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30.正規のルートはさすがに無理なんです。(一応☆? )

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 そうして、ルミエルはジーナ先生の家に帰って行った。俺に「引き続き攻略対象の攻略続けてね」て言い残して。
「特にレオ様は、「君の為に頑張る! 」って奴? ヒロインへの愛が力の源になるから、レオン様とは良好な関係になっておいて」
 とキツク言い残して。

「お兄ちゃんは、レオ様と正規の方法で仲良くなったんじゃないから、そこら辺が特に心配なんだよ」
 って、ルミエルは訓練中にもずっと言ってた。
「キックボードに乗ったら目的地に早く行けるよって聞いてるのに、キックボードに乗る練習しないで(楽な道を選ばないで)あえて一歩一歩地道にコツコツ歩いて目的地につく‥お兄ちゃんってそういうタイプ」
 ルミエルは俺のことをそう例えてた。
「キックボードに乗るのは怖い、って感情は一時的なもので、慣れたら楽になるんだから、練習すべきだと私は思うワケ」
 つまり楽な道はレオン様とスキンシップを取ること。 
 スキンシップには抵抗はあるだろうけど、それも一時の感情。慣れたらスキンシップで好感度上げる方がずっと楽。
 いやいや、スキンシップにも抵抗はあるけど、そもそも男同士だってことが問題だからね? 
「男にその方法(スキンシップ)は無理でしょ‥上がらんて好感度」
 そう言ったら、ルミエルはなんでもない顔して、
「今この世界のヒロインはお兄ちゃんなんだから可能じゃない? 」
 って言ったんだ。
 他人事だと思って‥。
 結局俺がレオン様にスキンシップ(正規のルート)をすることはなかった。
 だけど‥いつまでたってもレオン様の好感度が四つ♥にならん今‥「恥ずかしい‥」「倫理的に‥」「常識的に‥」とかいてられない。

 目指せ☆ レオン様と仲良し大作戦☆
 ええと‥ルミエル情報によると、
 ① きゅっと手を握って
 ② 可愛く上目遣いで「ね? 」
 ③ ほっぺにチュ!
 ええと‥あとは、「日々の話しかけ」「貢物大作戦」
 だったな‥。
 うう‥①②③のハードルの高さよ‥。そうだ、まず「貢物大作戦」からやってみよう‥。
 貢物するにしても相手のこと知らなきゃいけない。情報が少なすぎる。随分話し掛けたけど、俺がレオン様について知れたことは、王子らしく(見た目に反して)しっかりしてるってことや、(見た目に反して)真面目なこと、それから‥案外優しいってことだけだ。
 貢物かあ‥。レオン様って何が好きなんだろう? 
 因みに、ルミエルは攻略本だよりでレオン様に貢物を送っていたらしい。「レオン様の好きなもの」は、街で購入したり、ダンジョンでゲットしたり、道で拾ったり‥ゲットしたり(花とかね)で得ることが出来た、と。(そこに愛情はかけらもない‥)
 攻略本、今ないしな~。
 聞いてみよう。なんだかんだ言って、レオン様は聞いたことは全部答えてくれた。
 今まではそういう‥プライベートなことはきいたことなかったから若干緊張するが‥
「ええと‥王子様? 」
「何」
 相変わらず塩対応。だけど、一応俺の顔を見て話してくれる。それはいつものこと。‥人間として好感持てます。
 ‥でも、たいした用事じゃないんだよね~。‥すみません。
「‥好きな花は何ですか? 」
「花!? 」
 驚かせましたよね。‥分かります。仕事仲間から話し掛けられたから忙しいけど手を止めたのに、まさかの無駄話だと? って反応ですよね。‥分かります。
 でも、レオン様は、
「‥花は‥フリージアかな」
 って手短に答えてくれた。
 へ~意外。王子様だから、バラとかかと思ってた。赤いの。
「‥対外的には何て言うことにしてます? 」
 なんとなくね、そう思ったの。俺にだから、別に「ホントに好きなもの」言ってくれたのかなって。‥全然、飾る必要ないから。
「黄色いバラ。花言葉が平和だから、何となくいいかな、と」
 肩を竦めるレオン様。うん、こういうとこちょっと高校生っぽいよね。「ホントは違うけど、一応、ね」って感じなんだろう。
 ふむふむ。
 俺が頷くと、
「争いとか良くないでしょ」
 ってレオン様は苦笑いした。
 ‥おお、話が続いてる。レオン様、イイ奴だな。
「ちなみにフリージアなら何色で? 」
「黄色。花言葉関係なく、黄色い花が好きなんだ」
 へ~。ルミエルから聞いてたから、「好きな花」って話をしてみたけど、日本の男子高生に「好きな花は? 」って聞く機会とかないよね。‥なんか、新鮮。
「タツミは? 」
 ‥きたな。一応考えておいたんだよ。聞いといて「俺はない」とか、感じ悪いもんね。
「俺は、カスミソウ。なんか可愛いよね」
 どうだ! 俺にも知ってる花位あるんだぞ! 
 ふんすと威張って言ったら、ぷっと笑われた。
 ‥笑わんでも。
 何。カスミソウって顔か? ってことか?
 ってむっと来たら‥レオン様は、ホント不意にふわりと微笑んで
「いや、なんかピッタリだなって思った」
 って言ったんだ。
 うわあ‥
 ざ、ロイヤル。
 めちゃ‥カッコイイですやん‥。
「う‥」 
 ‥こういう時、俺はどうすればいいんだ? 「どういうことやねん。チビやとでも言いたいんか? 」って怒る‥のは違うな。ここで茶化すの良くない。ここは‥
「‥ありがとう‥? 」
 であってるよな??
 ‥ちょっと躊躇したから、なんか上目遣いになっちゃった! 大丈夫?? 男の上目遣いとか気分悪くなってない?? 
 うお‥顔が‥熱い! 
「う‥」
 ‥で、なんでレオン様も真っ赤になってんだよ。「何本気にしてんだよ」ってこと?? ええ‥!? やっぱり、俺外れ?? 

 ピコン
 ‥今?? 今、スキルゲット?? 何??

 聖女スキル「上目遣い♡ をゲットしました」
 ‥何それ!!

 上目遣い♡ ▽(説明) 聖女に上目遣いで見られると、見られた相手の好感度がちょっと上がります。頼み事やなんかに効果的だから、どんどん使用して、Levelをあげていきましょう。上目遣いLevel 現在1 ‥何が最高値やねん。最高値になったら、上目遣いで見られただけで、ハート爆上がりか!?? 
 うお‥。図らずして②を実践してしまった。なら①も試すしかないか??
 ‥試すか? 手、ぎゅ‥。
「あの、レオン様(上目遣い)クッキー焼いて来たんです。食べてください。‥この頃、レオン様お疲れ気味みたいだから‥(上目遣い)」
 で、渡すタイミングで、手をぎゅ。
「う‥! 」
 ‥効いた~!!
 めっちゃ真っ赤やん!! 
 ああ、そうか聖女ボディ。
 も一回ぎゅ。
「俺の手、気持ちいいでしょ。疲れが取れるって話題なんです」
「‥うん‥」
 なんか、レオン様の目がトロンってなってきた?? 魅了されちゃったのか? 
 ‥俺に?
 アホらし、俺やで? 魅了されるわけないやん。
 魅了されてるっていうより、目が閉まりそうになってるだけじゃん。
 ‥眠たかったんだね。‥寝なさい。俺の肩を貸してやろう。それとも、膝がいいか? 疲れてる時は、ちょっと寝るといいよ。
 俺がニコっと笑って、トンと俺の肩を叩いて、
「肩かしますよ。少し寝たらどうですか? 」
 って聞くや否や‥いや、言ってる途中に、ず‥とレオン様の身体が傾いて、俺の膝に‥倒れ込んできた。
 膝枕あ!! 
 と、その時にレオン様の唇が‥!
 ‥俺のほっぺをかすめた。
 事故ちゅー‥乙女ゲームにありがちな事故ちゅー‥。
 はい、事故です。
 レオン様もきっと気付いてない。
 ぐっすり眠ってる。起きても絶対覚えてない。
 ‥なら、俺は忘れるだけだ。よく「犬に噛まれたと思って忘れる」っていうけど、犬に噛まれることってよくあることか?? 忘れられるか?? ‥はい、俺は混乱してます。
 混乱して立ち上がってここからさっさと立ち去ってしまいたいって思ってます。だけど、俺の膝の上に頭をのせて気持ちよさそうに寝てるレオン様を落とすわけにいかず‥

 俺は真っ赤な顔でレオン様が起きるのを待つしかないのだった。
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