愛念

papiko

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本編

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「マリアネル・フォン・ベルギルト公爵令嬢、君との婚約を破棄する。」

王立アカデミーの卒業パーティー。静まり返った王宮のホールに響く、小さくも大きくもない凛とした声。ホールにいる誰もが彼等に視線を送る。

―――視線の先、ホールの中央ではラグノール王国の王太子である、ルノワール・ツィツァ・ラグノールと婚約者である公爵令嬢のマリアネル・フォン・ベルギルトが向かい合っていた。ホールにいる卒業生、保護者である貴族達。さらには、国王陛下と皇后陛下もいるという、公の場で婚約破棄を述べる王太子ルノワールには冷たい視線が送られていた。

「...殿下、何故かお聞かせいただいてもよろしくて?」
「勿論だとも。『君よりも素敵な方を好きになってしまったんだ。は、君との婚約を破棄した後に、求婚しようと思っているんだ。』」

勿論、そんな女性はいない。だが、こうするのが一番だと知っている・・・・・のだからしょうがない。そんな事を考えつつ、表には決して出さない。マリアネルの返事を待ちながら、手に持っていたシャンパンを一口飲む。

「....分かりました。婚約を破棄しましょう。」

目をスッと細め、顔を作り、台詞・・を口にする。

「『ありがとう。これで彼女に求婚できる。婚約破棄については君に任せていいか?』」
「....ええ。分かりました。」
「では、は、これで失礼するよ。」

そう言って、バトラーに飲みかけのシャンパンを預け、ホールを後にした。ホールを出るときに、二階の王族専用のバルコニーから国王夫妻と義弟であるエレオノール・ロナウド・ラグノールが失望の色で見ていたのを思い出しながら、自分に与えられている部屋に戻った。


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