてもリンに会ってみたいって聞かなくて」
「へえ~、リンちゃんって言うんだ!よろしくね!俺はネロだよ!」
笑顔で近づいてきたと思ったら、ぎゅーっと何故か抱きしめられる。
びっくりして固まっていると、「ふざけすぎだ。」と、ネロさんをルークが引きはがした。
「あ、あの、えっと」
「俺は肉屋やってて、ルークの幼馴染なんだ!気軽に会いに来てね!」
「はいはい。リン、お風呂入ろっか。」
ルークはそう言うと俺の手を掴んで、お風呂場まで歩き出した。
ネロさんは凄い話しかけてくれているのに、俺は全然話せなくて、申し訳ない気分になる。
でも、洗面所に入る前にちら、とネロさんを見ると目が合って笑ってくれた。
「そこに置いてあるシャンプーとか、好きに使ってくれていいよ。洋服はあとで置きに来るから、それ着てね。」
「うん、ありがとう」
ルークが出て行ってから服を脱いで、お風呂場に入る。
窓から入る光がお風呂のお湯にうつって、お風呂場全体がキラキラと輝いていた。
全体が白っぽくて綺麗で、それになんだか嗅いだことのないようないい匂いがする。
俺が住んでいた家よりも広くて、バスタブも大きい。
なんとなくバスタブの中をのぞいてみると、黄色い色をした果物が浮かんでいた。
ミカン風呂、とか、ゆず風呂、みたいな感じかもしれない。
シャワーを浴びて、シャンプーとボディソープも借りて、洗い終わってお湯の中に入る。
「あつっ!」
足を入れると、想像以上にお湯が熱くて慌てて足を引っ込めた。
普通の家のお風呂の温度じゃなくて、温泉くらいありそう。
でも、家で温泉気分になれるのはいいな、と思ってそのまま我慢して入る。
熱くて肌がピリピリして、足で肌をすり合わせて熱さを誤魔化す。
「俺、なんでここに来たんだろう」
熱さに慣れたころ、お湯の中に入ってぼーっとしていると、ぽつり、とそんな声が漏れた。
家族は父親しかいなくて、仲が良いとは言えなかった。
高校には馴染めずに、一人も友達と呼べる人ができなかった。
小学校、中学校の友達は、中学を卒業してから会わなくなり、その場だけの友達になってた。
でも、これが俺の普通だって思ってたからか、そんなに辛くなかった。
人に冷たくされても、自分と向き合ってくれる人がいなくても、慣れてしまっていた。大丈夫だった。
でも初対面の怪しい男に、こんなに優しく親切にしてくれる人と出会ってしまったら、これまでの生活になんて戻ることはできないと思う。
目が覚めたら日本で、またいつもの毎日が始まってしまったら、俺は今まで通りの生活なんてできない。
温かさをきっと求めてしまう。ルークのことを探してしまう。
異世界から来た人の戻り方はわからない、と聞いたときは困ったけど、今は少しほっとしてるかもしれない。
まだ1日もたってないのに、そんなこと思ってて、俺、平気かな。危機感なさすぎるかな。
きっと、さっきの人だろう。
ルークはまた「ちょっと待っててね」と言うと玄関のほうへ行った。
二回も来るなんて、やっぱり、ルークの恋人だよね…。
俺がルークの家にいると、ルークの恋人が、ルークの家に来られなくなっちゃう。
でも、住み込みで働くとなると怖いっていうのが分かったし…。
出来るだけ早く出て行けるように、早く仕事を見つけないと…。
そんなことを考えていると、ルークと、もう一人男の人が入ってきた。
「え!可愛い!!ちょっとルーク、ずるいんですけど!?」
「うるさい。ごめんね、リン…。どうしてもリンに会ってみたいって聞かなくて」
「へえ~、リンちゃんって言うんだ!よろしくね!俺はネロだよ!」
笑顔で近づいてきたと思ったら、ぎゅーっと何故か抱きしめられる。
びっくりして固まっていると、「ふざけすぎだ。」と、ネロさんをルークが引きはがした。
「あ、あの、えっと」
「俺は肉屋やってて、ルークの幼馴染なんだ!気軽に会いに来てね!」
「はいはい。リン、お風呂入ろっか。」
ルークはそう言うと俺の手を掴んで、お風呂場まで歩き出した。
ネロさんは凄い話しかけてくれているのに、俺は全然話せなくて、申し訳ない気分になる。
でも、洗面所に入る前にちら、とネロさんを見ると目が合って笑ってくれた。
「そこに置いてあるシャンプーとか、好きに使ってくれていいよ。洋服はあとで置きに来るから、それ着てね。」
「うん、ありがとう」
ルークが出て行ってから服を脱いで、お風呂場に入る。
窓から入る光がお風呂のお湯にうつって、お風呂場全体がキラキラと輝いていた。
全体が白っぽくて綺麗で、それになんだか嗅いだことのないようないい匂いがする。
俺が住んでいた家よりも広くて、バスタブも大きい。
なんとなくバスタブの中をのぞいてみると、黄色い色をした果物が浮かんでいた。
ミカン風呂、とか、ゆず風呂、みたいな感じかもしれない。
シャワーを浴びて、シャンプーとボディソープも借りて、洗い終わってお湯の中に入る。
「あつっ!」
足を入れると、想像以上にお湯が熱くて慌てて足を引っ込めた。
普通の家のお風呂の温度じゃなくて、温泉くらいありそう。
でも、家で温泉気分になれるのはいいな、と思ってそのまま我慢して入る。
熱くて肌がピリピリして、足で肌をすり合わせて熱さを誤魔化す。
「俺、なんでここに来たんだろう」
熱さに慣れたころ、お湯の中に入ってぼーっとしていると、ぽつり、とそんな声が漏れた。
家族は父親しかいなくて、仲が良いとは言えなかった。
高校には馴染めずに、一人も友達と呼べる人ができなかった。
小学校、中学校の友達は、中学を卒業してから会わなくなり、その場だけの友達になってた。
でも、これが俺の普通だって思ってたからか、そんなに辛くなかった。
人に冷たくされても、自分と向き合ってくれる人がいなくても、慣れてしまっていた。大丈夫だった。
でも初対面の怪しい男に、こんなに優しく親切にしてくれる人と出会ってしまったら、これまでの生活になんて戻ることはできないと思う。
目が覚めたら日本で、またいつもの毎日が始まってしまったら、俺は今まで通りの生活なんてできない。
温かさをきっと求めてしまう。ルークのことを探してしまう。
異世界から来た人の戻り方はわからない、と聞いたときは困ったけど、今は少しほっとしてるかもしれない。
まだ1日もたってないのに、そんなこと思ってて、俺、平気かな。危機感なさすぎるかな。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う
まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。
新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!!
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる