4 / 8
一章
Ⅲ
しおりを挟む
僕は、精霊界に2000年ぶりに帰還した。僕の領域は、周りを水で覆われており、美しい空間だった。しかし、2000年も不在だった為、埃こそ積もってはいないが、生活感のない殺風景な空間になっていた。
ソファやテーブルはきれいに整頓されており、ベッドもシーツがシワひとつ無く敷かれていた。僕は、整ったものを崩したくなかったが、取り敢えず、シーツを被り、ベッドの端に座り込んだ。
精神汚染(強)が進み、足の付根まで黒ずみ、指先も黒く染まっていた。精神疲労(強)で異常なほどの眠気に抗えず、そのまま眠ってしまった。
しかし、すぐに目が覚めては、また眠るという安眠には程遠い眠り方をして逆に疲労が溜まっているのが分かる。
そんなときに、僕の領域内に誰かが侵入してきた。
「いるんだろ?碧の。」
魔力から朱の精霊王であることは分かったが、思い出してしまった過去の記憶が精神疲労(強)による浅い眠りを繰り返すうちに表に出てしまったようで、過去の記憶と重なり合わさって一種のフラッシュバック状態に陥ってしまった。
「...ひっ、...ぁ、こない、で...。」
「碧の?」
「...ぁ、...ごめ、なさ、...。」
朱の精霊王はベッドの上で怯え、震える僕に気付いたのか、ベッドに駆け寄ってきた。
「どうした。」
「...っ、だい、...じょぶ。」
「大丈夫ではないだろう。何を怯えている。」
「...っ、っぁ、みて、いい。...っは、っ。」
朱の精霊王は、躊躇うことなく僕の額に手を当てると、僕の記憶を読み取っていく。もちろん見ていて、気分の良いものではないだろう。だが、震え、怯えている理由が過去の、前世の父親のせいだと分かり、暴力を振るわれないように縮こまってると理解した朱の精霊王は、僕の背を擦った。
「ふむ、碧の。」
「...な、に。」
「俺を覚えているんだな?」
「...ん。」
「なら、俺のことも理解してるな?」
「...うん。」
朱の精霊王は、面倒くさがりだが、面倒見が良い。この矛盾が面白いと、いつも翠の精霊王に遊ばれていた。
面倒見が良い朱の精霊王は、僕がいるベッドに上がると、シーツごと抱き寄せて膝に乗せた。
「!!な、に...すっ、。」
「よしよし、頑張ったなぁ、碧の。おかえり。」
「...っ、...っ。」
「おー、泣け泣け。碧のは、水を司ってるから涙が止まんねぇかもしれねぇな。」
「...そ、なことっ、ないっ、。」
「ははっ、言い返せる元気は戻ったか?その調子だ。溜め込むんじゃねぇぞ。」
「...ん。」
朱の精霊王は、僕の頭を肩に埋めさせて撫でてくれる。前の世界で受けることのなかったものを簡単に与えてくれる。嬉しい。
ソファやテーブルはきれいに整頓されており、ベッドもシーツがシワひとつ無く敷かれていた。僕は、整ったものを崩したくなかったが、取り敢えず、シーツを被り、ベッドの端に座り込んだ。
精神汚染(強)が進み、足の付根まで黒ずみ、指先も黒く染まっていた。精神疲労(強)で異常なほどの眠気に抗えず、そのまま眠ってしまった。
しかし、すぐに目が覚めては、また眠るという安眠には程遠い眠り方をして逆に疲労が溜まっているのが分かる。
そんなときに、僕の領域内に誰かが侵入してきた。
「いるんだろ?碧の。」
魔力から朱の精霊王であることは分かったが、思い出してしまった過去の記憶が精神疲労(強)による浅い眠りを繰り返すうちに表に出てしまったようで、過去の記憶と重なり合わさって一種のフラッシュバック状態に陥ってしまった。
「...ひっ、...ぁ、こない、で...。」
「碧の?」
「...ぁ、...ごめ、なさ、...。」
朱の精霊王はベッドの上で怯え、震える僕に気付いたのか、ベッドに駆け寄ってきた。
「どうした。」
「...っ、だい、...じょぶ。」
「大丈夫ではないだろう。何を怯えている。」
「...っ、っぁ、みて、いい。...っは、っ。」
朱の精霊王は、躊躇うことなく僕の額に手を当てると、僕の記憶を読み取っていく。もちろん見ていて、気分の良いものではないだろう。だが、震え、怯えている理由が過去の、前世の父親のせいだと分かり、暴力を振るわれないように縮こまってると理解した朱の精霊王は、僕の背を擦った。
「ふむ、碧の。」
「...な、に。」
「俺を覚えているんだな?」
「...ん。」
「なら、俺のことも理解してるな?」
「...うん。」
朱の精霊王は、面倒くさがりだが、面倒見が良い。この矛盾が面白いと、いつも翠の精霊王に遊ばれていた。
面倒見が良い朱の精霊王は、僕がいるベッドに上がると、シーツごと抱き寄せて膝に乗せた。
「!!な、に...すっ、。」
「よしよし、頑張ったなぁ、碧の。おかえり。」
「...っ、...っ。」
「おー、泣け泣け。碧のは、水を司ってるから涙が止まんねぇかもしれねぇな。」
「...そ、なことっ、ないっ、。」
「ははっ、言い返せる元気は戻ったか?その調子だ。溜め込むんじゃねぇぞ。」
「...ん。」
朱の精霊王は、僕の頭を肩に埋めさせて撫でてくれる。前の世界で受けることのなかったものを簡単に与えてくれる。嬉しい。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説
転生したら弟がブラコン重傷者でした!!!
Lynne
BL
俺の名前は佐々木塁、元高校生だ。俺は、ある日学校に行く途中、トラックに轢かれて死んでしまった...。
pixivの方でも、作品投稿始めました!
名前やアイコンは変わりません
主にアルファポリスで投稿するため、更新はアルファポリスのほうが早いと思います!
回顧
papiko
BL
若き天才∶宰相閣下 (第一王子の親友)
×
監禁されていた第一王子 (自己犠牲という名のスキル持ち)
その日は、唐突に訪れた。王国ルーチェントローズの王子三人が実の父親である国王に対して謀反を起こしたのだ。
国王を探して、開かずの間の北の最奥の部屋にいたのは――――――――
そこから思い出される記憶たち。
※完結済み
※番外編でR18予定
【登場人物】
宰相 ∶ハルトノエル
元第一王子∶イノフィエミス
第一王子 ∶リノスフェル
第二王子 ∶アリスロメオ
第三王子 ∶ロルフヘイズ
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
弟いわく、ここは乙女ゲームの世界らしいです
慎
BL
――‥ 昔、あるとき弟が言った。此処はある乙女ゲームの世界の中だ、と。我が侯爵家 ハワードは今の代で終わりを迎え、父・母の散財により没落貴族に堕ちる、と… 。そして、これまでの悪事が晒され、父・母と共に令息である僕自身も母の息の掛かった婚約者の悪役令嬢と共に公開処刑にて断罪される… と。あの日、珍しく滑舌に喋り出した弟は予言めいた言葉を口にした――‥ 。
悪役令息に転生したけど…俺…嫌われすぎ?
「ARIA」
BL
階段から落ちた衝撃であっけなく死んでしまった主人公はとある乙女ゲームの悪役令息に転生したが...主人公は乙女ゲームの家族から甘やかされて育ったというのを無視して存在を抹消されていた。
王道じゃないですけど王道です(何言ってんだ?)どちらかと言うとファンタジー寄り
更新頻度=適当
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる